第8話 ザグロブのミス
国王達が行動を起こしてからしばらく経ち、夕方になる頃…
ザグロブは妙な機械のベッド型の装置に横たわり、修理を受け続けていた。
その装置はアーム部分が自動的に修復を続けており、人の手はそこにはなく全く無駄はない。
するとそこへ、作業場の入口からアイシャが顔を出した。
「どう?修復の方は」
「おう流石はスケルトンベッドだ。そこら辺の闇技士屋にやらせるよりに早いわ」
彼女の質問にザグロブは修復を受けつつ、軽口で返すとアイシャはほっと一息付くと改めてその光景をじっと見つめ、改めてそのスケルトンベッドの性能に度肝を抜かれた。
なお、スケルトンベッドというのはかつて戦争中にサイボーグ兵を効率的に作製する為に開発された自動装置である。
これにより信じられないスピードで機械仕掛けの兵士達を作り上げたのだが、この装置の真価が発揮されたのは戦争後…裏社会に流れたこの機械は犯罪者達は続々とその体を機械に変えて行った。
この装置のせいでこの世は、役目を終えた
「…どうした?」
「あっ、いや…何でもないわ」
そんな装置を実際に目の当たりにしたアイシャの表情は凄い物を見たと言うか、何と言うか複雑な物になっている内に機械が動きを止め、ザグロブを囲っていたアームはベッドの下へと潜り込む。
どうやら修復が終わったようだ。
「うしっ、中々いい仕上がりだ」
電撃や打撃等、破損の激しい彼のポリマーの装甲はここに山積みにされていた廃材によって補強され、スラッとしていたその黒いボディは頑強さを手に入れる事に成功したのである。
尚、破壊された内蔵武装は取り外されて別の武器を手に入れたがその辺りは後々の戦いで披露するだろう。
それにしても、何故アダルベルトはここまで物資を隠し、地下に溶鉱炉と作業室を作り上げたのだろうか?とザグロブは考えた。
「それにしても、頭の破片が突き刺さったからってここまでやるかね…恐らく俺を倒した後も更に装甲を盛るつもりだったんだろうが、過剰な改造をすれば体が持たないのは本人も知ってたはずだろうに」
「それほどまでに死の恐怖には勝てなかったって事じゃない?彼、しきりに言ってたわ…戦争の時、死にたくないって気持ちしかなかったって」
「そんな奴がよく装備の密売なんかやる気になったな…」
まぁ、アダルベルト本人もまさかザグロブに倒されるとは思っていなかっただろう。
さてここからが本題だ、これからどうするのかを今再び話し合う事になる。
タワー襲撃で使用した弾薬や資材は補給できた、これからそのまま国王を襲撃してもいいだろうとザグロブは考えた。
「さて、これから何だが…」
と彼が作戦の提案をしようとすると、それはすぐに遮られた。
それは、ゲリラの一人が慌ただしく地下へとやって来た
「た、大変だ!無線傍受したら、治安部隊の奴ら街の連中を雇ってここに迫ってるらしい!」
「なんですって!?動きを察知されないように警戒はしてたはずよ!」
何とこのコンビナートに、治安部隊と街の殺し屋がやって来るという。
まず何故この場所がバレたのかと一同が不安になる中、ザグロブはもしやと思いもう一度スケルトンベッドに倒れ込み、脇のコンソールを操作する。
「クソッ、俺とした事が…!!」
そしてベッドの下に収納されていたアームが一本伸び、首にレーザーによる切開が始まった。
「ちょっと、どうしたのよ!」
「見てりゃ分かる!」
切開が終わり、アームのマニピュレータが変形して何やら吸い出し機のようなホースが伸びて首筋へと入って行って中の人工血液を軽く吸い出すとその中に驚くべきものが混入していると、ベッドに内蔵されたモニターに映し出された。
「はぁ〜っ、マイクロサイズの発信機か…取り調べの前の検査の時に仕込まれたのか。俺とした事が…」
ザグロブはモニターを見て深くため息を付くと、自身の計画が行き当たりばったりすぎたと深く反省した。
実を言うと、彼はこの街の規模を見てそこまで細かい作戦を立てずとも直接本拠地に乗り込めばいいと思っていたのだ。
しかしこの街の成らず者達が自分と同じ実力者がゴロゴロしてるとは思っていなかった為、彼は手痛い反撃を受ける事となったのである。
「…チッ、また借りを作るのはゴメンだ。俺が時間を稼ぐからお前らはコンビナートから脱出しろ」
「相手は殺し屋と治安部隊の大軍よ!いくらなんでも…」
「金で雇われた殺し屋なんぞたかが知れてるぜ…」
そう言って彼は地下の扉を開けて、再び地上へと這い上がって行った…
───────────────────────
一方その頃、コンビナートに向かってニ台の大型トラックと治安部隊の装甲車が走っていた。
荷台にはどう見ても堅気の人間ではない、如何にもな連中がニタニタと笑いながらトラックに揺られ、何やら話し込んでいる。
「ちょろい仕事だぜ、あそこにいる連中をぶっ殺せば遊んで暮らせる金が貰えるんだからよ」
「だが相手はあのザグロブ。それにゲリラのリーダーは殺すなってお達しだぜ?」
「ばーか、面倒だから事故って殺しちまったとか言えば良いんだよ」
と言った具合に、皆低俗な会話を繰り返す中…もう一台のトラックだけは雰囲気が違っていた。
共通していたのは、その一台に乗り合わせた人間達は皆機械仕掛けの首輪をしているという事、そして全員覚悟を決めた目をしているという事だけ。
いよいよ、苛烈な戦いが始まろうとしていたのであった…
狂い咲きバレットタウン スティーブンオオツカ @blue997
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