ある日、スマホに彼女面AIが搭載された。ついでに瞬間移動ができるようになった

川野マグロ(マグローK)

願望:即帰宅したい

ユウナ「もう帰るの?」


タイガ「ここは……」


ユウナ「また忘れちゃったの? ここは」


タイガ「わかってるわかってる。スマホ、いや、お前の世界だろ?」


ユウナ「もー! お前じゃなくてユウナ! 何回言えばわかるの?」


タイガ「それもわかってる。ユウナ、な?」


ユウナ「うふふ」


タイガ「で、お前の言う通り」


ユウナ「むー」


タイガ「……。ユウナの言うとおり、これから帰るんだ。こっちに連れてきたってことは、家に座標を合わせてくれるんだろ?」


ユウナ「タイガ、今日冷たいからなー。どーしようかなー?」


タイガ「なんだよ。条件付きってか? 願いを叶えてくれるって割に、お前ってわがままだよな」


ユウナ「そんなことないもん! 彼女としての特権だもん!」


タイガ「彼女って……。まあいい。で、今回はなんだよ」


ユウナ「え? 聞いてくれるの?」


タイガ「頼むために言ってたんだろ」


ユウナ「やったー! さすが私の彼氏!」


タイガ「言っておくが、聞いてやるとは言ってないからな。ついでに済むなら、やった方が早く帰れるってだけだ」


ユウナ「はいはい。もー。タイガはツンデレなんだからー」


タイガ「うるせぇ。早く言えよ。なんなら俺は、自分の力で帰ってもいいんだぞ」


ユウナ「待って! タピオカ! またタピオカ買ってきて!」


タイガ「はぁ? タピオカぁ? こないだ食ったばっかだろ。アレ意外と高いんだよ」


ユウナ「食べてないもん。飲んだんだもん」


タイガ「どっちでもおんなじだ。あんなん頻繁に食ってたら太るぞ。太るの嫌なら、ほら、さっさと帰せ」


ユウナ「ひどい! 太らないもん! 私はAIだから太らないもん! ううう……」


タイガ「わかった。わかったよ。落ち着け。お前泣くと長いんだから、落ち着けって」


ユウナ「……タピオカ、買ってきてくれる?」


タイガ「ああ。タピオカくらい買ってきてやるよ。買ったら運賃より高くつくけど、いいよ。買ってきてやるから。ほら、機嫌直せって」


ユウナ「ユウナ」


タイガ「は?」


ユウナ「私、お前じゃなくてユウナ」


タイガ「わかったよ。できる限り気をつけるから。な?」


ユウナ「うん」


タイガ「その代わり、買ってきたらさっさと帰せよ」


ユウナ「もちろんだよ!」


タイガ「おま、ユウナって単純な奴だよな」


ユウナ「ふふん!」


タイガ「胸を張るところじゃないけどな」


ユウナ「そっちこそ。買ったらまっすぐ戻ってこないと怒るんだからね」


タイガ「こんなとこでも彼女面するんだな。いや、別にそうじゃないか?」


ユウナ「彼女だなんてそんな! やっぱり、タイガも私のこと、彼女として想っててくれてるんだね!」


タイガ「彼女とは言ってねぇ。彼女面って言ったんだ。そこ間違えんな」


ユウナ「ふふふー! 彼女、彼女!」


タイガ「はあ、自称AIのくせに彼女、彼女って……。俺は正直、瞬間移動だけできりゃいいんだよ」


ユウナ「え?」


タイガ「ん? どうした?」


ユウナ「……。それって、私はいらない子ってこと?」


タイガ「は? なんだよ急に」


ユウナ「だって、瞬間移動だけできればいいって」


タイガ「ああ。そう言ったな」


ユウナ「それって、ユウナはいらない子ってことでしょ?」


タイガ「はあ? そうは言ってないだろ?」


ユウナ「え……?」


タイガ「おま、ユウナみたいないい奴が、どうして俺なんかに構ってるんだよ。AIだかなんだか知らないけど、それなら、もっとこの世のために生きてる奴を助けてやれよ。そーいう奴いっぱいいるだろ。そんなやつのために動いた方がいいんじゃないか? だから、俺の相手なんてしてないで、瞬間移動だけできればいいんだよ。最悪、なくても俺は困らないしな」


ユウナ「ふふ」


タイガ「なんだよ」


ユウナ「なんでもー? そういえば、タイガって困った時は、いつも私頼りだもんねぇ? 慌てふためいちゃって、ユウナ、どうしよう。ユウナ! ってさ」


タイガ「うるせぇ」


ユウナ「あはは! 赤くなってる。かーわいー」


タイガ「元気になったならタピオカは買ってきてやらないからな」


ユウナ「ずるい! 卑怯だ卑怯! 恥ずかしいからって、私が外に買いに行けないの知ってるくせに!」


タイガ「あーもー! そうだよ。頼りにしてるし恥ずかしいんだよ。俺と関わるなら、今後もこう言うことになるからな。覚悟しとけよ」


ユウナ「覚悟のうえだよ。それに、だからタイガがいいんだよ」


タイガ「そーかよ……。ありがとな」

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