ダンジョン配信初心者だけどヤバい美少女インフルエンサーに急遽コラボされてバズ「らせられ」た件

第8話 「多いですよ！」

≪こんにちは！≫

≪こんにちは≫

≪こっちにも来ました≫

≪ブレンダちゃんから来ました≫

≪こんにちは≫

≪わこつです≫

≪チャンネル登録しました！ダンジョン初見って新鮮！≫

≪こんにちは！≫

≪こん！≫

　読んでいるコメントが次々と上へ行き、画面外へと押し出される。

　そして次のコメントを読もうとしても、そのコメントも一瞬にして上へと昇っていく。

　コメントを読む暇がない。

　配信管理画面の中央には現在見ている視聴者の数が折れ線グラフで表されている。

　グラフは右肩上がりを続けており止まる気配はない。

　画面に表示されている視聴者数を見ると、そこには5000人と表示されており、今でも次々と数字が上がっていく。

　視聴者数5000人。5000人もの人が俺の配信を今この瞬間に見ている。

　ありえない。俺なんかの配信を5000人が？！

「な、なんですかこれ！？」

「へー5000人かー。少ないよ、みんな！

　もっとまっくんの配信を見に行ってあげて！どうせみんなゴールデンウィークで家でゴロゴロしてるんでしょ！二窓くらい余裕だよね！」

「多いですよ！」

　5000人って。想像もつかない人の数だ。

　小さなドームだったら半分埋まってしまうくらい？

　そんな数の人たちに見守られながら配信するってこと？

　俺はとんでもない速さで流れていくコメント欄を何とか目で追い返答していく。

「サブローさん、こんにちは。カムイさんもこんにちは。えっと、L４N１さんこんにちは。織姫さん、こんにちは。ブレンダ大好きさん、ありがとうございます。がんばります。梅田さん、こんにちは。ひ……何て呼ぶんだろうこれ。あのすみません。読み方分からないけど、チャンネル登録ありがとうございます。雨ちゃんスタジオさんこんにちは。ヨーダさん―――「ちょっと待って。全員に返答する気？」

「違うんですか？」

「無理無理。5000人もいるんだよ。コメント読んでいるだけで終わっちゃうよ。コメント欄はざっくり見て、質問とか面白いコメントに返答すればいいよ」

「なるほど。それは良かったです」

≪全員に返答する気だったのか……≫

≪天然で草≫

≪本当にダンジョン配信見てないのか≫

≪ダンジョン配信どころか配信すら見たことない感じ？≫

≪これは流石にネタでしょ≫

≪流石ダンジョンにスコップを持ってくる男ｗ≫

「スマホじゃなくて、ウィンドウでコメント欄を見ることができるよ。

　ほら、【ダンジョン配信】スキルのウィンドウを開いて右上の――」

　コメント欄をスマホで見ていたら、ブレンダさんがダンジョンのウィンドウでコメント欄を見ることができる方法を教えてもらう。

　なんでもありだな、ダンジョン。いやこれは【ダンジョン配信】スキルか。

「そういえばスマホはポケットに入ってましたけど、普通に使えるんですね」

「そうだね。一応他の物もウィンドウのアイテム欄から取り出すことができるよ。

　スマホとかの小さな物は最初から持ってることが多いけど」

「それもそうですけどインターネットが使えるのが不思議だなって思って」

　最初このダンジョンに来た時彼女は西洋風転移型と言っていた。

　だからてっきり遠いどこかに転移してきたって思ったけど、電波とかが届くってことは日本のどこかにここはあるのだろうか。

　彼女はにやりと笑う。

「それはね実は……」

「実は……？」

　そしてキリっとした表情で言った。

「――私にも分からない！」

「ブレンダさんにも？！」

「いや、学者じゃないし私にも分からないことはあるよ。まぁ魔法やスキルとかの科学を超えた技術があるし、なんか、こう、上手くやってるんだよきっと！」

「まぁ、確かに……」

　今更ではある質問だった。

　俺はチラリとコメント欄を見る。

≪分からないんかい！≫

≪確かに当たり前のように思ってたけど何で繋がるんだろう≫

≪ブレンダちゃん決め顔なのに分からないのｗｗ≫

≪草≫

≪ダンジョンパワーでスマホは動いています≫

≪なんか魔法とかそういう不思議パワーが働いています≫

≪質問なぜダンジョンでもスマホの電波が届きますか？回答現在有力な説が4つあります。1つ目は次元歪曲説です。転移門により違う場所に移るのではなく、3次元空間が歪められ一時的に12次元空間がその場に発生しダンジョンが生成されるという考え方です。ワームホールを伝っていくことができ3次元上では同座標にあることから電波が届くと考えられます。2つ目に……これから先はスタンダードプランに加入したら読むことができます。こちらから登録……≫

≪AIコピペニキｗｗ≫

≪せめて広告部分は消してからコメントしろｗｗ≫

　分からない。

　草とかｗｗは確か面白いという意味だと記憶している。

　コメント欄の彼らがどんな雰囲気で笑っているかが全然分からない。

　コメント欄はみんな楽しんでいるけど俺だけおいていかれている。

「それにしても初配信で5000人ってすごいねー」

「あ、やっぱりすごいんですね」

　全部ブレンダさんのおかげだけど。

「私なんか初配信の時最高同接3000人くらいしかいなかったよ」

「詳しくはないですけどすごく多いんじゃないですか？今回の5000人だって全部ブレンダさんのおかげですし」

「まぁ、私の場合は国内初の女子学生の探検者（シーカー）だったしね。それなりに注目を集めてダンジョン配信も盛り上がり始めた時期で運が良かったと思う」

「誰がどう聞いても実力じゃないですか」

　もしかしてブレンダさんてかなりすごい人なんじゃないか？

　ダンジョン配信合ってなかったらやめるつもりだったけど、もう引き返せないところにいないか、俺。

　いや、まだ間に合う。間に合うはずだ。

　念のため今の内から彼女に宣言しておこう。

「ブレンダさん――「まっくん、残念ながらおしゃべりはいったんおしまいだね」

　ブレンダさんの顔つきが変わる。

　ニコニコと笑っていた口はしっかりと閉じられ、目つきは鋭く先を見据えている。

　初めて見た時の綺麗という印象から凛々しく格好いいものへと変わっていた。

　俺は彼女の視線の先を見る。

　そこには見たこともない生物がたたずんでいた。

　まさかあれが――

「モンスターだね。まっくん、初めてのバトルいってみよう！」