第2話

大男との死闘に勝利した俺は、すぐに山田のもとへ向かった。

Aのことも気になるが、筋肉が服を着て歩いているAのことである。もやし二人に遅れはとらないだろう。そう思って山田のもとへ駆けつけると、

パチッ、パチッ、パチッ、と大きく感覚を開けた拍手が、まるで己の余裕感を醸し出すように廃工場に響いた。そしてその拍手の主がクレーンの影から姿を現した。

「いやぁ驚いたよ、小さいのはしょうがないとしてあれがやられたんだから」

と言って、男は倒れている男を見た。男は俺と同じ170ぐらいの体格で、他校の学生服を着ていた。俺は山田の様子がないことに焦った。

「おいっ、それより彼女はどうした?早くしねぇとお前も寝てもらうことになるが」と俺はファイティングポーズをとると、

「魅力的な提案だが…いいのか、彼女がどうなっても」と男が言う。

奥から山田を連れた大男が出てきた。体格の質や顔立ちはさっき倒したやつと変わらなかった。

「おいっ、2号かよ!」と思わず突っ込んでしまう。

それよりも問題は奴が山田を人質にしてきたことだ。二号は山田の後ろから手をまわし、首にナイフを突きつけていた。その恰好は、強盗が人質を取るときのそれだった。一方山田は終始おびえている様子でナイフがちらつくたびにヒッと顔をゆがめていた。

「わかった、いう事を聞くからナイフを下げてくれ。要求は?金か?」と両手を上げた。


さすがに人質を取られちゃ、こっちも簡単には手が出せない。それに下手に動いて彼女のかわいい顔に傷でもついたらそれこそヒーロー失格だ。


「要求?、なもんあるわけないだろう」と男が。

「ハァ、目的もなしか」と俺が言うと

「この女は俺を振りやがったからな、これから何するかは言わなくてもわかるだろ」と山田のほうをなめまわすように見た後、男は下種な笑みを浮かべた。


「んじゃ、こっちからの要求を言おう。いますぐに彼女を解放するか、顔が見るに堪えないくらい変形させられた後解放するか、決めろ!5秒以内だ!」とおれが言うと、

それを聞いて激昂した男はもういい、やれっと指示を出し、二号はナイフを持った腕を振り上げた。


刹那、金属のように光沢感のある細いものが飛んできて、二号のナイフを弾いた。カンッと高い音が空間に響き、驚きのままで動けない二号らの隙をつき、俺は距離を詰めた。山田の手を取り、自分の方に引っ張る。そのまま抱き寄せ、片方で抱えながら二号のボディを蹴り飛ばす。その後バックステップで距離をとると、Aが出てきた。やつがボールペンを投げ、二号のナイフを弾き飛ばしたのだ。

「よくわかったな」と俺が言うと

「そりゃあれだけ不自然にされたらな」とAがにやけながら言う。

厄介事に首を突っ込む俺らだが、無策で行けばもちろん返り討ちにあることだってある。だから、軽くサインみたいなものを決めている。さっきの両手をあげたのは正しくそれだった。

「んで、そろそろ離してやれよ」とAが言うと、自分が何をしてたかにやったと気づいた。

「うわっ、すまん」

「い、いえ」と山田が軽く俯く。





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ヒーローズ 加茂半蔵 @kamohann

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