感想20『暗黒竜の渇望』続 らんた様
■こんにちは、天音朝陽です
暗黒の者にとって人間の絶望と狂気はなによりの好物
『暗黒竜の渇望』
作者 らんた様
https://kakuyomu.jp/works/16817330647877241956
*2回目のご依頼
第一部 序編 第五章 ~ 第二部 四章二節 の感想
★哲学、思想性を問う神話
★熱は業火であり、闇は無ではなく思想を孕む
★扱っているのが人間の深い精神性のため、読むのには体力や覚悟がいる
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『暗黒竜の渇望』この作品のご依頼は二回目になります。一回目の続きから、ときおり記憶をたどるために前回部分を読み返しながら、読み進めました。
前回読了時は、①思想性哲学性の高い②熱量のあるダークファンタジーであり、③作者さんの描写が雰囲気を更に作っている
《炎の熱さ、闇、ドロリとした質感が味わいのごとく残った》
という感想を持ちました。
今回も一定量の文章を四日ほど時間をかけて読みましたが、前回とは違う感想(読後感ふくめて)も大いにあり、作者らんた様や訪問してくださった方の何らかの今後の参考になれる感想を書きたいと思います。
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第一に作者さんへの感想として伝えたいこととしては、やはり読後感が他の作品とはレベルが違うという点ですね。
いや、これ前回の感想と同じじゃねえか! と思われるかもしれませんが正直な感想ですので許してください。もちろん、読後感がすごい!というその読後感の内容は
前回とは異なっています。
心の奥に『つかえ』というのでしょうか、カツーンと引っ掛かる闇が出来るわけですね。
それは物語の内容の持つ複雑さや、作者さんのもつ哲学性、宗教性、神話性、物語の舞台となるペルシャの持つ雰囲気(気候?)、それらが混然一体として絡み合い形成されたものだと思います。
「戦い」というシーンがあっても背景には闇と、地獄の業火のような熱量や、闘者同士の想いというものがある。
単一的に はい戦いました!ガンガン!すげー!決着! みたいなサッパリしたものではない訳です。
この『つかえ』のような読後感はかなり力強い性質を持っておりまして、長時間ズ~ンと私の心に居座りました。(それだけ優れた作品なのでしょう ←偉そうにすみません)
そして、この『つかえ』から文章化された感想が、後から生み出されてくるわけです。
この文章をご覧のかたは、ほぼ間違いなく創作者の方でしょうから、人間はどのような文章を読めば
・心の奥に『つかえ』が出来る ような読後感を持たせられるのか?
が『暗黒竜の渇望』をお読みいただけると分かるのではないかと思います。
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これは私個人の感想になるかもと思いますが、小説や物語を読んでいるというよりかは、神話を読み聞かせてもらっている感覚が出てきました。
これは物語を読み進めるたびに、作者さんの解説が入って来るというパターンがありましたのでそのような感覚になっているのかもしれません。
これは、自分自身が主人公やキャラクターになって物語に没入していく感覚とも、自分自身が客席にて物語を観劇し興奮を味わう感覚とも違います。
上手な語り部さんの話を聞くという感覚にちかいですね。
私は長崎県在住で、原子爆弾の被爆者のかたのお話を(映像などで)聞く機会が多かったのですが、そのお話を聞くときにちかい感覚があります。
*創作論として参考にし、読者にそのような感想を抱かせたい方は、作者としての解説をエピソードの後に上手く入れるとそのようになる気がします。
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だんだんと、感想は抽象度が降りてきます。
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個人的に印象強く残ったのは
第一章 第一節 野望の道具よりの一文
> 闇はこれ以上の絶望を与えることはなかった。闇の中にいれば喜怒哀楽も何もない。それはすべての平和。すべての安息も約束され、もはやそこには不幸はなかった。魂はこの世界では生きない。死にもしない。永遠に存在し、あり続ける。そこにほのかな闇の光が降り注いでいた。 (引用ここまで。改行変換なし)
この文です。
この文章には、感覚的に共感できる部分があります。哲学としてではなく、人間って本当に力尽きたら「闇」というものが優しさをもたらす、と私は体験的に考えています。
あと、この中にも前回印象に残った『魂はこの世界では生きない』の一文がありますね。
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人間がひとつの文章を書くとき、その文章は天から降りてくるものですが、『書き手の器をはるかに逸脱するものは、決して降りてこない』と私は考えています。
ですので、この文章を描写された作者さんの背景には非常に興味をひかれます。
私は物語を読むとき、もちろん物語を読むのですが、同時に『作者の方がその物語を描かないといけなかった理由』を、無意識に行間から読み取ってしまう時があります。
言葉で明確に文章化できないときがほとんどですが、それは私が文章を読むうえで大事にしている・大事にしないといけないと考えているもののひとつです。
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物語として印象に残った部分は
1 ヴィシャップ(=マーサ)の一生が終わりを迎えた点
になります。これは、私と同じ感覚・感想で物語を読まれる方は多いと予想します。
一回目の感想をかいた時点で私の心に返しを持った釣り針のようにささったヴィシャップですが、う~ん 良かったですね。(ハッピーエンドという意味での「良かった」ではありません)
ひとつの不幸な運命を背負った女性は自分一人ではなく、関係をもった者、息子までを絡めて大きな人生を演じ切る。
私もこれくらいスケールが大きく、熱量のある、この世界の哀しみを描いたものを書いてみたいと思いました。
これを描いた作者さんの力量はすごいと思います。(←語彙力が乏しくてすみません)
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このように『暗黒竜の渇望』では、何名かの人(魔の者)の一生が描かれるのですが、それは神話のような成り立ちのなかで、他の要素と複雑につながっていきます。
そのなかでも、人間が社会を構成していく上で見せる「とてつもない愚かさ」「残酷さ・残虐さ・浅はかさ」は考えさせられるというか、その前に胸を詰まらせるものがあります。この辺りが読後感に影響をあたえているのは、間違いありません。
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物語として印象に残った部分
2 ヴィシャップの子供アジ・ラーフラが守護神ジラントとなる物語
ここの部分は「うわあ、最後はまた残酷な結末になってしまうのか?」と思わせて、(ここまでの物語上珍しい)ハッピーエンドになりました。
脇役のランタたちも良い味を出しており、この部分だけ抜き取って短編を書いてもらいたい!と思うのは私だけではないはずです。
闇の深遠なるおどろおどろしさと、業火のような戦いのなかで、本当に心休まる・ほっとする名シーンであったように思います。
また、ヴィシャップが旅立つ息子アジ・ラーフラにかけた言葉
>「よいか、絶対に人間を憎むではない。魔もじゃ。いつかこの光と闇との戦いは終りが来る。そなたはこの地を平和にすべく平和の教えを広めるのじゃ」
あれだけの憎しみの中にあったヴィシャップが、こう言うとは意外であり心にふかく刺さったように思います。
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具体的な「物語」や「文章表現や文体」についての残り感想は、他の皆さまが持つものと素晴らしい(語彙力不足)という意味で同じように思います。
ここでは、私が強くもった想いを書かせていただきました。
・読後感のレベルが他の作品と比べて桁違い
・小説や物語というより、語りを聞いたという感覚
・この物語を生み出された作者さんのもつ背景(バックボーン)に興味をひかれる
今回は、このような点を要点として書きました。
あと、これはコメント欄やレヴュー欄でよく見かける表現ですが、読むことに体力や覚悟を要するタイプの作品であることは間違いないと思います。
読む者を選ぶかもしれませんが、大なり小なりなんらかの影響力をもつ作品であると感じました。
では、今回はこれでまとめさせていただきます。
完結までどうにかして追っていきたいのですが、私のほうの執筆や他の用事、他作品の追いなどもありましてなかなか都合がとれません。気長に待っていただけますと嬉しく思います。
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