第6話 ゴク・ラク・チョー
私たちは二人でパーティーを組むことになったので、まずは互いのスキルを確認することにした。私はレベル6になったばかりなので、どんなスキルを持っているのかは一旦置いて、先にめるさんのスキルとステータスを確認する。
めるのステータス
める Lv:4
Status:
種族:ビースト(狼)
職業:アイドル
HP: 250 (B)
MP: 90 (C)
ATK: 40 (D)
DEF: 100 (B)
INT: 30 (D)
MEN: 130 (A)
DEX: 50 (C)
AGL: 50 (C)
LUK: 100 (A)
スキル:
ステージデビュー(常時発動型)
効果:周囲にいる味方のステータスが10%上昇する。
私を見て!
効果:このスキルを使用すると、一定の時間、使用者の周りの敵のヘイト(敵の注目や攻撃の対象)を自分に集中させる効果が発動する。さらに、スキル発動時には自己回復の効果も持つ。10秒間にわたり、使用者のHPを3%ずつ、合計で30%回復させる。効果時間 100秒、CT 60秒
ハーモニックシールド
効果:このスキルを使用すると、光の盾を生成して、一定時間ダメージを軽減する。効果時間 30秒、CT 30秒
「めるさん、このスキルで一人での狩りは大変じゃなかったですか?」
「よく言うでしょ?当たって砕けろって!」
相変わらずのんびりした性格だった。しかし、戦術を考えると、めるさんが前衛で敵の注意を引きつけ、私が後衛から攻撃するのが基本的な戦略になりそうだった。
「レベルが上がったことを考えると、新しいスキルも取得しておくといいかもしれませんね」
「私も新しい攻撃スキルを覚えられるかもしれない!」
私はその間、自分のスキルツリーを開いて、どのスキルが良さそうか考えていた。
その時、めるさんが興奮気味に声をかけてきた。
「ねえ、この『ディーヴァディフェンス』ってスキル、どう思う?」
スキル:ディーヴァディフェンス
効果:このスキルを使用すると、アイドルが一時的に指定した相手のダメージを代わりに受けることができる。
彼女は「攻撃スキルを覚えるかもしれない!」と言っていたのに、提案したのは明らかに防御スキルだった。めるさんの気持ちは、山の天気のように急に変わるのかもしれない。
「攻撃スキルは取らなくてもいいんですか?」
彼女はしばらくの間、深く考え込み、困った顔で言った。
「欲しいんだけど…… それでもこのスキルのほうが役に立てる気がする!」とめるさんは言いながら、結局笑顔を見せた。彼女の性格が透けて見える瞬間だった。
「じゃあ、私はこの『秋葉の舞』ってスキルを取ってみます」
スキル:秋葉の舞
効果:鮮やかな紅葉の葉っぱを生み出して操り、周囲の敵を惑わせる。さらに、旋風を形成し、敵にダメージを与えることもできる。
これで私も「狐火」以外に新しい攻撃手段を手に入れることができた。具体的に旋風がどれくらいの力を持っているかはまだわからないが、空中の敵に対する攻撃方法として役立つと嬉しい。
「たるひちゃん、スキル取得はもう終わった?」
「はい、終わりましたよ」
「この後、予定はあるの?」
「実は酒場での依頼があと一つ残っているんです。それを先に終わらせても大丈夫でしょうか?」
私たちは森とは反対側にある牧場に向かうことになった。
シュタットフィールド牧場
目的の場所に着いた私たちは静かな農場エリアに立っていた。足元には柔らかな土の感触、鼻をくすぐる新鮮な草の香りが広がっていた。
「こんなゲームの世界での牛の乳搾りかぁ……」
めるさんは赤い髪を靡かせながら言った。
私は、場所が合っているかメニュー画面を確認しつつ、「戦闘ばかりじゃなく、こういうのもあるのがこの世界のすごいところですよね」と答えた。
近くの農場の住人がめるさんに声をかけてきた。
「おお、旅の者たちよ、私の農場へようこそ。牛の乳搾りを手伝ってくれるのかい?」
私は思った。自分の種族のせいでNPCたちに恐れられるのだろうか……めるさんが話し手としていてくれて本当に助かった。
「もちろん!でも、私たちは初めてだから、コツや秘訣を教えてもらえますか?」
住人は「心のこもった手つきが大切。牛もその気持ちを感じるんだよ。だから、優しく、丁寧に頼むね」と教えて、何かの作業で忙しそうに去って行った。
「めるさん、ごめんなさい。私のせいで全てを任せてしまって。私の種族のせいで、NPCたちに避けられるみたいで……」
「気にしないで!私たち友達でしょ?一緒にいるんだから頼りにしてくれたら嬉しいな!」
私は頷き、「ありがとうございます、めるさん」と感謝の言葉を伝えた。
その後、私たちは農場で乳搾りの作業に取り掛かった。めるさんはとても手慣れた動きで乳搾りをしていて、経験があるのかと思った。私はその3分の1くらいの速度だったが、徐々に良いリズムで乳搾りが進んでいった。
突然、農場の住人が戻ってきて、深々と頭を下げた。「さっきのこと、気を使わせてしまって…。あんたも一生懸命手伝ってくれたのに、気分を害してしまったかと思うと、心から申し訳なく思ってるんだ。」と誠実に謝罪の理由を述べた。
私は微笑みながら返した。「大丈夫です。良かったらまたお手伝いさせてくださいね」
住人は感謝の意を示すために、新鮮なミルクを二人にプレゼントしてくれた。
アルフェンシュタットへの帰り道
「たるひちゃん、よかったね」
めるさんは優しく私に微笑んだ。
「ええ、思っていたよりも皆さん優しいです」
めるさんは考え込みながら言った。
「この世界はゲームだけど、住人たちも私たちプレイヤーと同じように感情を持っているんですね」
「そうですね。AIとはいえ、心を感じることができます。それに、私たちがどんな行動をとるかで、彼らの態度も変わることを実感しました」
と私は農場の住人のことを思い出しながら言った。
「それなら、これからも一緒にこの世界の人たちと接して、もっとたくさんの人たちと仲良くなろう!そうすればたるひちゃんが怖がられることもなくなるよ!」
めるさんは笑って言った。
「それがきっと業を下げるということに繋がるんだと思います」
雑談しながら進む私たちの道を、3匹の鶏がふさいでいた。
ゴク、ラク、チョー
HP:
ゴク: 150
ラク: 130
チョー: 100
説明:
ユニークモンスターである「ゴク、ラク、チョー」は、三匹一組で行動する特異な鶏たちである。ゴクは攻撃的な性格で、特攻役として敵に直接突っ込んでくることが多い。一方、ラクは敵を翻弄する役割を持ち、巧妙な動きで相手の注意を逸らしてくる。最後に、チョーはダンスを踊ることで自身や仲間の能力を高める能力を持っている。
なぜか私には鶏との遭遇が多いようだ…
そのHPから見ても特に強そうではないが、ユニークモンスターということで特別な能力を持っている可能性もあるかもしれない。
「たるひちゃん、この鶏たち、何か変じゃない?」とめるさんは驚いた様子で言った。
「ストロングチックに比べると、どうみても現実の鶏との違いがわからないですね」
めるさんが興奮して叫んだ。
「しかも極楽鳥だって!」
ジト目で鶏を見つめながら、私は言った。「それはニワトリです。混同しないでください」その後、私はどのように対応するかを考えていた。
するとゴクが私に急速に接近してきた。
「たるひちゃん、気をつけて!」
めるさんの言葉に私は迅速に反応した。
「この間のヒヨコとやってること、まるで一緒ですね……」
瞬時にゴクの攻撃を横に避け、鶏の横腹に繰り出した蹴りで鶏を上空へと蹴り上げた。
「この装備を使うのは初めてかもしれません」
護符を手に取り、イメージを込めて唱えた。「秋葉の舞」周囲に紅葉が舞い上がり、強力な旋風が形成され、その中心へと上空の鶏が吸い込まれていった。
「めるさん、いまのうちに準備をお願いします」
「わかった!ほらモンスターのみんな、私をみて!」とめるさんが言うと、ラクとチョーはめるさんのほうへ注意が逸れたようだった。ゴクはどうなったのかまだわからなかった。
「ハーモニックシールド!」
彼女のまわりには光るシールドが出現した。ラクはそのシールドを攻撃していたが、シールドの中のめるさんには傷一つつかないようだった。一方で、チョーは少し離れた場所で踊っていた。
チョーの求愛ダンス
ダンスが終わるとラクの周囲にオーラのようなものが光って、能力が上がったのが分かった。
「あれはちょっとめんどくさそうです…」と私は思わず呟き、即座に竹筒を開いた。「クダ、呪縛でチョーのダンスを止めてください!」と命令すると、竹筒からクダが飛び出し、猛スピードでチョーに向かっていった。
一瞬のうちに、クダの技が成功し、チョーのダンスは中断された。「こけ!?」無事に捕獲できたようだ。
視界の端で何か光るエフェクトが飛び散るのを見かけた。ゴクが空から落下し、その衝撃で追加のダメージを受けたようだった。そして、そのダメージがゴクにとって致命的であったようで、ゴクは動かなくなった。
「あとはとりあえずめるさんの援護に!」
めるさんとラクとの闘いは壮絶だった。ラクの攻撃はほとんどダメージが通っていないのだが、めるさんの攻撃も当たらないようだった。
「もしかして、あなたは私の宿命のライバル…?」
まずいです。めるさんがなにかおかしなこと言い始めてます。
「めるさん、どいてください!狐火!」
現状で一番攻撃力のある技、狐火を使用することにした。戦況が長引いてしまうと、不意に他のモンスターや敵が近づく危険もあるからだ。
めるさんは私の言葉にすぐに反応し、バックステップで距離を取った。その瞬間、私の手から狐火が3発、直線的に飛び出し、ラクの方向へと突き進んだ。
煙が晴れると、驚くことに、前にいたラクの姿はなく、代わりにそこには金色に輝く、揚げ立てのフライドチキンが置かれていた。しかもそのフライドチキンは動きだし、宙に浮いた。なんと、ラクは狂気のフライドチキンという新しいモンスターへと進化してしまった!
めるさんは目を丸くして驚きの声を上げた。
「たるひちゃん、狐火ってそんなに強力なの!?フライドチキンになったよ!」
私も驚きのあまり、口をポカンと開けていたが、その後すぐに叫び声を上げた。「いや、揚げてないんです!?どういうことなんですか!?」
狂気のフライドチキンは、コケコッという不穏な鳴き声を上げながら、私たちの方へとゆっくりと近づいてきた。
フレンズテール~狐のVRMMO珍道中~ ゆきんこ @siromohu6
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。フレンズテール~狐のVRMMO珍道中~ の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます