3.勇者一行
「あなた方が巷で騒がれてる勇者一行なの?!」
ベヌが驚愕の表情で言葉を発する。その声に接客をする店員や遅めの昼食を摂ってたり、昼飯を済ませて腹が落ち着かせるためパーティーメンバーとテーブルで駄弁っていたり、クエストボードでどのクエストを受けるか言い争いをしている冒険者らベヌの声を聞いたギルド中の人はベヌとともに俺らに目線を向ける。俺がまただよと予想はできたはずだがいざ出くわし面倒くさいそうに思っていると、ユシーが話し始め少し照れながら。
「またまた、ライアでもそんなこと言われたけどさ私達が勇者なわけ無いですって。そう思いながらも、一応ユウキが勇者志望でして王都にやってきたのもセアルに行くためでもあるんです。もし、こいつが聖剣を抜くことが出来なかったら記念として、三人も試しに抜いてみたいと思っていますけど」
こいつ、口では否定気味だけど自分に期待しているのがよく分かる。だが、すまん。俺は女神様に出会い強力な力を使用することができる髪飾りを頂いているし、女神様は俺が元の世界に戻ろうとして魔王討伐ために行動することを読んでいると思うし、元の世界に戻るための条件は『聖剣で人類を救う』つまり、聖剣を手にした俺が魔王を討伐すること。だから、勇者のポジションは譲れない。
と、俺は自分に言い聞かせる。
そしたら『そんなご謙遜なさらずに』と言っているかのような態度で。
「ですが、東側の町で賞金を設けられたモンスターがこの一年間でユウキ、ミラ、ユシー、カルの四人パーティーに掃討されているって。しかも、最近、圧倒的な実力差にかすり傷すら人類はさせれなかったライア付近の森に住まう魔王軍の幹部、ナーラを討伐なさったそうじゃないですか」
ユシーをメインに数千年に一人とか言われている勇者の素質が皆様にはあるということを熱心に自分らの功績の大きさを理解させようとする。
魔王軍の幹部ナーラとは植物系の魔物の上級種ガーデンフォレスと言い、植物の力で森に足を踏み入れた人間を撃退する人の形をした魔物。比喩表現とかではなく、本当に青々しい長細い雑草が髪の毛のように生えており、美貌で肌は淡い黄緑。人間の女性に似せているのか人間のものの機能を持ち合わせてはいないとなんとなく思う胸がある。そんな容姿をしたナーラはアイスピックのような先をした草の根が伸びて飛んで来たり、数枚の葉っぱで工作した小鳥に命を与えられたかのように羽ばたき急速に滑空するその小鳥はくちばしで俺の体をえぐろうとする。と、今までの賞金首より相当力があり、賞金の額も高い。だが、そいつは俺の少し本気を出したスピードに攻撃が追いつけなく、適当に俺の進むと考えれる一帯をびっしりと並んだピンピンの鉛筆のような木の根を天に向かって生やすが俺はその先を足で挟み、そのまま浮上。最後は上に敵がいるだなんて予想だにしていなかったナーラは俺の剣が自分の首を切る前、やっと俺に目を向け一瞬死を受け入れたのか僅かに穏やかな顔をしていた。そんな最近の出来事に耽けている傍ら、話は進む。
「確かにそれは私達ですが、勇者があたしたちの誰でもなかった時恥ずかしいので今の内はあたしたちのことを広めないで下さいよ」
「そうですか。もし、皆様の中の誰かが聖剣を抜くことが出来、魔王城に攻め込もうとしたときは一生懸命勝利のためにギルドの店員として頑張らせていただきます」
ベヌは自分から始めたこの話題を終わらすために太ももの前で手を重ねてお辞儀する。そのあと、ベヌは咄嗟にはじめにミラが言っていたことを思い出す。
「そういえば、宿泊手続きをしに来たのですよね。でしたら、あちらのカウンターで手続きをお願いします」
「ユウキ、カルまだ気分がよくないみたいだから背負ってくれる? あと、冒険者カード出してくれる」
「わかった……俺のと……カルので、はいミラ。ユシー、俺とカルの荷物持ってくれるか」
「はいよ」
こういうときは基本ミラが手続きを済ませる、なぜだかそういう流れがこのパーティーでは出来ている。俺はミラに頼まれて、カルを背負うより前に自分のとカルの冒険者カードをそれぞれのバックから取り出す。利用者に冒険者がいると金額から四割引きになる。俺らは訪れたとこの賞金首を片っ端から狩ってきた訳で冒険者の中でかなりの高収入ではあるが病気とかやるとしたら酔っ払うユシーだが店に損害を与えてしまったなどの万が一があると困るので、出費はなるべく少なくしているのだ。
手続きを終え、男部屋と女部屋として二室の鍵を手に持ったミラについて行く。通りに面した出入り口と真反対にある出入り口からすぐ裏にある宿舎に向かう。ギルドの建物とは別にニ棟並び立つ三階建ての宿舎。それぞれ棟の入口までギルドと繋がっている短い渡り廊下がある。歩いているとすぐ三叉路になり、三叉路の真ん中の柱に左矢印で宿舎1と右矢印で宿舎2と示されている。俺らの借りた二室とも宿舎2なのでミラは看板を一見してから右手に進み、その建物に入る。借りた部屋は鍵に記されている数字でわかる。片方は二二◯三でもう片方は二二◯四とある。これは初めの数字が宿舎番号、二つ目の数字が階数、あとの二数字は室番号だ
。この表記は冒険者ギルドの宿舎では共通なのでミラは受付で鍵をもらったときに番号は頭に入っているのかズンズン階段を上がり二室のドアとドアの中間を向いて立つ。
「じゃあ、◯四号室が私達で◯三号室がユウキ達……ガチャッ」
適当に男女の部屋を定め、カルを背負ていて手が塞がっているユウキの代わりにミラは鍵を開け、後ろで荷物を一度下ろしたユシーがドアを引いてくれる。カルの頭がドア枠にぶつからないように少し膝を曲げながらドアをくぐる。部屋は一応一室定員四人なので二段ベッドが左右に二つ置かれ、その間に幅広い通路があるくらいだ。お風呂は銭湯が近くにあるのでそこを使うことになっている。カルを下ろし、半分自力で寝かせるとユシーの持っているカルと俺の荷物を中に入れる。俺はそういえばと思い、◯四号室のドアに顔を出してミラに聞く。
「このあと、特に用事なくて暇だよね」
「そうなるわね」
俺の問にベッドにミラは腰を掛けて何かしらの予定がなかったかと少し思案顔で答える。
「じゃあ、教会行ってこようかな」
「私も行こうかな。あっ、でもカル心配だな」
「行ってきな。私、そっちの部屋で寝てるから」
となんだか眠たそうな表情をして言う。なんだか一人になろうとしているような気がするなあ、またまた俺らの視線がないところで。
「ユシイイー? もしかして私らのいないときにカジノ行こうと考えてなあい?」
「……別に行かないよ。だって……誰かと行かないと散財したときも大儲けしたときもあまり面白くもないし楽しくないんだもん」
ミラはユシーの頭を見透かしたかのように聞くがユシーはバレることを分かり切っていたわけでなくその気が端からなかったかのように言う。最後にあんなこと言っていたが、たまに禁断症状を起こして俺らが行かせまいと取り押さえるのだが、こっちは全力で抑えているのに難なく押しのけてカジノにガンダッシュする。そのあと、ユシーを追いかけてカジノに行くのだがもう手持ちは半分を切っていたことがある。俺はクレーンゲームならあと一回、もう一回とのめり込んでしまうがカジノは生々しくてやっていると今すぐ外に出たいと緊張からその場の空気が気持ち悪く感じてしまう。俺には大金をかける度胸がない。
「じゃあ、吐いたから安静にしてれば何も起きないと思うけど、カルのこと頼んだよ。イフ様に祈りを捧げてくるから」
ミラが女子部屋の鍵を確かに渡し、カルの寝る男子部屋のあえて二段ベッドの上段で寝るユシーを俺は行ってきますの目線で見てからカルを思って優しくドアを閉め、鍵をかける。そして、俺とミラはギルドのカウンターに鍵を預けて、王都の町へと繰り出す。
俺たちは現在、ハオの南西にあるイグス教の教会に向かっている。
この方角にそびえ立っているには意味があり、王都からみて、その方向にイフ様のお生まれになったつまり、信仰され初めた地がある。俺の旅の最初はその村だった。あのときは力を与えてくれる白い結晶のついたピアスは持っていたが、実質ゼロからのスタートだった。初めは武器屋のおっちゃんから木の剣を借りて魔物を狩って立派な金属の剣を購入してこの広い異世界へと歩き出したのだ。
「ハオの屋台には様々なものがあるのですね」
「……ゴクンッ……確かにこんな店数あるのに全く品揃えが同じ店がないな」
俺とミラは八百屋さんのような屋台で俺はトマト、ミラはブドウを買って歩きながら口に運ぶ。
祭りの屋台なんかを想像するとその会場で特におもちゃのくじの屋台が複数あったりするのだろうがやっぱ、ここが王国の王のお膝元であるだけあって王国各地の文化的な品や料理の屋台が営業している。俺は定期的にみる野菜が売られてる屋台で日々家庭料理で使うのか他の屋台でも置かれていたトマトを買い、うまくトマトの果汁が落ちないように上手にしゃぶりつきながら歩く。俺はトマトが好きで好んで食す。そしてこのトマトは甘くずっと食べていられる。もう一個買っておけばよかったと軽い後悔。
「なんだかユウキはトマトの食べ方が上手いな私だったら自分の手を皿のようにしてわんこ食いしなければ果汁の大半がこぼれ落ちてしまいます」
「俺は生粋のトマト好きなのだぞ、こう食べ歩きをするため身につけたんだ」
まだ日本にいたときにカッコつけてトマトを丸かじりしてみたいとしたとき、敷いてあった絨毯に口周りからつたり、顎から果汁がボトボトこぼしてし汚してしまった。そのときは僕の理解できなくもない行動にお母さんはしっかり怒ってくれた。そこから俺はこぼさない食べ方を研究し、導き出したその食べ方を習得したのだ。くだらないかもだが俺には必要なものであったとこちらの世界でふとしたときに買い、食べ歩く際に実感した。そう、トマトのこの食べ方を習得した経緯を思い出していた。その横でのんびりひと粒ずつ味わって頂くミラの横顔がある。幸せそうだな……かわいい。……? そういえばそれは種抜きか?!
「ミラ、お前……皮は人によるかもだが種はどうしているんだ?!」
こんな異世界で品種改良という手段を理解し、それをうまく利用されているとは思えない。きっと、そのブドウには種が実っていたはずだ。とあの苦い種の行方をあっちの世界では種に毒があるだとか聞いたことがあったために俺は心配とともに考察をするがリスみたく頬に溜め込んでいるのだろうか。
「えっ、ああー果肉の中から取り出すのも面倒ですし、代わり苦みがありますが果肉と一緒に食べちゃっていますよ」
「こ、こっちのは知らないけれど、種に毒的な体を害する成分が入っているだとか言うけど」
「う〜ん……多分ですけど、それ嘘情報ですよ。確かにそのような果物、食べ物があるとか聞きますがブドウにはそのようなお話はなかったような気がします。もし、毒素があったときは自分で浄化いたしますのでご気遣いありがとうございます……あーん、美味し」
考え過ぎかとミラののんきそうでも合理的な発言に考察を停止し、ミラの美味しそうに食べる姿を見ていてブドウに興味を持った俺は。
「一粒ブドウくれない? 交換するものはないけど」
「別に交換物がなくともあげますけど、せっかくならそのトマトを頂きましょう」
「これ分けるもなくないか?」
「いや、ユウキがかじって異物な形状になったとこをかじれば……う〜ん、味変だ!」
「案外抵抗ないんだね」
「まあ、そ、それはユ、ユウ、だし、それよりブドウ。はい、あーん」
「あーん!? ま、まあいいけど、あーん……うまいなこのブドウ」
「でしょうー。あーん……美味しい」
あーんをこの一瞬で頂いてしまった。俺はその次に頂くことになる間接キスを想像すると気持ち鼓動が早くなるのを感じる。
さっきのやり取りを見ていた東門からの坂の付近にいた者には妬む者、微笑ましくみる者、羨ましく感じる者がいたそうな。
人類の玉手箱 @suzuka32
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