第26話 「双沢愛咲祈!」

 俺は声をかけてから困った表情を見せている二人の女子の顔を見た。


 俺が声をかけた二人の女子は瓜二つの顔をしており、この二人が双子であることは一瞬でわかった。


 そういえば俺と新那の双子以外にも、別のクラスに双子がいるって話は聞いたことがある。

 とはいえまさかこんな形でその双子に声をかけることになるとは思っていなかった。


「あれ、もしかして君、双子の弟君じゃない?」


「本当だ! 弟君だ!」


「え、何で知ってるんだ?」


「そりゃ私たちも双子だからね。双子なんて珍しいし、同じ学年にいる双子の情報なんて知ってるに決まってるよ」


「決まってるよ」


 確かに愚問だったな。


 俺も俺たちのクラス意外に双子がいるという情報は知っていたし、この双子が俺たちのことを知っていてもおかしくはない。


「それもそうだな。それで、何かあったのか?」


「咲祈がスマホ失くしちゃったみたいで、今から二人で探そうと思ってたところなんだよ」


「なんだよ」


 スマホがなくなったという話には既視感があり、嫌な記憶も蘇ってくるが、まあこの問題はこの前の事件とは無関係だろう。


「どこで落としたか記憶にはないのか?」


「全く記憶には無くて……。手当たり次第探すしかないって感じかな」


「かな」


 双子だからといって姉妹の言葉の語尾を復唱するのはよくわからないが、仲が良さそうなのは間違いないな。


 姉妹で仲がいい双子は初めてみたが、家族ならではの気のおける関係性というのは羨ましくもある。

 どれだけ友達と関係を深めたところで親友にしかなれないし、この二人のようにはなれないからな。


「わかった、じゃあ手当たり次第探すか」


「え、手伝ってくれるの?」


「くれるの?」


「見つからなくても文句は言うなよ」


「文句なんて言うわけないよ!」


「ないよ!」


「じゃあ行くか」


「ありがとね。双川志道君だよね? 私は双沢愛祈ふたさわあき


「私は双沢咲祈ふたさわさき


「「二人揃って双沢愛咲祈ふたさわあさき 」! よろしくね!」」


「あ、ああ。よろしく」


 この双子は俺達が目指すべき理想の双子なのだろう。

 とはいえ今の状況から双沢姉妹のように仲睦まじい兄弟になるというのは流石に無理がある。


 侑志以外に兄弟はいないし、双沢姉妹のように誰かとこんな関係になるなんて一生叶わないのだろう。


 ……いや、俺が新那と家族になれれば双沢姉妹のように仲のいい家族にしか出せない雰囲気を醸し出すことができるのではないだろうか。


 --って俺はまた何を⁉︎ こんなにすぐ新那のことばかり考えていては命がいくつあっても足りない。

 って自分でも何言ってるのかよくわからないが、最近俺の頭は新那で埋め尽くされている。


 それを認めてしまったら無謀すぎる自分に嫌気がさすし、今後関係に亀裂が入ってしまうかもしれない。


 しかしこうなったらもう認めるしかない。


 きっと俺は新那のことが好きなのだろう。

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【投稿停止】双子の兄に劣等感を感じていた俺は、双子の姉に劣等感を感じていた美少女と幸せになります‼︎ 穂村大樹(ほむら だいじゅ) @homhom_d

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