リセマラーの俺が転生したのはスマホのソシャゲ世界でした〜固有スキル【ラストアルカディア】と【リセット】で生き延びようと思います〜
第9話 敵が弱いとヒーラーは暇しがちだが、いないと困るから結局外せない
第9話 敵が弱いとヒーラーは暇しがちだが、いないと困るから結局外せない
「急に黙り込んですまないな、少し自分の頭の中で整理していたんだ」
覚悟を決めた俺がそう言うと4人は一様に表情を曇らせた。
「……リヒト様大丈夫ですか? 」
アリーシャが心配そうに俺を見る。
なぜかはわからないが、どうやら俺が思っている以上に心配をかけてしまっている様だ。
「あぁ…大丈夫だ。心配してくれてありがとう…まずは俺のスキル…力から説明しよう。全く知らない2人がいるんで1から説明するぞ」
俺がそう言うと4人が頷いた。
「俺の力は2つある。1つはさっき時間を巻き戻した【リセット】…で、もう1つが──」
俺は今ならもしかしたらゲーム画面が開けたりしないかと思い頭の中で念じてみた。
だが──
〈今開くことはできません〉
あー…だめか…
ゲーム画面を出せるなら、出して見せながら説明しようと思っていた。
だが、やはりというか画面は出なかった。
「本当は実際に【ラストアルカディア】の画面を出して見せながら説明したかったんだが…目覚めたばかりで不安定なのかまだ出来ない様だ…」
「らすとあるかでぃあ? 」
「直訳すると最後の理想郷という意味ですね」
ソーマがティナリーにそう言って教えたのを見てそういえばそれについては話してなかったなと思い至る。
「ラストアルカディアは俺のスキル…力の名前だ…さっき神様から聞いたんだ」
「そうなんだ! 理想郷…ティナリーその名前いいと思う! 」
「……そうか」
俺は『ソシャゲのタイトルとしては可もなく不可もなくだな』とかそんな事しか思った事がなかった…
なんだか自分の心の汚れを実感する…
「ありがとうなティナリー」
俺はティナリーにそう返しながらどう説明したものかと考える。
……とりあえずルシルとティナリーにも説明した事をアリーシャとソーマにも説明して後は実戦で…
いや、それなら先にチュートリアル終わらせた方がいいな。
チュートリアル終わらせたら、たぶん好きに画面出せる様になるだろうし。
よし!
「見せながら説明出来ないから口頭だけになるが…簡単に言うと、1人につき強化技2種類と、チャージすると使える必殺技があって、俺が強化する事でみんなはその技を使えるようになる」
「強化技と必殺技ですか? 」
アリーシャがそう言って尋ねてきた。
「あぁ…そしてその発動するタイミングだが、今の所、全て俺が指示しないといけない。だが、俺の予想が正しければ近い内に自分のタイミングで発動出来るようになるはずだ」
ゲームで言う『オート戦闘モード』の事だな。
ゲーム時代のあれを現実に照らし合わせて考えるとゲーム当時以上に有用なものになる可能性が高い。
「リヒト様、あれを自分タイミングで発動出来るようになるのですか!? 」
ルシルが思わず、と言った様子で尋ねてきた。
「おそらくな…だがたぶん技自体の発動は俺が近くにいないと使えないとは思う…その点はどうしょうもないだろう、すまない…」
スキルも
「……? はい、指導者様がいないと使えないのは当然なのでは? リヒト様のお力を我々サクリファイスが借り受けて行使させて頂いているだけなのですから」
え。
「……そういうもんか? 」
「私はそう思ってましたが…違うのですか? 」
曇りのない目でまっすぐに見つめられてそう言われると、途端に自分がおかしな事を言っている様な気持ちになる。
「うーん…俺も自分の力の全てを把握してるわけじゃないから、改めて問われると…わからなくなってきた…」
まあ…今考えてもしょうがない事なのかもしれない。
「そんな事よりも早く続き話してよ! お兄ちゃん! 」
ティナリーがせっかく強くなった自分のアイちゃんが弱くなっている理由を早く知りたくて急かした。
「あぁ、俺が話を脱線させてたな…すまない。この塔を出たらまず間違いなくあの大型セキュリティロボットに襲われるだろうからさっき何が起こったのか含めて戦闘時の動きについて確認しておこう」
そう言って4人を見ると全員同意している様子なので俺はそのまま言葉を続けた。
「と言ってもまあ、今の俺達ならば楽勝な相手だと思うから大した作戦はないがな。俺の指示で動く練習だとでも思って気楽にいこう」
「はい! 」
「わかりました! 」
「練習…はい! 」
ルシル、アリーシャ、ソーマがそれぞれそう言った後ティナリーが唇を尖らせて拗ねた様な顔をした。
「それならティナリーはあんまり関係なさそう〜…ティナリーはさっきちゃんとできたもん! 」
「そうでもないぞ、ここでさっきティナリーが言っていた『アイちゃんが弱くなっている』という事が関係してくるからな…さっきとは感覚も違うと思うぞ? 」
「っ! やっとティナリーの話! 」
「あぁ、待たせてすまないな…」
「いいよ! 」
ティナリーは笑ってそう言うとアイちゃんの肩の上にのった。
「結論から言うと、敵を弱くした代わりに味方も弱くなった…正確に言うと、弱くなったんじゃなくて神様の力で強くなってたものが初期化されたんだがな」
「初期化…ですか? 」
「あぁ、ティナリーだけじゃなくて実はアリーシャとソーマもこっそり初期化されてる…」
「え!?
アリーシャのその声でソーマの方を見てみると、ソーマはびっくりしたように自分の両手を見ていた。
「自分の事なのに気づいてなかった事を2人は驚いている様だが、無理ないと思うぞ」
「そうですね…私も自身の強化を知ったのはリヒト様と共にアイちゃんを見た時ですから…」
俺の言葉にルシルが続けてそういった。
ルシルの言う『アイちゃんを見た時』というのはルシルが戦闘態勢を取ったことで発生した装備変更のチュートリアルだろう。
「それは戦闘態勢をとる事が最初のトリガーとなるらしいからだろうな」
「なるほど…それで…」
俺がそう言ってルシル達に説明しているとアイちゃんが俺の近くに近寄ってきて、その上のティナリーが俺の服の裾を引っ張ってきた。
「リヒトお兄ちゃん、ティナリーよくわからない…どういう事〜? 」
「どこが分からない? 」
「初期化って所…」
「あぁ、それはな…さっきのティナリー達は神様の力でこれから俺と頑張って訓練していったら手に入るだろう『未来の自分の力』を使えてた。だけど、敵を弱くする代わりにそれは無くなった…とそんな感じだ」
上手く伝わってるかどうか…ゲームを知らない人に説明するのが難しいな。
「だから、これから俺と訓練して強くなっていけばさっきと同じくらい…いや、さっきよりもずっと強くなれる」
装備とかスキル強化とか強化するべき所は山ほどあるからな。
「ティナリーさっきよりもっと強くなれる…? 」
「あぁ! なれる! これは絶対だ!! 」
だってここはあのソシャゲ…ラストアルカディアの世界なんだから。
スキル一発で隕石降らせてたキャラもいたから強さに関しては絶対に大丈夫だ。
「じゃあティナリー訓練嫌いだけど頑張る! 」
「おう! 一緒に頑張ろうな! ルシルとアリーシャとソーマもみんな一緒に! 」
「はい…」
「はい! 」
「はい…! 」
こうして作戦は進み、戦闘開始後の段取り説明などを全て終えた俺はみんなと共に[終わりの塔]の外へと繋がる扉の前にいた。
「4人とも、作戦は覚えてるな? 」
「問題ありません! 」
「うん! 」
「大丈夫です! 」
「はい! 」
ボスを倒してルシルも助ける。
「おし! サクッと倒して終いにしようか」
俺がそう言って扉を開けた瞬間、ボスが上から降って…いや、落っこちてきた。
そして落っこちてきたボス…セキュリティロボットtypeZが俺達を認識した瞬間──
〈ボスとの戦いに勝利しよう! 〉
脳内にもはやお決まりとなった音声が響いた。
さっきは絶望感しかなかったその声は今は軽快なものに感じる。
行動順は早い方からルシル、ソーマ、ティナリー、セキュリティロボットtypeZ、アリーシャの順だ。
「ルシル、話してた通り使ってなかった方の技を使うぞ! 」
「はいリヒト様! いつでも大丈夫です! 」
ルシルのその声を聞いて俺はルシルのスキル2【リベンジスタンス】のアイコンを押した。
すると、ルシルの体が淡く光り始めた。
「『守るために、打ち倒す!! 』かかってきなさい! 」
ルシルがそう叫ぶとゲーム画面のルシルのHPバーの上に[注目]2ターンがついた。
「よし! 次はソーマだ」
「は、はい! 」
ついさっき殺されかけた相手に立ち向かうのはとても怖いだろう。
俺は震えているソーマを見て数分前にソーマに作戦を伝えた時の事を思い出す。
『50%のHP回復…ですか? 』
『あぁ、50%と言われてもピンと来ないだろうがそういうものだと思っていてくれたらそれでいい』
『わかりました…』
『それと、ソーマ強みはスキルよりもFVスキルで味方1人の状態異常回復を出来る点にある』
『状態異常の回復? 』
『あぁ…状態異常を解除できる人は貴重だから、ソーマはなるべく敵の攻撃を受けない様な立ち回りに気をつけて動いてみてくれ』
『わかりました! 』
「ソーマ! さっき話した回復技を発動させる! ルシルの回復をしてみてくれ」
「はい…! 」
俺はソーマのスキル1【投薬治療】を発動させた。
「は!? 薬ビンが光ってる!!? 神様、これどうすればっ…! 」
「そのまま投げろ! 」
ソーマの回復は投薬(物理)だ。
「投げる!? 薬ビンを!? 」
「そうだ! 」
「逆に怪我しますよ!? 」
それには俺も同意するが怪我はしない。
「大丈夫だ、俺の力で薬ビンはルシルに当たる直前で消える! 」
「えぇ…そんなバカな…」
ソーマは半信半疑そうにしつつも光っている薬ビンを投げた。
「本当に消えた!? 」
ソーマの投げた薬ビンがルシルの頭上斜め上で突然光となって弾け、黄緑色の光となってルシルに降り注いだ。
ゲーム画面を確認するとルシルのHPが1回復したのが見える。
「……1? いつの間にダメージを…」
あ!
昇降機前の戦闘でか!?
って事は…え?
ルシル…平均レベル90前後の敵の攻撃受けて1しか食らってないのか!?
という事はまさか…レベルって90が最大かと思ってたんだが…違うのか…?
同レベル帯からの攻撃ならさすがにもう少しダメージ受けてるよな?
そういやルシルのさっきの戦闘は今考え直すとレベル90前後あったはずのセキュリティロボットにカンストダメージ叩き出してたって事になるんだっけ…
俺がゲーム引退した後にアプデ来てレベル上限上がってたりしたら…ルシルが実はレベル90どころじゃない…とか、そんな事も…ありうるな。うん。
「リヒトお兄ちゃん! 次ティナリーの番!! 」
「すまん! でも忘れてないぞ」
「ほんとに〜? それならいいけど〜」
「よし、じゃあティナリーは敵一体しかいないからパンチの方な」
「わかった! 」
俺はティナリーのスキル2【アイちゃんののろいパンチ!】を発動させた。
「『アイちゃん、やっちゃって! 』」
ティナリーがアイちゃんの首にぶら下がってアイちゃんがセキュリティロボットtypeZを殴りつけた。
レベルが下がっているので威力はボスのHPゲージが1割減っただけだが、ボスのHPバーの上に[物理攻撃力ダウン 中]2ターンがついた。
「ティナリーよくやった! 威力が落ちてるのは俺が神様とそう言う交渉したからだから気にするなよ! 」
「うん! 」
「ルシル! 敵の攻撃が行く! 右から左への斬撃だ! 」
セキュリティロボットtypeZの振り上げているアームを見てゲームだった頃との既視感を覚えた俺はルシルにそう声をかけた。
「はい! 」
ルシルが敵を見たままそう返事をした瞬間、セキュリティロボットtypeZが攻撃をしかけてきたが俺の言葉を聞いたルシルは危なげなくその攻撃を避けた。
ルシルが避けた瞬間にゲーム画面をチラ見すると『Miss…』と出ていて攻撃は当たらなかった判定になっていた。
さすがだな…
「攻撃は当たらなかった様だが大丈夫か? 」
「リヒト様が敵の動きを教えてくれたので余裕を持って回避できました! このくらい余裕です! 」
「そうか、それならよかった…」
おし、ここまでは順調!
次はアリーシャだ。
リセマラーの俺が転生したのはスマホのソシャゲ世界でした〜固有スキル【ラストアルカディア】と【リセット】で生き延びようと思います〜 秋桜 @kosumosu_
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