前世勇者の願い事
灰雪あられ
一つ目 自伝の贈り物はご遠慮します
6歳の誕生日に貰った贈り物は、自伝だった。
「これを読んで学びなさい」と言った爺さんには、自伝を薪にし沸かした湯でつくりし激渋茶をお礼にだした。
自伝を記した彼は人に頼ることを大層嫌ったそうだ。
故に彼は来世の自分に願いという名の後始末を託した。
「今世で願いは全て叶わぬだろう。だがしかし、案ずることはない。来世の私が叶えるのだから。」
自伝に記された文に思わず唾を飛ばしたものだ。
いい感じに人に尻拭いをさせようとするところから察するに、あの自伝は相当美化されている。
それでもコノ国の人々は信じおった。
彼が自伝で予言したように、シルシを持つ子供が生まれたことも妄信を後押ししてしまったのだろう。
その妄信は恐ろしいことに今世の彼に「前世の願いを叶えよ」と言う。
彼の名前はシャー・ユウ、残した偉業は魔王討伐。彼を人は勇者と言う。
そして僕の名前はシャー・ユウ、残す偉業はまだ未知数。僕を人は勇者と言う。
爺さんがお茶を吹き出し6年たった、12歳の誕生日。
さぁ、どうしてやろうかと考えながら積み重なった自伝を一冊薪にくべた。
前世勇者の願い事 灰雪あられ @haiyukiarare
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