掌編小説・『縁結び』

夢美瑠瑠



(これは、今日の「縁結びの日」に、アメブロに投稿したものです)


 スマホをいじっていると、「お見合いマッチングライブ配信アプリ・ラブゲーム」という広告が目に入った。


 「…『ラブゲーム』は、ZOOMとほぼ同じ機能と形式で、ライブ配信とお見合いが同時にできる、新しいマッチングアプリです。さあ、あなたもさっそく登録して、アルバイトと恋人獲得を同時にやっちゃいましょう!」

とある。


 「ふうん…なかなかいいアイデアみたいな感じやけど?」私は独り言ちた。29歳の独身女で、恋人いない歴も29年。焦っている。藁をもつかむ感じで、『ラブゲーム』に登録して、ログインしてみた。


 ハンドルネームはランダムで「蓮華」になっている。「挨拶は時の氏神」ともいうなあ、と思ってその名前で、「お見合い」に参加してみた。


 私のぷっくりした顔が真ん中に大きく出て、その周りに7~8人の男女の顔が配置されている。「ホンマこれ、マジでお見合いやなあ?顔が大きいからハズカシわ」


 つぶやいた声がそのまま流れている。みな、思い思いにくつろいでいて、何か飲み物を飲んでいる人もいる。ハンサムな人もいればブオトコもいる。美女が多い。自信がないのに参加している女は私だけらしい。


 それぞれ簡単な自己紹介をして、お見合いがスタートした。一応「本気でパートナーを探している」人ばかりだろうから、私も気合を入れて臨むことにした。」


 一応司会者らしい人もいて、「えー発言したい方はタップして合図してください。」と言う。

 婚期を逃しそうで「焦っている」私は、”おしゃべりな道化者”のキャラを演じて、目立つという作戦に出た。


 「蓮華です。田舎に住んでいて、周囲は田んぼで、春にはレンゲ畑みたいに綺麗な風景が広がるんです。どうか、命の洗濯に我が家へいらしてください。パンツも洗濯してあげたい!」


 皆、笑った。


「面白い人やねえ。蓮華さんか。LINEの交換できる?」

一番ハンサムだと思っていた男の子からさっそくオファーが来た。

「もちろん!えーと、どうするのかな…」


司会者から聴いて、めでたくID交換できた。


 … …


 LINEでやり取りして、交際を深めて、半年後に私はその彼とめでたくゴールインした!

 聞くと、アプリは運営を始めたばかりで、結婚に至ったカップルは初めてだという。


 第一号を記念して、親会社のRNAというところから30万円がお祝い金としてプレゼントされるという。

 

 その代わりに「縁結ばれカップル第一号」として、テレビCMに出演してくれと言うので、私は調子乗って?出演した。

 

… …


 CMは、全国に流れて、「不釣り合いなカップルで面白い」みたいな感じになんだか流行して、私はそれは不満やったけど、お金をもらえて、有名人みたいになれて、旦那様もできたというのでご満悦で、事の成り行きには至極満足していた。


 「『ラブゲーム』様様やね。ね、貴方」


私は、CGで捏造されたアバターのサクラ彼氏の映像にキスをするのだった…


<おしまい>





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掌編小説・『縁結び』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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