パンフレット

桐原まどか

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とある民間の結婚紹介所がある。その名も<星を跨ぎませんか?>だ。

そもそもはとある星の国の機関だったものが、民営化され、大きくなったのだ。彼らの強みはなんと言っても、そのコンピュータだろう。蓄積した膨大なデータから瞬時に見合う相手を弾き出す。成婚率、脅威の25パーセント越え、結婚率も15パーセントだ(離婚率に関しては公表されていない為、謎である)。さて、そんな彼らの元に舞い込んだ依頼は、なんと<レプタイル>という星の、王族の8人きょうだいの末娘の相手探しだ。

レプタイルは爬虫族と呼ばれている。近いのは地球の人間か。彼らは硬質な鱗に覆われた身体と、あの独特の瞳を持っているが、知性は高く、気性は穏やかで、密かな人気のある星である。王族の末娘・マーシャが「私、<地球>の殿方に興味があるの。マッチングだけでもダメかしら?」と言った為、今回の依頼になった。コンピュータが弾き出した相手は、果たして、とあるごく普通のサラリーマンだった。地球時間では26歳。彼は婚姻はおろか、女性との付き合いもないそうだ…それは彼の外見が、いわゆる…<イケテナイ>からである…。身も蓋もない言い方だが、彼のルックスは良くもなければ、悪くもない。体型も中肉中背。頭も運動も良くも悪くもない。結婚紹介所に登録しているくらいなので、伴侶を得たい気持ちはあるようだ。

早速<星を跨ぎませんか?>から、彼のスマホにメールが送られた。

果たして、彼の反応は「是非ともお会いしたいです。宜しくお願いします」というものだった。

※※※※

さて、マーシャと地球のサラリーマン・中間優一なかまゆういちは見事、結婚に至った。

二人の間に起きた、例えば種族間によるすれ違いや、ケンカ、仲直り、などなどをつまびらかに紹介してもいいのだが、冗長な文など、読みたくないだろう。

結論としては、中間が<レプタイル>に婿入りし、平和に暮らしている。子宝にも恵まれた。

今後<異星間結婚>を考える人の為に、と受けたアンケートに彼はこう答えた。「正直、最初はギョッとしました。でも妻は優しくて朗らかで上品で(中略)…とかく僕にはもったいない女性ですよ」と。

彼らの結婚は周囲から祝福された美しいものだったのだ。

※※※※

宇宙広しいえども、<異星間結婚紹介所>は珍しい。そこのあなた、あなたの運命の相手、もしかしたら、別の星の方かもしれませんよ?我々<星を跨ぎませんか?>はいつでもあなたの登録をお待ちしています。

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