9.座布団について考えてみた

 寒さが厳しくなってきた今日この頃。

 冬場は布団の魔力がいっそう強くなりますよね。日の出の時刻も遅くなるし、暗い、寒い、床が冷たい──お布団天国から抜け出すのに、葛藤する季節になりつつあります。


 先日、コメントで座布団の話を残された方がいらっしゃいました。家光公の回で正座について書いたのですが、そこから座布団について思い出されたのでしょう。

 座布団の歴史は浅いと書かれましたが、そんなことないと思うんです。


 私も、座布団の歴史はそこまで詳しくないですが……布の歴史には興味があって、布団の歴史も少しだけ調べたことがあるので、違和感を感じてしまいまして。


 確かに、現在の綿をつめた四角い形の座布団が地方にも広がったのは、明治に入ってからと云われています。さらに一般的になったのは大正時代、大量生産されるようになったのは昭和だとも云われてます。

 そう考えると、歴史が浅く感じますよね。


 でも、広まったのが近代なだけだと思います。


 木綿や綿が高価であったこともあり、庶民はなかなか手が出せなかったでしょう。

 布団や座布団は嫁入り道具の一つだった時代もあります。布団を気軽に買い換えられるようになったのは案外最近のことで、高価なものだったんですよね。


 以前も書いたと思いますが、まず布が褒美の品になる高級品ですからね。綿をつめる布団だって高級品だったんですよ。

 布団すら高級品なのに、尻に敷く座布団を庶民が気安く持てたかといったら……憧れはあっても、広まるのは難しかったように思います。


 では、近代になって広まったものが、果たして、歴史の浅いものなのでしょうか。

 歴史とは受け継がれ、形を変えるものです。唐突に生まれたように見えて、ルーツがあるものです。


 平安時代に遡ります。


 しとねと呼ばれる敷物がありました。それが座布団のルーツだと云われてます。

 座布団というよりも敷き布団に近いですかね。一段高い畳の中央に敷いて使いました。寝るときの敷物──しとねと同じもので、座るか寝るかで表す文字を使い分けていたようです。

 上流階級でしか使われてませんでした。


 鎌倉時代には、この茵が正方形の小さいものになり、より持ち運びが簡単な円座と呼ばれるものへと姿を変えていきます。

 円座はい草や藁を丸く編んだものです。今年の大河ドラマ「どうする家康」でも、板の間で丸い座布団のようなものに、胡座をかくシーンがありましたね。


 茵の頃は、その縁を飾る色で階級が分かったと云われています。また、段差をつけることで上下関係を視覚化する役割もありました。

 座布団も同じですね。

 今でも座るときは、お座り下さいと勧められてから座るのがマナーだと云われるのは、格差を示すことが由来のようです。勧められる前に座ると、あなたより格上だ!と宣言することになってしまうのでしょう。


 さて、座布団の歴史は浅いのか。

 私が違和感を感じたわけを、なんとなく分かってもらえたでしょうか。


 歴史的な文化というのは、ぽっと生じるものではなく、古いものが形を変えていることが多くあります。


 「座布団」という単語が比較的新しくても、ルーツを調べると違う時代が見えてきますね。

 現代にも残っているし、なんなら、新しい形が生まれます。

 円座とネットで検索してみてください。ドーナツ型のクッションのような座布団が出てきます。戦国時代の人が座ったら、どう感じたでしょうかね。


 変化を知ることで、創作に使えるか考えるのが好きで、私は歴史を調べて古い時代に思いを馳せています。

 諸説あることがほとんどで、何が間違いだ正しいかが重要ではないとも思っています。知った事柄から、何を考えるかが大切だと。


 テストに出ないようなことや、それに対して私の思ったことをエッセイという形で書いてるのも、そのためなんです。

 基本的には様々な考えがあっていいと思う故に、座布団の歴史も深いと思った次第です。


 ところで、座布団の作り方、知ってる方はどのくらいいるのでしょうかね。

 綿をつめて、よらないように中央と四隅を糸で止めるんですけど、当然、手作業なんですよ。

 ミニ座布団を作ったことがあります。その時、人用の座布団は苦労だなと思いました。まっすぐ針を打つのが想像以上に難しかったんですよ。(私が不器用なだけかもしれませんが。笑)

 

 手仕事の座布団は、高価だったでしょう。そんな側面からも、座布団は庶民にとって憧れの品だったんだろうなと思えます。

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歴史が好きなだけの人の独り言 日埜和なこ @hinowasanchi

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