第13話 コラボ配信②
「———えー今日は……B級ダンジョンに来てます」
俺はスーッと目をドローンから逸らしながら言った。
《…………は?》
《ん? 何て言った?》
《ちょっと何言ってるか分からない》
《何バカなこと言ってんの?》
《とうとう頭おかしくなったか?》
《B級? D級の聞き間違いか?》
《何か俺もそう聞こえて来た》
「うん、俺もおんなじ気持ち。全く完全に今回ばかりはリスナーに同意するわ。でもね———俺にはレオナ様が居るんだよ。レオナ様が居れば余裕だろ」
そう———今回はいつも1人で雑魚な俺と違って世界最強格のレオナ様がいるのだ。
唯との約束もあるので、俺が死ぬことは絶対に無い。
「レオナ様は最強! レオナ様がたかがB級ダンジョンで手こずるわけ無いだろ! お前らレオナ様を嘗めすぎだろ!!」
「白星……流石に目の前で言われると恥ずかしいんだが?」
「ぐああああああごめんなさい!! もう言わないのでどうか頭を握り潰そうとするのはおやめくだ———いやこれも案外悪く無いかも」
「白星お前、ウチのリスナーと同じこと言ってるな」
「レオナ様のリスナーですから!」
俺の清々しいまでの即答に、レオナ様は苦笑しながら手を離した。
若干楽しくなって来ていたので、非常に残念だ。
《ぎゃいああああああああ!?!?》
《レオナ様がチーム以外の男に触れているだとぉおおおおおおお!?》
《おい、狡いぞ白星ぃいいいい!!》
《お前許さんからな!!》
《レオナ様に触れるとか許せん!!》
《いや、レオナ様ガチ勢いて草》
《ドMの間違いだろ》
《ドMは草ww》
「俺はドMじゃないから! レオナ様、早速行きましょう!」
「ああ、そうしようか」
俺はリスナーからのバッシングから逃げる様に歩き出した。
「———……え、無理」
俺は、目の前を歩いている体長5メートルを裕に超えるミノタウロスを隠れながら見て溢した。
一目見た瞬間に悟ったよね。
コイツ、ゴブリンエンペラーとかと比べ物にならないほど威圧感半端ないんだけど。
え、こんなのと戦う唯もレオナ様も化け物だろ。
「何故だ? あの時は圧倒的格上のゴブリンエンペラーに挑んでいたじゃないか」
レオナ様が一向に戦おうとしない俺に不思議そうに首を傾げる。
そんなレオナ様に、俺は至って冷静に返した。
「いや、仮にミノタウロス倒してもその後どんなモンスターにもフルボッコにされますよ? 流石に痛いのは嫌ですし」
《なんか白星でが白星で安心したわww》
《それなww》
《前回の白星は白星じゃなかったもんな》
《ミノタウロスはB級最上位種だし、白星がああなるのも無理ない》
《ちな、ミノタウロスのステータスはこんな感じ。
—————————————
【名前】ミノタウロス
【種族】ミノタウロス
【年齢】??
【Level】71
【体力】215
【魔力】143
【攻撃】200
【防御】199
【敏捷】176
【スキル】
—————————————》
《有能すぎて草》
《ありがとう名も知らぬ賢者よ》
「はぁ? 何だよその化け物ステータス。嘗めてんのか? 全部ゴブリンエンペラーの倍以上じゃねぇか」
幾ら俺がゴブリンエンペラーを倒してレベルアップしたとは言え……普通に勝てる気しないんだが。
ま、まあレオナ様も居るし、良い姿も見せたいし一応……一応な!
一応ステータス確認しとくか。
さてさて俺のステータスは……。
—————————————
【名前】白星直斗
【種族】人間(雑魚乙)
【年齢】18
【Level】16↑
【体力】9↑
【魔力】8↑
【攻撃】9↑
【防御】8↑
【敏捷】9↑
【スキル】
《下剋上:I》《スキル強奪:I》
《経験値半減:Ⅴ》
【強奪スキル】
【ユニーク】
《決死の覚悟:I》《勘:I》《暴走:I》
【コモン】
《筋力増強:II》《棍棒術:II》《剣術:I》
《投石術:Ⅱ》《精力増強:Ⅵ》
—————————————
「…………ふっ、詰んだ」
俺は自身のステータスボードでステータスを確認して……そっとステータスボードをポケットにしまった。
完全に諦めた俺だったが———後ろから無慈悲な声が聞こえて来る。
「白星……お前は強くなりたいんだろう?」
「え、あ、ま、まあ……でも流石に早いかなぁ……なんて」
俺が嫌な予感がして全力の愛想笑いでこの場を切り抜けようとするが———レオナ様はニヤッと笑って言った。
「———頑張れ」
「ぶっ飛べクソ牛がぁあああああああああああああ———ッッ!!」
俺は半泣きでロケランをぶっ放した。
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