第4話 都会の水

東京に出てくる前は京都で2年過ごした

京都もまぁまぁ都会だったけど

東京には及ばない と上京してすぐ思った


でも京都では道を間違うことはまず無い

東京の曲がりくねった道 田舎者は方向を失う

シンボリックなタワーがあったとしても

視界を遮る高層ビルに阻まれる

ここで生活を始めたばかり 馴染むのはまだ先のようだ


神保町までは結構歩かされた

途中 角のタバコ屋で外国製のタバコを2箱 黒と白を買った

こうでもしないと 歩く早さについていくことはできない


下った坂道をまた上り 上った坂をまた下る

たどり着いたのは路地裏の古本屋

その中に店はあった

某大学の裏手のその店は 表の雰囲気とは裏腹に

都会の喧騒を忘れさせてくれる佇まいだ

猫の額ほどの坪庭 碁卓のある席へ通された

ビールの広告入りのグラスに 東京の水が注がれて

そっけなく差し出された

「3つね」と そっけなく聞かれた

え 何が?と店員の顔を見上げた瞬間

「3つでお願いします」「ねっ いいよね」とアイコンタクトされた

店にはメニューは1つしかないらしかった

当然「う うん」としか言えなかった


4月2週目だというのに 日中は暑かった

出された水にはレモンの櫛切りがグラスの底に沈んでいたが

飲めたもんじゃなかった

都会の味ってやつ それを身体に入れることはできなかった


私はカバンからペットボトルの水を取り出し 口に含んだ

それから さっき買ったタバコに火をつけた

上京して5日

タバコの減りは早くなった


それを見ていたふたりが口を合わせてこう言った

「そうか キミ出身は東京じゃないね」

田舎者はすぐバレた

小さくひとつ頷くと タバコを深く吸った


それから 私から挨拶した

ナオキが2つ

ハジメが1つ 年上だった

年齢の差は 教養の差というか 彼らは一様に4大卒と現役なのだから

なんとなく なんとなくだけど年上の雰囲気がした

彼らは今日初めて知り合ったとは思えないほど 息が合っていた





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東京リッパー ふたご座の鐵午 @miyavi382

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