ポッキーで殴られた話
みょめも
ポッキーで殴られた話
昔、小学生の頃、僕と兄はよく喧嘩をしていた。
兄は4つ上だったので力では敵うはずない。
だから僕はいつも素手では挑まなかった。
その日も些細なことで喧嘩が始まった。
兄が僕のおやつを勝手に食べたのだ。
「何で勝手に食べるんだ!」
「名前書いてなかったからな。」
悪びれる様子すらない兄にカッとなり、僕は手に持っていたポッキーを振り上げた。
兄は危険を感じたのか、素早い動きでポッキーを掴んでいる僕の手首を握った。
喧嘩するときに慣れない武器を使用するのは悪手だ、というのを知ったのはまだ先の事だ。
僕はポッキーを兄にとられた。
そして振りかぶったかと思うと次の瞬間、僕の左腕に振り下ろされた。
ボキン!と乾いた音がした。
「うわぁぁっ!」
ポッキーが振り下ろされた箇所を押さえ、僕はその場にうずくまった。
叫び声を上げた後は、あまりの痛みに悶絶し声ひとつ出ない。
ポッキーが砕ける音だけが耳に何度も響いている。
ポッキーはありえない方向に曲がっていた。
その非現実的な光景に血の気が引いた。
傷口からチョコが滴っている。
たかがポッキーでそんなに痛いものかと思うかもしれない。
しかし、4つ年の離れた兄だ。
確か僕が小学生5年生だったので、兄は食べ盛りの中学3年生ということになる。
しかも野球部のピッチャーが振りかぶりその鈍器を、見ようによっては最早バールのようなものを振り下ろしたのだ。
これで当時の僕の痛みが伝わるだろう。
「TOPPOじゃなくてよかったなぁ!」
僕を見下ろして兄は言った。
残りのポッキーをボリボリと噛み砕くその様は、さながら鬼のようであった。
『兄にポッキー』と言われるようになったのはその時からである。
ポッキーで殴られた話 みょめも @SHITAGOD
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