第10話 母ちゃんの実家の神様

母ちゃんの実家は万里ばんりの小さな町に有った。

杉の皮ぶきの平屋で、囲炉裏が有った。玄関を開けると

土間で、裏の庭に通じていた。

庭には井戸が有って奥には蔵が有った。その蔵は中に

人が住んでいて賃貸してたようだった。鶏を飼っていて

産まれた玉子を手渡されて「飴こ(飴のこと)

ど交換して来い」といわれた。

店に行くと

「あそこのおばあちゃんの家の子?」

「うん」

「次からはお金を持っておいで」と言われた。

後で聞いたら、姉ちゃんもおんなじことがあったみたい

だった。

婆ちゃんの頭の中では未だに物々交換の頃のままだった。


そこの町のお祭りが近くなった時、母ちゃんに連れられて

神様の掃除に行った。

裏山の中腹に小さなお社が有った。そこへ辿り着くまで、

人ひとりがやっと通れる細い道をジグザグに登って行く。

「この道草刈りしないの?」

「草刈りなんかしちゃいけないことになってるんだよ」

そのお社の管理はずっと婆ちゃんの役目だったが、年とって

出来なくなったので、今年限りでお役御免になるんだそうだ。


大人になって気が付いた。

あの山をもっと登って行けば、万里城跡に出れるんでは?

お社の先に道は見えなかったが、草刈りしてないから

見えないだけで、隠れ道が有ったのではなかろうか

お城からの、もしもの時の逃げ道だったのではなかったのか

お社はその道のカモフラージュだったのではないかと思う。

婆ちゃんの家は江戸時代は、万里城城主の万里友一様の

家来だったそうで、その道を管理を任されていたようだ。

歳月が流れて管理の目的がずれて来たみたいだ。


それ以降そのお社を訪れた事は無い。

今はどうなっているのか知るすべもない。

その頃は歴史何て興味もなかったから調べもしなかった。


今頃になって、失敗したなあと思うが、仕方ないことだ。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



10秒前のことさえ覚えていないじいじには60年前の

思い出を思い出すことはとても難儀なことじゃて、昔話は

今日でおしまいじゃ。

まあ、そのうち思い出したときにでも続きを話そうかのう。

風邪ひくなよ、歯磨けよ、寝る前におしっこ行っといで


お終いです。

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じいじの昔話 霞千人(かすみ せんと) @dmdpgagd

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