第18話 三日月旅館からの脱出 〜男子視点〜

 まずは僕たちはゆっくりとドアを開けて、廊下に見張の先生がいるか確かめる事に。

 恐る恐る颯太が顔を出す。

 左右左右と首を動かしたのち、


「おっけー、誰もいねぇ」


「ないすぅ」


 僕たちは慎重に外へ向かって、廊下を歩き始める。僕たちのいるフロアは2階。エレベーターなんて使ったら即バレしそうなので、慎重に階段を降りる必要がある。


「足音に耳をすませ? 足音が聞こえたらとにかく隠れれそうなところに隠れるんだ」


 廊下をゆっくり移動している颯太が小さな声で言う。


「わかった」


 僕らは全神経を耳に注いだのだ。

 それから1分後、僕たちは階段に到着した。非常階段のような形式のところである。


「よし、ゆっくり降りるぞ」


「おけ」


 相変わらず小さな声の颯太を珍しく思いながら、階段を降りていくと、


「まずい、誰か下から来るぞ」


 僕らは逃げようとした時に、


「……鳴釜さん?」


 と、言う声が聞こえた。

 相手の声からも驚きが溢れている。


「え?」


 颯太はおどおどしている。

 僕はどこかで聞いたことある声だと思い、恐る恐る振り返ってみると、


「三日月さんのお母さん」


 見知った顔があった。


「とにかく、こっちに来て」


 笑顔でそう言い、急いで階段の下に降りた。


「あのー、先生に見つかったらまずいのですが…」


 恐る恐る言うと、


「分かってます。この道なら大丈夫ですよ」


 どうやらそこまで察しがついていたようで、先生と鉢合わせすることはなかった。

 そして、案内されたのがスタッフオンリーと書かれた部屋だった。


「改めて、本当にあの時はすいませんでした!!」


 入って早々、三日月さんのお母さんは地面に頭が擦りついているのではないかと言うぐらい、頭を下げた。


「こちらこそ、人の家庭事情に首を突っ込み過ぎてしまい、申し訳ありませんでした。それでも良かったです。美優さんから聞く感じ、しっかりと実行下さっているようですね」


 って、僕、何様?


「はい。あれから嘘のように娘と仲良くなりました。まだ親らしいことはなかなかしてあげれていませんが、これから今までの分、親として立派に振る舞っていきます」


 様子を見るに、おそらく大丈夫だろう。

 まぁ、買い物の時に仲良くしてる三日月さんとお母さんコンビ見たから知ってたけどね。


「はい、頑張って下さい」


 その様子を見ていた、颯太はと言うとなにがなんだか何にもわからなかった。なぜ、なるっちが三日月さんのお母さんと知り合いなのか、なぜ、三日月さんのお母さんはなるっちに謝っているのか、もう分からな過ぎて頭がぐるんぐるんしている。


「鳴釜くんは私の娘と同じ高校なの?」


 三日月さんのお母さんの申し訳なさそうな態度とは一変、親とした態度に切り替わっていた。


「はい。そうなんですよ」


「そうなのね」


 いや、そんだけかい。


「あと1ついいかしら?」


 急いでいるっちゃ急いでいるが、


「なんでしょう?」


 流石に無視するわけにもいかないので、立ち止まって反応を示す。


「話題が話題だったので、さっきは突っ込まなかったのですが、娘のこと下の名前で呼ぶのですね」


 三日月さんのお母さんはニコニコ微笑みながら言う。

 僕はこの時、さらっと呼んでしまった事に気づいていなかった。


「あ、いや、その…、さっきそんな感じの話が出て、その…」


 それから説明を試みるが、結局は言いたいことがまとまらず、側から見るとあわあわとした感じになってしまっただろう。


「うちの娘と仲良くしてくださってありがとうございます。これからも仲良くして下さい」


 そう言い、三日月さんのお母さんは頭を下げる。


「それで話は変わりますが、鳴釜くんはどこに行くのですか?」


「ちょっと外に観光に行きたくて」


(しまったー、馬鹿正直に言ったら「夜は危ないのでやめてください」とか言われて、止められるかも知れない。やらかしたぁ)


「なるほど! 青春ですね。ここは治安が良いので、特に夜が危険とかそう言うことはないはずなので、安心してくださいね。ここ数十年、この地で不審者と呼ばれる通報はないと聞いています」


「何この場所。凄いですね!?」


「ふふっ。あと、ロビーには先生が見張り番としているので、ロビー以外からなら良いですね。なんなら、この部屋から出れるので、外に出してあげましょうか?」


 なんか色々大事な情報がずらずらと伝えられた。ロビーに先生。

 そして根本的問題の解決として、この部屋から外に出れるようだ。


「え、良いんですか? お願いします!」


 僕はありがたくお言葉に甘えることに。


「わかりました」


 と、言うことで、僕たちは外に出してもらう。


「ここの鍵を帰りの時のために開けときますので、帰ってくる時には必ず閉めておいてくださいね」


 なんか信頼されすぎている気がするが、今は置いておこう。


「ありがとうございます」


 なんとも感謝したくても仕切れない配慮である。

 颯太と言うと、目をチカチカさせながら外へ出る。もう頭が壊れてしまったようだ。


「そう言えば、鳴釜さん。他にも外に行く人はいるの?」


「あなたの娘さんと、女子が1名ほどです!」


「え、ええ。分かったわ。美優たちにもここの部屋に来て外に出るように伝えておいて」


「分かりました」


「遅くなりすぎないようにね」


 まるで本当のお母さんのような対応をしてくれた三日月さんのお母さんであった。

 僕たちが出て行った事を確認すると、


「あの今まで誰とも遊ばなかった美優に友達が出来たのね、本当に良かったわ」


 そう言ってから、三日月さんのお母さんはその場に泣き崩れた。



 外に出ると、そこは裏庭のようなところで、スタッフ専用の出口から外に出ることが出来るようだ。

 とりあえず僕は個人チャットでメッセージを飛ばす事に。

 颯太は相変わらず呆然としているので、ほっておく事に。


そー(蒼)「美優さんのお母さんに会って、1階のスタッフルームから外に出してくれるって。あと、玄関に先生が見張りしてるらしいから気を付けて!」


 伝えなきゃいけないことは伝えたな…。


 そうして安堵していると、


Miyu「普通に音鳴ったんだけど!? バレそうなんだけど!? それって私のせいだったわ! って、あ、お母さんに会ったの。そうよね、あの時居たから知ってるよね。分かった、ありがとうね!」


 やっぱりLINE内では本性が出るのか、いろんな一面が見れて、凄く新鮮であるのと同時に音がなった件については、少し申し訳なくなった。

 これ以上返信すると、危険度がさらに高まりそうだったので、2人を信じる事にする、

 

「よし、じゃあ来るまで待ってようか」


「……おう」


 と言うわけで、僕たちは人目につかない裏庭で美優さんたちの到着を待つ事にしたのだった。


 〜後書き〜


 どうもおはようございます!ともともです!

 数ヶ月ぶりに復活したのにも関わらず、読んでくださる方がいて嬉しさでいっぱいです!ありがとうございます!

 これからもゆっくり頑張って行きますのでよろしくお願いします!

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