彼女と僕の罪と罰
雨宮悠理
彼女と僕の罪と罰
薄暗い教室で僕は彼女に土下座する。
彼女を騙していた僕は床に頭を擦り付ける。彼女は目をぱちくりさせて話を聞いている。
「う、噓でしょ……冗談でしょ? ね?」
彼女はそう言って僕の肩を揺さぶる。僕はゆっくりと上体を起こして、彼女の目を見る。
「うん……噓だよ」
そう言った瞬間、彼女の目に涙が溜まっていく。
ああ、泣かせちゃったなと僕は思う。
もっと優しい言葉を選べば良かったかなと後悔するが、もう言葉は取り消せない。
僕はポケットから携帯電話を取り出して、彼女に突きつける。
「ごめん……」
そう呟いて僕は彼女を写真に収める。彼女は呆然とした表情で写真を撮られる。
「この写真をばら撒かれたくなかったら……僕と付き合ってください」
僕は彼女の目を見てそう言う。
彼女はゆっくりと顔を上げて、僕の顔をまじまじと見つめる。
その目は涙をためたままで、唇には薄ら笑いを浮かべている。
「いいわ……付き合いましょう」
彼女はそう言って僕にキスをする。夕暮れの教室で僕たちはキスをする。窓の外では雨が降っている。教室の中は夕暮れと雨の音で満たされている。僕たちはそれに逆らうようにキスを続ける。
彼女の僕の写真を撮って、キスをする。
これは一つの罪と一つの罰で、僕と彼女を縛り付けているものでもある。
「ねぇ……二人で逃げて幸せになろうね」
彼女はそう言って僕の胸の中で目を瞑る。僕は「うん」と言って彼女を強く抱きしめる。
雨はやむことなく小さな空間を包み込んでいた。
彼女と僕の罪と罰 雨宮悠理 @YuriAmemiya
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