【下ネタ注意】ある介護職員の日常の一コマ~職員Tさん××擦り事件~

ブモー

職員Tさん××擦り事件

 私は、とある老人ホームで働く、介護職員だ。今から記すのは、去年体験した、本当にあった出来事である。


 何言ってんだこいつは。ノンフィクションタグ付けてんだろ、当たり前だボケ。この手記を目にした皆様は、そう思われることだろう。


 だが、念押ししたいレベルには、ものすんごい出来事だった。それはそれは、一生語り継ぎたいくらい。永遠に笑い転げたいくらい。そのくらい、当時の私には衝撃的だった。


 さて。本題に入る前に、このお話の主役も主役、T先輩について語っておこう。T先輩は、私の1つ上の男性である。彼の特徴は、ねっとりとした喋り方と、独特すぎる語彙だ。ここで、彼が今までに生み出した語録を、書き出してみよう。


『排せつに関しては大丈夫です! たらふく出たんで』


 たらふくとは言うが、出たものにまで付けるとは……。


『〇〇さん排せつ完了!』


 無線での報告にて。私が勤めている職場では、業務が終了するごとに、各々が持っている無線で報告することになっている。


 他の人は大抵、「終わりました」とか「終了しました」とかで語尾を締める。「完了!」とドヤった人は、T先輩くらいだ。


『〇〇さん排せつ終わりました。お通じありました。とぅるんって出ました』


 最後のいる!?!?


『やばい興奮しすぎて吐きそう』


 配ぜん中、唐突に言ってきたかと思ったら、「野球です」と倒置法を披露。何の脈絡もなく「興奮した」とか言われたので、シンプルに変態だと思った。まぁ実際、百合アニメで抜いてるし、NTR見てるし、スケベなことには変わりないが。


『え~これで、2階の方々メンバー全員揃いました』


 これを翻訳すると、「食堂にいた方々を、全員居室にご案内した」になる。文字に起こしながら思ったが、何をどうしてその発言になったのだろうか……。


『車椅子の方々はクリアです』


 うん……ゲームかな。ちなみに翻訳すると、「車椅子の方々は、全員食堂に移動しました」になる。


 さて。T先輩が、不思議な日本語を駆使するお方だということは、十分お分かりいただけただろうか。もうお腹いっぱいだろう。ちなみに、あげようと思えば、まだまだある。T先輩1人の語彙だけでなく、会話の流れで面白いのもある。


 だが、あまり前置きが長すぎても良くない。この辺で、本題を綴っていくことにする。


 それでは、ご覧いただこう。


 名付けて、"職員Tさんマ〇擦り事件”を――――。




 配属されて半年ほどが経った、ある日。排せつ介助の時間のことだった。


 入居者をトイレに連れて行き、ズボンを下ろす。うわー、けっこうな量のう〇こだ。う〇こは出来る限り遭遇したくないが、仕方がない。運が悪かったと割り切り、介助を始めた。


 処理するには、おしぼりが必要不可欠だ。あいにく持ち合わせていなかったので、無線で他の職員に依頼。ほどなくして、優しい人妻が、笑顔で持ってきてくれた。人妻からおしぼりを受け取り、さてどこから片付けようかと意気込んだその時。


 ――ガラッ。


 突如、部屋の扉が開いた。見ると、T先輩が、道具一式を持ってそこに立っていた。……ちなみに、呼んでない。もう一度言う、呼んでない。必要な道具さえ揃えば、あとは自分1人でできる。なのに、彼はなぜか、味方のピンチを救うヒーローのごとく、颯爽と現れたのだった。


 ぽかんとしていると、T先輩が言った。


「けっこう骨ですか?」

「骨!?!?」


 その辺に骨でも落ちてるのかと言いたいのか。もし、そうだとしたら、大惨事だろう。大々的にニュースになって、私たちの首が飛ぶ……、とまあ、冗談はさておき。


 ふつう、「骨がある」と言うのではなかろうか。……と思ったが、あとで調べたら、T先輩の言い方も正しいらしい。


 とはいえ、登場直後、開口一番「けっこう骨」発言は困惑するだろう。


「はい」


 T先輩は、全く動じずに返事をする。曇りのない、晴れやかな返事だった──。


 困惑する私を余所に、T先輩は、慣れた手つきでゴム手袋を2重に嵌めた。備えつけの洗面台で手を濡らし、何やらハンドソープのようなものをつけている。


 何をするんだろう。そう思っていると、T先輩はすぐに私のところへやってきた。


「こうすると、けっこう落ちるんですよ」


 直後、T先輩は信じられない行動に出た。


 ズボォォォォッーーーーー!


「!?!?!?」


 私は宇宙猫になった。


 ──今の状況を説明しよう。


 入居者のおばあちゃんは、トイレに座っている。横にある手すりを掴んでいる。

 おばあちゃんに向かい合う形で、T先輩がしゃがんでいる。

 少し離れたところで、私はその様子を見ている。


 その状態が、まず大前提である。で、そこからどうなったかと言うと……。


 T先輩が、おばあちゃんの股の隙間に、直接手を突っ込んだのだ。要は、トイレットペーパーを使わずに、シモを拭くのと同じである。


 当然、手を突っ込んだ先はう○こまみれ。一応手袋をしているとはいえ……とはいえ、ぶっとんでやがる。お前は、手袋を2重にすれば、自分のクソを手で拭けるか。否、拭けるはずはない。拭きたくはない。


 ゴッシゴッシゴッシゴッシゴッシ……


 う○こまみれのあそこを、淡々と擦るT先輩。やってることは、マ○擦りとそう変わらない。一歩間違えれば、セクハラ通り越して性犯罪なのですがそれは。入居者のおばあちゃんの方はと言うと、横にある手すりにつかまってされるがまま。ぽけーっと目を細めている。どういう感情なんだろうか。


「~~~、×○▽□◆。@:$※%」


 T先輩が、何かドヤ顔で説明している。しかし、目の前で繰り広げられる光景のせいで、内容がまったく頭に入ってこない。私は、その場に立ち尽くしたまま、フリーズしていた。


「――とまあ、厄介な油汚れだと思っていただければ!」


 ズボォッ……。


 いったん、おばあちゃんのあそこから手を抜いたT先輩。茶色に染まった手袋が視界に入り、私は正気に戻った。


 うわきったな……。私は思わず顔をしかめた。T先輩は、相変わらずドヤ顔だ。う○こまみれの手袋を見せびらかし……いや、取り替えている。


 せめて隠す努力してください。堂々と見せびらかさないでください。ドヤ顔で説明しないでください。う○このことを油汚れって表現する人初めて見ました。いろいろと言いたいことが、頭の中を駆け巡る。


「でも見ての通り、あまりオススメはしません」


 今までドヤ顔しながら説明していたのは何だったのだろうか。私は頭を抱えたくなった。と、その時。ノイズ音が鳴り、無線が入った。


『T君、今どこ?』


 おしぼりを持ってきてくれた人妻だった。人妻は、その日のリーダーだった。突然行方不明になったT先輩の居場所を、把握しておきたかったのだろう。


「今○○様の部屋です! もうすぐ終わります!」

『ア……ハイ』


 人妻は、諦めきった返事をして、無線を切った。


 T先輩は、誰にも制御することはできない。とあるおばちゃん職員が、彼を「チョロチョロしている」と評していたが、年長の人たちからしたら、本当にそのとおりなのだろう。20代半ばの男にとっては、限りなく不名誉な評価だろうが。


「──それじゃあ、あとはよろしくお願いします!では」


 宣言どおり、T先輩は出ていった。1人取り残された私は、呆然と現場を眺めた。たしかに、おしりの汚れはあらかたとれていた。しかし、床に落ちたものや便座についたものはそのままだ。……片付けなければ。


 それにしても、私は何を見せられていたのだろうか。彼の残りカスを始末しながら、自問する。勝手に来て、勝手に満足して帰って行ったT先輩。彼の真意を知ることは、きっと訪れないだろう。……というか、クソを手で処理する男の心なんぞ、正直知りたくない。


 片付けを済ませ、私は入居者を決められた場所へと帰した。そして、何事もなかったかのように、日々の業務は回っていった──。



 如何だっただろうか。これが、T先輩が引き起こした、衝撃の出来事の全貌である。この時の出来事は、一生忘れることはないだろう。そして、私の心の支えとなり続けることだろう。


 T先輩は、今も私と同じ職場で働いている。今後、どんな語録を生み出してくれるのか。どんな奇行を見せてくれるのか。まったく、楽しみなことである。







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