2.昼下がりの王都観光
今までにない希望と恐怖を感じたあの夢というか記憶を見ていたから叫び起きた俺は落ち着いた後、何気なく俺が寝入っていた時にミラたちが何をしていたか聞くと各々好きにしていたようだ。
ミラは王都の東の俺らが今朝出発した町ライアの古本屋で買った恋愛小説を読み、カルは古い魔法書を広げていたが魔物が草原を駆け、空をドラゴンが飛ぶその外の景色に目を奪われ、ほとんど読んでいなかったらしい。そして、ユシーだが俺と同じで寝ていたようだ。
そこでカルは寝入っている俺とユシーを到着までまだ十数分であるのに到着後すぐに王都を巡りたいとまずユシーを起こそうとする。
カルはユシーの股に魔法で水をかけ、「ユシーお漏らしお漏らし!」と背もたれに寄りかかっている肩を前後に揺さぶる。そして起きたユシーは寝ぼけながらカルに促され自分の股を見るとへっ?と素っ頓狂な声を出すが、今の驚きで目が覚めたユシーは内側の濡れ具合と目の前の光景に違和感を覚えたのかショートパンツの中を覗いた。ユシーはほっと胸を撫で下ろし、「また、いたずらして……安心しちゃってあまり怒りなんて湧いてこないけどどうにかしてよこれ」と少し口を尖らせて言うとカルは「分かってるって『ドライウィンド』」と魔法を威力を弱めて放つ。
すると、ショートパンツの水で濡れた部分はその周りの生地と同じく乾いていた。「本当に便利だな魔法やらは」と皮肉のように言うが、カルは伝わっていないのか「でしょー」と自慢気になる。
そのままの気分で俺の前に来たカルは少し考える仕草をし、いたずらが思い浮かんだのか俺の顔の前に手のひらを向け魔法を唱えようとしたときに俺が叫び起きたという訳で起きたときにカルが目の前にいたみたいだが……俺はどのようないたずらをされそうだったのだと気になり聞いてみるとカルは「体動かなくなる『スティルネス』で金縛りドキッリ」と誇らしげに言ってきた。移動時間が長くつまらないからと俺たちにいたずらだけはやめてほしい。
こうして全員が起きた状態の俺らは馬車で早朝から昼までの時間を掛け、ライアから王都までやってきてたのだ。
ここはオブザリア王国の王都で国最大の規模を誇る町だ。王城を中心に内側からイネン、ハオ、ドラウセンという円状に大きな通りがあり、それらは八方向に伸びる通りで結ばれている。ハオは王都のメインストリートとして賑わっている。そしてここの北方向には魔物を統べる魔王の城つまり魔王城があり、王国の主戦力が集まっている。王都と魔王城を繋ぐ道に俺ら人間は王都近くからリテーナ砦、ウォーキャス砦、モート砦の三枚の砦を築いた。モート砦には最前線であるため王都に次ぐ勢力がそこに集まっている――というのが簡単に説明するとこんな感じの場所だ
東門で馬車から降りた俺らは御者にお礼を言うつもりだったのだが眼の前の光景にその事を忘れる。
「あれが国王の家なの⁉」
「かっこよすぎ俺あれに住んでみてえ!」
「さすが国のトップですね!」
「今までにないくらいマジで興奮するんだけど!」
通りの突き当りに見える周りの建物と比にならない王城に俺らは声を漏らす。
やっぱり異世界って言ったら強い魔物とのバトルだの、緊急クエストだの、色恋沙汰だのあるけど他の町を比べ物にならない規模に国の権力が集まる王都も欠かせない。勇者ならきっと大きな事件なんかが起きるんだろうな。
そんな妄想に耽けながらとりあえずのハオの北側にある宿が併設されている冒険者ギルドに行くためにとりあえずハオに向かっている途中。屋台の焼き鳥を見て俺は。
「すげー腹減ったああー」
「朝ご飯はパン一個で済ましちゃったですもんね、私もかなり空いてきました」
ライアの出発を早朝であったために早朝に店を開けている店は酔い潰れた人を吐き出すだけの居酒屋ぐらいできっとラストオーダーはとっくに終了している。なので宿屋のおばちゃんが宿泊客の朝食を作っている合間に焼いてくれたパンを食べたきり何も食べていない。そのとき、カルが焼き鳥の屋台に興味を示すと。
「ねえ、ミラちょっと焼鳥買ってきたいからお財布ちょーだい」
「ちょっと待ってね……はいどうぞ」
俺たちのパーティのお金に関してはどんなクエストであろうと四等分をしているのだが、まだ十歳名のにも関わらず俺のと同じぐらいの巨額の所持金を持っているカルはまだ純粋で人を疑いもしないで金を貸してしまったり、欲望のまま散財してしまう懸念があるのでカルの母親のような姉のようなミラにお金を預けている。
カルは微笑んでいるミラに財布をもらい、屋台へと駆けていく。ミラの優しさあふれる笑顔好きだ。
そのカルを見て俺は今向かっているハオの北側にあるギルドの受付兼食堂で昼食を摂ろうと考えていたがギルドに期間限定のメニューがある訳でなく執着する必要はないし、日本でしなかった食べ歩きで満腹まで食すという些細な夢を果たしてしまおうと思った俺は財布をリュックから取り出し、三人に告げる。
「お前ら、今日の昼食はギルドでじゃなくハオに行けば屋台たくさんあるし腹いっぱい歩き食いしようぜ」
「それ楽しそうね!」
「食べ過ぎないように気をつけないとまた――」
「大丈夫だよミラは痩せてるんだ目一杯食おうぜ。万が一、脂肪がついた時はギルドを訪れた怪我人を癒やしてやれ、そうすれば魔力が自然回復する時にそれが消費されていくだろ。よし、まずは焼鳥からだ」
「万が一が起こらないでほしいけどユウキが言う通りですね」
「なら前もって私に幸運になるフィーグルを掛けてみたらどう?」
「あなたの遊戯のために使う魔力はこれっぽっちもありません」
「えー、まあいいや今日は行かないと思うから」
「ユシーが暇になった際は無理矢理でも服屋に連れていきます。そこで着せ替えして遊びましょう」
「ほー、カジノより楽しそうじゃないのそれ」
俺は焼鳥が焼けるのを待っているカルの隣へと小走りで近寄り、目があった屋台の店員に「焼き鳥塩を十本くれ」と注文をした。その直後、他愛のない話をながら屋台に近寄ってきたミラとユシーはメニューを隈なく見てから杭のないように熟考をする――
その後、焼き鳥を食べているとハオに出た。そこには、住居とは大きさも雰囲気も違う建物がちらほら建っている。多分、王国の大切な施設なのだと思う。そして、曲線を描くハオの道には途切れ途切れでもありながらも道の先まで屋台が続きいていた。俺らは誰かが屋台によるとその屋台の近くで待ち、買ったらまた歩き出すというようにまとまって屋台を巡った。俺は野菜を置く屋台でトマトを買いかじってみたり、その場で料理をしてくれる屋台でカレーライスのような米にスパイシーなスープを掛けたものを食べたり、飲み物を売る屋台でラムネに近いようなジュースをがぶ飲みであったり、三人の買ったものから少し食べたりと全て思い出せない程の種類の食べ物を食べた。
今も車海老程の大きさのあるエビが二つずつ刺さった串を二本、自分の手がカルの太ともで埋まっているのでかわりにミラに持ってもらっている。なぜなら――
「お腹が締め付けられてる感じがして気持ち悪いよおー」
「俺の背中に戻すのはやめろよ! 魔法で除菌できるのを理由に気を緩めんじゃなねえぞ!」
「自慢気に話してた胃袋を大きくする魔法の詠唱を間違えたってのは本当なの!?」
「た、多分そうだとオエッ! ……思う」
「カル! ぶちまけちまったのか俺の背中に⁉」
「だ、大丈夫、口にちょっと出たぐらいだから」
胃袋を大きくし二日ぐらいを掛けてゆっくりと小さくなるという貴族から重宝されそうな魔法をカルはまだまだ食べたいがためにその魔法を心のなかで詠唱したのだ。だが、気分が高くなっていたカルは不注意で詠唱を間違えたらしい。それによるの影響なのか胃袋の縮む速度が不定になってしまい、不定に縮まる胃の容量が食べた量を下回ったことで苦しくなったからようだ。
そんなカルを俺が背負い、今ギルドの便所を目指して自分も戻さないくらいの運動量とカルが戻さないように揺れをなるべく少なくしてハオを走り、それに合わせてミラとユシーが併走する。
すると段々目に映る冒険者の人数が増していくのが見て分かる。とにかく北の方向に道を歩いていただけで現在地を理解していなかった俺ら。俺がふと視界を少し上げるとそこには冒険者ギルドの建物であることを表す旗がなびいているのが目に映り、少し足を早める。
俺はギルドに入るとすぐ近くにいた若い女性店員さんを捕まえ。
「店員さんトイレどこだ⁉」
「えっ?あっ、トイレですよね。あそこ四つのドアが――」
「店員さんありがとう!」
店員さんの目線の方向にすっきりした顔の男がちょうど出てきた扉を見つけ、縦向きに交互に並ぶスツールが四つずつ周りに設けられた円卓の列と列の間の通路を冒険者と激突しないよう気をつけながらトイレの扉の前まで来た俺は。
「今すぐ開けますので――⁉」
施錠の有無を見ずに回し蹴りで靴のかかと部分をドアハンドルに引っかけ、ミラの声は耳に届いているが無視をし、カルを背負っているため不安定ながらもドアを開ける――
「本当すみませんでした……」
「まあ、それ以外のトイレには列ができることもなかったですし、自分らで収めてくれたのでなんとも……でもこれからは横着せず冷静にドアは開けましょうね」
俺にトイレの場所を突如聞かれたその後も少年を背負いながら慌てて走る様子を眺めていて、さっきの蹴飛ばされたドアが壁に激しくぶつかった光景を目撃したギルドの女性店員さんが完全にランチタイムを過ぎたギルド内でドア枠を変え、他のドアを基に新たなドアを製作しているユシーを一目見て言う。
「はい、肝に銘じておきます……ユシー本当ありがとうな」
「全然、仲間ためなんだから当然のことよ」
俺がお礼をするとユシーはこっちに目をくれず肩に置いていたトンカチを掲げて左右に振りながら、集中しているのか素っ気なく返答する。
ユシーはまだ気持ちの悪さとまだ起きるかもしれない詠唱のミスによる影響の不安が心に残るカルがテーブルに突っ伏し、遠くからユシーの手元を見つめる頼んだジュースをちょびちょびと飲むミラと罪悪感に苛まれた俺を背にして、トイレのドアをギルドにおいてあった工具と木材を使って修理をしている。
ユシーは出身である村で弓は自分で作れるようにならなければとならず、それに村の者らは基本家具や家は周辺の森からの木材と釘や金具を使い製作しているので自然と工作が得意になるらしい。ユシーのおかげで何回乗合馬車がモンスターの攻撃やよる破損での立ち往生が解消されたか。なんて俺が思い出に耽けていると、目線の先にいるユシーの動きが忙しくなりDIYの製作様子をタイムラプスにしたかのようにみるみるうちに見本にした他のドアの複製が出来上がっていく。そして、ドア枠に取り付け、数回強く開閉をすると。
「完成だ」
釘をドア枠に打ち込んだトンカチを握っている片手を腰に当て、ドアの前でつぶやく。作業を終えたユシーはドアに背を向けてしゃがみ、散らかっている工具を工具箱に入れていく。ユシーがしゃがんだことで全体が見えるようになった新らしいドアは俺が蹴る時に見たものとそっくりだ。まるで時間を戻したかのような感覚だ。ユシーには本当に感謝だ。
「そういえば、あなた方はトイレ利用しに来ただけなんですか」
「そんなことはないですよ。宿の宿泊手続きをしに来たのが一番の目的ですので」
「そうだったんですか。何部屋を何日間ご利用になります? 空室が全然ありますので気にせずに言って下さい」
カルのそばに椅子を近づけて座っているミラと会話する店員さんの言い方に違和感を持った俺は思わず聞いてしまった。
「まさか、この宿集客できてなくて赤字経営なんじゃないんですか!?」
「まあ、確かに宿だけだと少し赤字ですけどギルド全体ではかなりの黒字ですかね。あと全然空室があるって言いましたけど、6割程度は埋まってはいるので。その赤字は冒険者に優遇して料金を四割引きにする制度を無くせば解消されますがこれは冒険者への感謝なので大赤字にならない限りそうはならないかと」
「冒険者始めたての時はその制度の頼っていたのでこれからも冒険者のためによろしくお願いします」
「はい、もしも財務大臣がこの制度を廃止だとほざいたときには乗り込んで考えを改めさせてみますよ」
気軽にギルドの収支をお客に聞かれた以上に答えたり、公務員であるのに上司にあたる存在の大臣をギルトの店員さんらは訳が違うかもだが日本のファミレスの店員よりも生き生きとしていてたくましく、フレンドリーで話していると心地がいい。
「店員さん工具ありがとうございました」
「こちらこそ発端はあれですけど、ドアを新しくしてくれたのはありがたいです。」
工具箱にしまい終えたユシーは店員さんにお礼の言葉とともに工具箱を渡すと店員さんが男子トイレのドアが新しくなったことをギルドが少しきれいになったと考えたのかお礼をし返す。それの会話を見ていた俺は店員さんの気を使って濁した発言で消えかかっていた罪悪感が蘇る。すると、俺の落ち込む顔を見たミラが微笑む。俺はミラにぶうたれたように。
「なんだよー」
「別に」
ミラはさらに笑顔が増す。大体こういう時は、俺のことを微笑ましく見えているのかカルと同じく子供を見ているよう目で見つめてくるが、その笑顔は自分にだけ向けていてほしいと俺もミラを見つめながら強く思う。俺はいたたまれない気持ちになり、さっきまで視線を向けていた今は会話が止めた店員さんとユシーに自然を装いながら、再び視線を向ける。そこにはギルド内を眺める店員さんと俺とミラを真顔で見るユシーがいた。俺はその真顔からユシーの今の気持ちを反射的に考え始めた時、店員さんが会話を再開する。
「あっ! 一層のこと円卓もスツールも新しいもの作ってもらおうかしら、お礼として一日無料の食べ放題を提供しますので」
「別にいいですよ。王都観光が退屈になったら、ちゃちゃっと作ってあげますよ。でも、この話誰にも共有せずに進めて良いんですか?」
「ここの円卓とスツールたちは気性の荒い冒険者に故意に壊したり劣化で足が折れることもなく、あのようにテーブルクロスを敷いているために汚れも少ないのでかれこれ、半世紀年以上変えていないとか。それできっかけさえあれば変えてもいいかなと店長が言っていたので大丈夫です。あなた方はここにお泊りになるようなので明日の朝に一応、話した結果を答えますね」
「了解です! 観光に行き詰まているだろと思う明明後日くらいにしましょう」
「了解しました。了承と含めて店長にお話させていただきます。でも、旅行に行き詰まった際には王都を知り尽くした私に聞きに来てくださいね」
店員さんとまた笑顔で話し始めたこれからの予定もないユシーは三日後の予定を決める。この世界にはゲーセンやレジャー施設なんてものはないので正直、ぱっと頭に浮かぶものは演劇やカジノ、ボードゲーム、クエストを受けるぐらいなのだ。現世ではやりたいことしかなかったのに、この世界ではやりたいことが少ないが自分が冒険者という職業のためもあり、現世よりゆったりと過ごせている。
「ありがとうございます。店員さん呼びは不都合だと思うのでお名前教えてくれますか?」
「そうですね、私の名前はベヌ。気軽にぬっちゃんと呼んでもいいですよ。あなた方のお名前もお聞きしてもよろしいですか?」
「はい、当然。私はユシーであの子がミラでその隣の子がカル、そしてこいつがユウキ」
ユシーの手で指し紹介するのに合わせて、ミラは笑って会釈をし、カルは突っ伏して見えない顔を少し上げてベヌさんと目を合わせ、俺はユシーが手を指すかわりに俺の頭に手を置いた状態で目礼をしたあと、「その手はやめろ」とユシーの手を払う。
そして、ベヌさんに視線を戻すと驚いた表情をしていることに気づく。すると、ベヌが驚愕の表情で言葉を発する。
「あなた方が巷で騒がれてる勇者一行なの?!」
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