60話 その後の話

 校外学習から、一週間が過ぎた。


 あの後は、事後処理が大変だったらしい。


 初心者用の狩場なのに、大量の魔物が現れたので調査を実施した。


 ただ、原因はわかってない。


 なので引き続き、調査はするらしい。


 俺達も事情聴取を受けて……ようやく休みに入る。





 休日という事で、三人でだらだらとお茶をすることにした。


 アルトは予定があり、レオンには『行くわけがなかろう』と断られた……解せぬ。


「あぁー、疲れた」


「ええ、流石に疲れたわ……お父様達には叱られるし」


「わたしも怒られちゃいました。ただ、それは心配しただけで行動自体は立派だったと」


「私も似たような感じよ」


 どうやら、二人は結構大変だったみたいだ。

 まあ、男女差別するつもりはないけど、やっぱり女の子だし心配だよね。

 俺? ……特に誰からも心配されてないけど何か?


「良いじゃん、愛されてるって事で。俺なんか、手紙の一つもきやしない」


「そもそも、まだ届いてないわよ」


「あっ、それもそっか。ただ、届いたとしても……心配してくれるのは弟と妹くらいかな」


「それにしても、結局なんだったのかしら? 本当に、転移魔法だったの?」


 ……やっぱり、そこが気になるよなぁ。

 なにせ、転移魔法なんて伝説の魔法だ。

 あれがそうなのかも、正確にはわかっていない。


「さあ、それはこれからかな。ただ、最近の魔物が街道沿いにいたのは……それが原因なんじゃないかと思った」


「あっ、私達が行きに出会った魔物?」


「そうそう。あれだって、あの辺にいるのはおかしいんだってさ。そもそも、ただの兵士達って魔物と戦う機会もないし」


「そうなのよね。魔物と戦う人って、冒険者か最前線にいる兵士達くらいなのよね」


 兵士の本来の仕事は戦うことではなく、警護するのが仕事だ。

 それに相手は主に対人となるので、魔物とは戦うことはほとんどない。

 冒険者達が、しっかりと間引きしていることもあるし。


「フールさんに聞いたら、別に冒険者達がサボってるわけではないって言ってたし」


「つまりは、ああいう風に送り込まれた魔物が他にもいるってこと?」


「まあ、可能性の話だけど……まあ、後のことはお偉いさんに任せるよ。政治的な要因も孕んでるかもしれないし、迂闊に口は出せないし」


「わ、わたしは頭がこんがらがってきました」


 その言葉に、俺とセリスが顔を見合わせて微笑む。

 ちょっと、セリスには早かったかも。


「んじゃ、つまんない話はこの辺にして……いよいよ、部活が始まるみたいね」


「私は予定通り、生徒会に入ることにしたわ」


「わたしも、予定通りに弓道部に入ります」


「生徒会は他国に行ったりすることもあるらしいね?」


 いわゆる、交換留学とかもあるとか。

 後は他国の生徒と対抗戦とか、視察を兼ねた交流会とか。


「ふふ、実は結構楽しみだったりするの」


「いいですよね。今回のことは怖かったですけど、やっぱり外の世界は見てみたいですし」


「だよなぁ……俺も大陸を旅とかしたいし」


「そういえば、結局部活はどうするの? なんなら、生徒会に入っても……」


「それも少し考えたけど、女性しかいないから辞めとくよ」


 さっきの生徒会の仕事も魅力的だから迷ったけど、聞いたら五人とも女性しかいなかった。

 ただでさえ、ハーレム野郎とか噂されてるのに……ぐすん、何も悪いことしてないのに。

 ますます、男友達ができなくなってしまう。


「それじゃ、どうするの?」


「ふふふ……実は冒険者になることにしました! わぁーパチパチ」


「ど、どういうこと?」


「確か、学期末テストで良い成績を取らないとダメとか……」


「そう、本来ならね。ただ、今回の試験を見てたフールさんが……お前が生徒とかおかしいって言っちゃって。それが、キルドマスターに話が行ったらしい」


「「あぁー」」


 二人が同時に納得という表情を浮かべた。


「それなら納得だわ。あの強さはおかしいもの」


「確かに、無双してましたから……わたしも頑張らないとっ」


「そうね、私達も負けてられないわ。絶対に試験に受かって、冒険者登録するわよ」


「はいっ、また変なのに巻き込まれる前に」


「……あの、トラブルメーカーみたいに言わないでくれます?」


「自覚しなさい」


「自覚してください」


 ……おかしいなぁ、俺は普通に過ごしてるだけなのに。


 どうにも腑に落ちず、俺は椅子に寄りかかり空を眺める。


 そこには、雲ひとつない空が広がっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに次々と女性が寄ってくる~ おとら @MINOKUN

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ