黄泉比良坂

@kody24

第1話 はじまり:一


 その日、大地震が日の本の國を襲った。

 人々は恐怖に震え、地震が治ったのちもしばらくは眠れぬ日々を過ごした。

 震源地は帝の座す京の都の周辺であった。

 しかし四神の守護を受け、何よりも帝の加護の元にある京の都にはさしたる被害はなく、人々は改めて帝の威光に畏怖の念を抱いた。


 その数日後、勅命により京周辺を調査するとまさに四神相応の地それぞれに、深く地の底に続く洞穴が現れているのを発見した。

 報告を受けた帝は自らが選抜した御陵衛士十余名を洞穴の調査へと向かわせた。

 結果は……ただ二人のみが生還、矢尽き刀折れ満身創痍であった。

 曰く洞穴内はまさしく黄泉へと続く道、数多の悪鬼死霊が跋扈し、命の限り戦った仲間も死して後は牙を剥く死兵と堕ちたという。


 さらには日が沈むと洞穴より怨嗟の声が響き出る。

 声は段々と近くなり、七日目の夜、ついに死霊の一体が外へ這い出でて来た。

 これは事態を予測していた帝の命で備えていた衛士らに即座に討ち取られるが、四つの穴全てで今後同じ事が起こるという予感は、誰しもが抱くところであった。


 そして洞穴は黄泉比良坂と名付けられ、地震より十日後、帝は日の本の國全土に触れを出した。


『京の守護並びに、黄泉比良坂の調査、封印の為の調査団を組織する

 知勇に自信あるもの、これを拒むことなく迎え入れる

 目的を達したのちの報酬名誉は相応のものを用意する』


 かくして京の都に多種多様の人々が集まり、底の知れぬ洞穴へある者は金を、名誉を、死地を求めて挑んでいった。



【設定:日の本の國】

 四方を海に囲まれた島国

 帝を中心とする中央集権国家ではあるが、ある程度自由な地方自治が行われている

 様々な種族が暮らし、さらに京などの大都市には外つ国の者たちも多数訪れている


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