3話 ウルフィラVSキャティス
肝心の俺は、恐怖で体が動かない。
エリカ「周囲の人たちも倒壊現象に動揺しているようです。賢一は大丈夫ですか?」
賢一「助かる気がしない……」
エリカ「気をしっかり持ってください。私がサポートします」
『ドゥドゥンッドゥドゥンッ、ドゥドゥンッドゥドゥンッ』
『デューン!!』
猫のような巨大生物「む゛ぁぁぁぉ!」
突然、視界の横から別の巨大生物が走ってきて、猫のような巨大生物の横腹に体当たりをした。
猫のような巨大生物は突き飛ばされ、住宅を破壊しながら転倒する。
賢一「また新しい巨大生物が来た……」
エリカ「私には確認できません」
賢一「犬みたいな巨大な生き物が」
というよりも、もっと野性的な動物に見えた。
賢一「狼みたいな巨大生物が、猫の巨大生物に体当たりした!!」
猫のような巨大生物「む゛ぁぁぁおん!」
倒れていた猫のような巨大生物が立ち上がり、狼のような巨大生物に向かって唸る。
一方、狼のような巨大生物は空を見上げるかのように吠えていく。
狼のような巨大生物「う゛ぁぉぉぉぉん!」
猫のような巨大生物と狼のような巨大生物がお互いにらみ合いながら鳴いていた。
仲がいい関係性ではないのは確かだ。
猫のような巨大生物「む゛ぁぁぁあおん!」
狼のような巨大生物「う゛あぁぉぉぉぉん!」
猫のような巨大生物「む゛ぁぁぁあおん゛!」
狼のような巨大生物「う゛あぁぉぉぉお゛ん!」
鳴いたら一歩、吠えたら一歩にじり寄っていく。
猫のような巨大生物「くぁあぁてぃゃぁぁっしゅ」
狼のような巨大生物「うぅんふぃぃぅぁぁぁ」
先ほどまで威圧感のある鳴き声だったけど、一回だけ違和感を感じる声が聞こえた。
俺には、猫のような巨大生物が、【キャティス】、狼のような生物が、【ウルフィラ】、と鳴いたように聞こえる。
ウルフィラ「う゛あぁぉぉ――」
『ドゥバチッ!』
ウルフィラが鳴いている最中なのに、キャティスは前足で相手の顔を上から殴打した。
高速の打撃を食らったウルフィラは、転倒させられる。
エリカ「振動を検知しました」
賢一「キャティスがウルフィラが叫んでる最中に、攻撃を仕掛けたんだよ!」
エリカ「キャティスとウルフィラとは何でしょうか?」
賢一「えっと、猫のような巨大生物がキャティス、狼のような巨大生物がウルフィラって鳴いた気がしたから、分かりやすく名付けちゃった」
エリカ「わかりました。それでキャティスとウルフィラは今どちらにいるのでしょうか?」
賢一「まだ見えないの? あそこで争ってる」
キャティスは倒れているウルフィラに近づいていき、追い打ちの猫パンチをお見舞いした。
『バチンッ』
ウルフィラ「キ゛ュイッ」
さらにもう一度、
『バチンッ』
ウルフィラ「ギ゛ュゥン」
もう一度追撃しようとキャティスが前足を伸ばす。
するとウルフィラは口を大きく開けて、キャティスの前足を噛みつこうとした。
『ガチンッ』
キャティスは瞬時に前足を引っ込めて、後方に飛び乗って住宅を踏みつぶしていく。
宙に噛みつき終えたウルフィラはすぐにその場に立ち上がり、キャティスを睨みつけていた。
そしてウルフィラはゆっくりと口を開いていく。
口の中にはキャティスと同様の青白い明りが輝いていた。
一方キャティスも同じように口を開いていき、口内の黄色い輝きを見せていく。
ウルフィラの輝きが光線となり、キャティスにまっすぐ飛んで行った。
『ファラファラファラファラファラファラ』
キャティスの口内の輝きも光線に変化し、ウルフィラに伸びていく。
『ヂュラヂュラヂュラヂュラヂュラヂュラ』
現実とは思えない光景が目の前に広がっていて、ただ
ウルフィラとキャティスの間の中間地点でお互いの光線がぶつかり合い、強い明りを放っている。
ウルフィラとキャティスは互いに相手に近づこうと、一歩、また一歩、足を進めて距離を縮めていく。
しばらくすると、中央でぶつかっていた光線が突如爆発を起こし、周囲に爆音を
大きな爆風がこちらにも届いてきて、周囲の人の髪が揺さぶられている様子が目に入ってくる。
ウルフィラを見ると、また口元に青白い輝きをためていた。
そしてしばらくしたあと、開いた口の中からキャティスに向かって勢いよく光線が伸びていく。
そのままキャティスに命中するかと思ったけど、キャティスは勢いよく大地を蹴り、大きく跳びあがった。
青白い光線はそのまま直進し、遠方の建造物を破壊していく。
空を見上げると少し体が小さくなったキャティスが宙を浮かんでいた。
そしてそのまま落下していき、ウルフィラに近づいていく。
キャティスは前足を伸ばしていき、ウルフィラの頭を強打する。
ウルフィラは強く地面にたたきつけられ、轟音を響かせた。
ウルフィラ「き゛ゅうぃんっ!」
勢いのある攻撃を受けたウルフィラが死んでしまったのではないかと眺めていると、すぐに立ち上がる。
というよりかは、立ち上がったと同時にウルフィラも地面を蹴って跳びあがった。
そのまま両後足を伸ばしたまま体全体を弧を描きながら後転させていく。
両後足をキャティスの顎の下から蹴り上げていき、殴打していった。
キャティス「む゛ぁぁう!」
キャティスは勢いよく宙に打ち上げられている。
華麗に軽やかに着地し終えたウルフィラはすかさずキャティスに向かって走っていく。
そして口を大きく開け、腹部を天に向けながら落下しているキャティスの首根っこに噛みついた。
『グァリュジュッ』
キャティス「む゛ぁぁぁぁあ!」
そのまま噛みついたまま反時計回りに体を回転させていく。
もう一回転。
さらにもう一回転。
自分の体と一緒にキャティスをぶんぶんと振り回していく。
そして三回転したあと、咥えていたキャティスを頭上まっすぐに放り投げていった。
ウルフィラはそのまま口元を青白く輝かせていき、宙のキャティスに顔を固定させている。
キャティスは黄色い輝きを見せながら宙をくるくると回転していた。
それからウルフィラの口から光線が放たれると、頭上高く伸びていく。
『ファラファラファラファラファラ』
一方キャティスも体勢を整えたら、顔から落下しながら眼下のウルフィラに対して光線を放出していた。
『ヂュラヂュラヂュラヂュラヂュラ』
二つの光線が宙で交わり、そのまま互いの距離がどんどん縮まっていく。
そしてそのままキャティスが落下し続けていき、ウルフィラの顔面と衝突していった。
『ゴヅァン』
キャティスは地面に転がり落ちていき、仰向けに倒れる。
ウルフィラは大きく怯んでるようだったけど、すぐに倒れたキャティスに飛び掛かっていく。
それから相手の体にまたがっていき、キャティスが動けないように押さえているようだった。
キャティスは押しのけようとしていたけど、敵わない。
すると再び口元が黄色く輝き始める。
光線攻撃だ。
しかしウルフィラもそれに気づいたのか、右前足でキャティスの右頬を強く押さえつけて、横に向けさせた。
ウルフィラの口元にも青白い輝きがある。
『ヂュラヂュラヂュラヂュラヂュラヂュラ』
そしてキャティスは光線を放つけど、ウルフィラに当てることはできなかった。
流れ弾の光線は近くの住宅を破壊しながら突き進んでいく。
一方ウルフィラも光線を発射し、キャティスの横顔に放射し始めた。
『ファラファラファラファラファラファラ』
キャティス「む゛ぁぁぁぁぁぁあ!!」
キャティスは顔を右に向けようとし、放ち続けている光線の角度を徐々に斜めにしていく。
しかしウルフィラも必死に抵抗し、光線を受けないようにキャティスの顔を強く押さえなおした。
しばらくすると、天を突き進んでいたキャティスの光線が途切れる。
それと同時に、キャティスもぐったりとした様子を見せていた。
ウルフィラはその様子を確認すると、もう一度、天を仰ぐように顔を上げ、遠吠えをした。
ウルフィラ「う゛ぁぁおぉぅううんっ!!」
綺麗で、威圧的で、神秘的な声が街に響き渡っていく。
賢一「ウルフィラが、キャティスを倒した……?」
エリカ「街の崩壊が収まったようです」
ウルフィラたちの争いを見届けていると、ウルフィラがゆっくりと動かないキャティスを咥えた。
そして、俺たちとは違う方角に向かって離れていく。
周囲に巨大生物の姿が消えた。
訪れたのは静寂な空間と荒れ果てた街の景色。
賢一「ウルフィラが、キャティスから守ってくれた?」
詳しい事情は分からない。
だけど俺が生き延びていることは間違いない。
賢一「一体なにが起こってたんだ?」
エリカ「わかりません。可能性としてはとても大きな地震だと推測できます」
街の建造物は破壊されていて、とても見晴らしが良くなっている。
そのおかげで陽光が遮断されることなく各地に降り注がれていた。
周囲の避難者たちも動揺していて、いろいろな表情を見せている。
しかし俺と同じように、生きていることに喜びを感じ、安堵しているのは感じられた。
ウルフィラ VS キャティス Wolfira VS Catice !~よたみてい書 @kaitemitayo
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