だから何？

やかんのくちぐせ。

しゅーるひゅーると声をだし

私を呼ぶアルミのやかん

朝一番、懐中電灯で照らしたガス台で

尻に青い火玉をゆらめかし

しゅーるひゅるるぃと歌いだす

傍らでその時を待っていると

やかんはしてやったりと調子に乗って

しんしんしんちんちんちん

しっしっしっしっしっししし

こちらの気をひくようにおどけると

しゅわーっ

得意の雄叫びを披露する

いつもどおりの心得えで

私は決断の瞬間をはぐらかす

やかんはさらに踏ん張って

しゅーるしゅーるしゅーしゅーふぁーふぁーっ

まさに蓋をもちあげんとするクライマックス間際

事もなげに私はガス台のレバーをひねる

しゅー。

青玉を失って黙り込んだやかん

不本意そうな熱い把手と重いカラダ

傾げると

しゅるりしゅるわーと

口から毒を吐く

その小さな抵抗に

私はカップに注ぐのをひとときやめた