影の丘で輝く-エドワードの戦記

Mari氏

丘での約束

丘を見上げると、ゴブリンたちが石を投げ下ろしてくる。エドワードは騎兵隊の一員として、彼らに奪われた小高い丘を取り戻すためにここにいた。彼の手には家族の剣が握られ、身には祖父が戦い抜いた鎧を身に纏っている。彼ら騎兵は、勝利のための鍵だった。


太陽は空高く昇り、風が平地を横切っていた。エドワードの心は冷静で、彼は自らの役割を知っていた。彼の馬、マーシャルが静かに嘶くと、エドワードはゆっくりと頷いて、隊列の動きをチェックした。彼の隣にはヨハンがいて、先の突撃について冗談を言っていたが、エドワードの心は戦いに集中していた。


指揮官が剣を天に掲げると、歩兵たちは盾と槍で陣を固め、弓兵たちは矢を番えた。エドワードはマーシャルの鞍を固く握り、ゴブリンが占拠する丘に向かって突撃の準備をした。騎兵隊は短い距離を一気に駆け抜け、力強い蹄の音が平地に響き渡った。


しかし、敵は予想以上に頑強で、エドワードはゴブリンの一団と激しく戦うことになった。彼は剣を振るい、ゴブリンの短剣が空を切って彼の左肩に突き刺さった。痛みが走ったが、彼は敵を切り倒し、馬を駆って仲間のもとに戻った。


痛みを堪えつつ、エドワードは戦列に視線を送り、弓兵たちが一斉に矢を放つのを見た。歩兵たちが喊声を上げながら丘に向かって前進すると、彼は再び突撃のために馬を転回させた。この戦いが、彼らの土地を取り戻すための戦いであり、彼の勇気が家族の名誉を守るための戦いであることを、エドワードは知っていた。


戦いは激しく、夕暮れ時には多くのゴブリンが倒れ、小高い丘は再び彼らの手に戻った。エドワードは肩の痛みに耐えながらも、勝利の甘さをかみしめた。この日、彼らは家を守り、敵を打ち破ったのだ。そしてエドワードは、祖先と同じ勇敢な騎兵として、その名を家族の歴史に刻み込んだ。


後日

天は高く澄み渡り、小高い丘の上での悲しみと誇りが交錯する儀式が執り行われていた。平地は草花に覆われ、そこにはアレクサンドルとロバートの遺族が立っていた。エドワードは彼らの前に立ち、手には感謝状がしっかりと握られている。その紙は蝋封された、騎士のシンボルを押した紋章が刻まれていた。


静寂の中で、エドワードは感謝状を読み上げ始めた。彼の声は堂々としており、亡き兵士への敬意が込められていた。


「この地を踏むすべての人々よ、我々は本日、二人の英雄、アレクサンドルとロバートを讃えるために集いました。彼らは家族との暖かい日々を遠ざけ、共に戦い、我々の土地と自由を守るため最高の犠牲を払いました。」


彼は一息置き、遺族を見やり、言葉を続けた。


「アレクサンドルは弓兵として彼の的確な矢が多くの敵を倒しました。その勇敢な働きは我々が勝利を収める上で不可欠でした。彼の技量と勇気はこれからも語り継がれるでしょう。」


そしてエドワードは、次にロバートについて語り始めた。


「ロバートは歩兵として最前線で戦い、常に先頭に立ち我々を鼓舞しました。彼の不屈の精神は、同胞の勇気を湧き立たせました。」


エドワードは深く頭を下げ、続けて言葉を紡いだ。


「彼らの勇敢な行いと、最後まで諦めなかった心は、今日のこの平和な時代を築いた基盤です。アレクサンドルとロバートの名前は、永遠に我々の記憶に刻まれ、彼らの魂はこの丘に宿り続けるでしょう。」


最後にエドワードは、静かに感謝状と遺書を遺族に手渡し、全ての出席者と共に静かに二人の英雄を讃えるための黙祷を捧げた。その日、悲しみとともに誇りが深く心に刻まれた。アレクサンドルとロバートは、ただの名ではなく、その地の歴史そのものとなったのだ。


-感謝状-

勇敢なるアレクサンドル、およびロバートに、


あなた方の最後の瞬間までの勇気と献身に、最大の敬意を表します。

アレクサンドルは、その勇猛さで多くの敵を打ち倒し、仲間達に希望の灯をともしました。

ロバートは、若き命をもってしても前線を守り、我々の安全を確保し続けました。

二人の名は、我々の記憶の中で永遠に生き続け、その武勲は後世に語り継がれるでしょう。

あなた方の家族には深い哀悼の意を表し、この感謝状をもって英雄たるその行いを称えます。


永遠の平和と勇士たちの栄光を祈りつつ。

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