第18話 ユニットと道

「ユニットとか、憧れるよね!!」

「何すか、これ…」

 レンチンされたオムライス。健康に良いと噂のケチャップを盛大にかけていた。と、つまようじとマスキングテープで作られた旗を刺されたのである。

「あおみどり…?」

 首を傾げる。

「これね、逸歌いつかが書いたんだよ。昨日、家族の分はケチャップで名前書いてくれたんだけど」

「私はもう大学生なので、名前は書きませんよ」

 咳払いする京終きょうばて先生。ダイニングテーブルの向こう側に座っている。

「会社名だよ」

 人差し指を立てる。

「はあ…」オムライスを一口。「熱い…」

「ふうふうしな?」

 こくん。

「せっかくだから、逸歌に会社名書かせて未来永劫使ってやろうと思う」

「ただの嫌がらせじゃないですか」

 ただでさえ三十以上年上の兄って何だよとなるところなのに。

「ええ、『あおみどり』可愛くない? 僕とえっちゃんの目の色だよ」

「ああ…」

 確か石矢いしやさん家のラブラブ兄弟の名前も…。まあ、いいか。目を逸らす。

「尽きましては、将来、『ユニットあおみどり展』を開催したいと思います!」

「じゃあ、あおが九、みどりが一で」

「それは、さすがにサボリすぎでは…?」

 オムライスをむ。

「と言うか、建築家ユニットって何なんでしょうね」

 遠い目をしている。

「きっと組むと良いことがあるに違いないよ」

「地元にも、世界的に有名な建築家ユニットの作品があります。建築物のコンセプトは、市民的にも解りやすく土地に馴染むものでした。しかし、ユニットの意義が解らない。ましてや、私たちはこれから何をどう作り上げれば良いのか!」

 恐らく師匠は何も考えていない。

「えっと…。あおみどりなのだから、何かこう青から緑へのグラデーション縛りで良いのでは」

「まあ、妥当ですね」

 あっ、オムライスがもう無い。しゅんとする。

「また作るからさ、元気出しなよ」

「テレビで見たコンビニで買える三品のたきこみご飯が良いです」

「解る。あれ、おいしそうだけど、毎回忘れる」

 二人で、お茶を飲む。

「まあ、でも、日本最高峰のあおみどり作品はあれですよ。東山魁夷の道」

「種差海岸だしね!」

「あれは、福島まで歩いていけるのですよ。哲学の道なんか、散歩に適さないよと言う外国人も納得の長さ!」

 しかし、決して北から南まで歩こうとは思わないが。

「ヨーロッパの人、休みは歩くからね。英国には、私有地であってもそこに道があったら自由に歩ける権利があるくらい」

「鉄道会社の陰謀ですよ。関西では、少女歌劇団でしたけど」




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あおみどり 神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ) @kamiwosakamariho

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