第3話

「おい、乱暴に扱うな。そいつは人質なんだぞ」


 女が俺を力尽くで車の中に引きずり込んだ男たちにそう言って叫ぶ。

 どうやら俺は人質にされるらしい。


 奏葉は大丈夫だろうか。変なことされてなかったらいいが…もしされてたら後々こいつらを警察に連れて行って…いいや、今は状況を整理しよう。


 女は俺が大人しくなったのを確認すると助手席に座った。


「さぁ、はやく出なさい。追手が来る前に」


 そもそもここはお嬢様学校だというのになんてセキュリティが甘いんだ。こんなゆるゆるだったら犯罪者たちはやり放題だ。

 もしかしたら俺以外にも被害にあっている人がいるかもしれない。


 なぜそれがテレビで放映されないかと言えば、世間体を守るためとかそんな理由だろう。生徒の無事よりも世間体を重視するような学校なら今すぐにでも退学してやりたいところだ。


 まぁ、あくまで偏見なわけだが。


 車が出発するとなんなく校門を出て公道を走り出す。


 俺の両隣には屈強な男が座っており、なにか反抗しようとしたらすぐにでも抑えられてしまうだろう。


 為す術がないとはまさにこれだな。


 今頃母親に連絡が行ってパニックになっているところだろうか。出来るだけ早く助けてほしいな。こんなところ、早く去ってしまいたい。







 しばらくして突如車が停車した。俺は苦し紛れに窓の外を見てみると大きな廃工場があった。辺りは木々に囲まれていて人里はありそうにない。


「さぁ降りな。今日からここがあんたのお家だよ。身代金を寄こすまで我慢してるんだね」


 俺は再び男たちに両手を無理やり捕まれ、廃工場のもとへと歩く。


 キィ、と耳にくる雑音を鳴らしながら扉が開き放り込まれる。そしてすぐに扉が閉じられる。


「くっ、開かないか」


 中から開かないようになってる?これじゃ何もできない。

 見た感じ工場内には人が通れるようなものはない。


 俺はため息を吐いて、その場に倒れこんだ。


 絶望だ。ここでは俺は無力。脱出しようとしても、外には男たちがいる。まずそもそもの脱出ルートも見当たらない。


「大人しく助けを待つしかない…か」


 工場内は真っ暗だ。少しずつ目が慣れてきたがところどころに大きな箱があるだけで他は何もない。

 どうやって寝ればいい?食事は?明かりは?


 ガチャン!


「誰だ!?」


 物音?誰か他にもいるのか?

 もしかして中にも監視役の男が!?


 俺は恐る恐る音のした方へと進み、立ち止まる。人の気配だ、確かに人がいる。


「誰だ?俺は攫われた飯沼 晃だ。もし同じように攫われたような奴がいたら出てきてくれ」


「あ、あの…」


「良かった。誰かいたのか」


 これで協力できる、とは口に出さず俺は返事をした人のもとへと行くと、こう話しかけた。


「大丈夫か?」


「はい、飯沼さんは?」


「俺は大丈夫だ。まだ俺以外にも被害者がいたんだな。名前教えてもらえるか?」


「東 果南かな。聖霊学園の二年生です」


「学校も同じか。改めて言うが俺は飯沼晃だ。今日から通う予定だったんだが、誘拐されてしまった」


「もしかして今日転校予定の飯沼くんですか?私のクラスで昨日からいろいろと噂されてました。よろしくお願いします」


「あ、ああ。よろしく」


 何か東さん、余裕だな。

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お嬢様学校のウラとオモテ ~ある事情で貴族学校に転校した俺が心が病んだお嬢様方に愛される~ minachi.湊近 @kaerubo3452

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