感想14『転移直後に竜殺し』 和泉将樹 さま

 ■こんにちは、天音朝陽(てんのんちょうよう)です。

 イチ読者としての感想です。一般的な感想とは異なるかもしれませんが、なんらかの参考になれば幸いです。


『転移直後に竜殺し』

 作者  和泉将樹さま

 https://kakuyomu.jp/works/16817330660905115993


 指定部分・第一章の感想


 ★リアリティが半端ない

 ★重い話だけど、スッキリした味わい

 ★この世界の地平線を見てみたい→作中でしびれたセリフ


 *感想にはある程度のネタバレが含まれます。


 ■

 読者としての第一感想


 スッキリした読後感に酔わせていただきました。

 重いナタで薪を真っ二つに割った時に感じるあの体感と、度数が強い青く透明感のあるカクテルを飲み干した喉ごしです。


 *念のためですが、竜との戦いや村の壊滅、アウグストとの戦いも相当に読みごたえがありました。ただ、第一に伝えたい感想としては上記のものになります。


 読者としての最初に来た感想は上記のようなものです。私が作品に感じた魅力ですね。

 ただここで終わってはいけませんので、何故そのような魅力を感じたのか?

 ここを創作者の視点で、私の心のもう一段階深い所に分け入って考えたいと思います。


 おそらくですが、この私の感覚はニュートラル・ゼロと勝手に名付けたもので、作品(物語)の中で相反する要素が存在するときに読後感として体に残るというものです。

 過去、感想を書いたなかで

『黒き呪血のクレイモア』(感想6)

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054892320803

 というダークファンタジー傑作作品にこの感覚がありました。

 この作品では、相反する要素『剣士と魔女』『絶望と生きる意志』『現実の世界と幻想の世界』これらが絶妙に物語に絡み、どちらの印象・心象も残しつつ互いにバランスをとって真ん中の(身体的な)感覚が残るという感じです。


 では、『転移直後に竜殺し』のなかで如何なるもの同士がバランスをとりあっているのかというと、脳でいう右脳と左脳になります。

 これは右脳=『作品の中の物語』と、左脳=『世界観の説明』ということになります。

 作品の中の物語が右脳を強く刺激し、作品の世界観の説明が左脳を刺激します。

 こういったものを表現できる文体が存在したことが、正直驚きです。


 右脳を強く刺激するとは、文字通り「映像」「質感」「情動」が呼び起こされる作品であり、ここは後ほど書きたいと思います。


 では左脳を刺激するとはどういう事かといいますと、世界観の説明・解説が知的なのですが、学問・学術的というレベルでの知的水準の高さを感じる作品なのです。

 *説明・解説と書いていますが、説明的でつまらない文章という意味は含みませんので誤解なきようにお願いします。


 世界を説明するというのは『トムとライラの道中記』という作品

 https://kakuyomu.jp/works/16817330652722918070

 が、ガイドブック的な形をとり、魅力的な世界観を構築・説明されていました。

 それとは別の学問的つまり文化人類学や記号論・言語学といった観点レベルでの、世界の説明なのです。


 例をあげますと、『地球ではこうだが、この物語内ではこうだ』という風にひとつひとつの事象の説明が対比的であったように思います。

 また意思伝達の手段として『意思伝達』という特殊能力を主人公が持っていますが、発生音・言語として思考を伝えるか? 映像・イメージを伝えるか? の視点はまさに学問の世界の話と言えましょう。

 あと「この世界の水平線(地平線でしたっけ)を見たい」というような主人公のセリフがありましたが「なるほど~!」しびれました。水平線を見た時、主人公はどのようにこの世界をとらえるのでしょうか。



 見事な論理的説明はスッキリした数学の公式に似ていて、美しさを感じます。この物語内での説明は光を反射するような輝く美しさを持っていたように思います。

 あ、私は数学は得意ではありません、念のため。


 ■

 では、右脳に訴えかけてくるものの感想に移ります。


 本来通常はこの部分が『物語の感想』と言われる部分になります。

 ですので、この作品『転移直後に竜殺し』は前述の論理的な感想と物語の感想という、二層に渡る感想を抱かせる作品になりますので【次元が違う】作品と向き合っている感じです。

 PVもハンパないのもうなづけます。


 物語の感想としては流れにそって三つになります。この部分は私個人の感想と言うよりは、一般的な感想とかぶるかもしれません。

 ただ、この三つの部分の感想は、かなり独立しているように思います。


 1 竜との戦い

 竜の頭の大きさが自動車くらいと書いてあり、その一文でリアリティが一気に膨らみました。


 >直後、巨大な何かが、一瞬前まで彼のいた場所を通過する。大きさは大型の自動車ほどか。


 都会に住んでいる方はどうなのか分かりませんが、私のように田舎に住んでいますと大概の人間が一生に一度くらい『自動車にひかれそうになる』という経験をします。

 私もその経験がありまして、竜の顎が主人公コウに迫るたびにその恐怖がよみがえります。

 ついつい「うわあ、あぶねえ!」と叫んでしまい、窓の外にいる人から???とこちらを見ていました。


 とにかく竜の存在感がヤバかった。

 鱗はなまめかしく輝き、主人公コウを百メートル近く跳ね飛ばす。

 しかし、この上空百メートルから落ちていく過程の描画が、作者さん独特の描画で手に汗を握るものでした。

 第2話になります。ぜひ、ここを訪問された方も見て欲しいですね!



 2 世話になった村の壊滅


 この部分で持った感想は、胸が重苦しく詰まるような感覚です。主人公の心情に共感するというよりは、悲惨な出来事全体に対して上記のような感覚をもちました。

 

主人公コウの強さについてコメント欄で様々な意見がありますが、私的に違和感はないものでした。竜に勝った、もしくは竜に勝つくらいの意志力があるからこれくらい強いやろと思っていました。(ただ、ここは人によって感想が割れると思います)

 

あと、ものすごく人間性を疑われそうなことをあえて正直に書きますと、凌辱シーンを描いて欲しかったと思います。すみません、エロい一個人の意見ですので聞き流してくださいハアハア。


 3 アウグストス事件


 この部分では、

コウの知力・知略と残虐性が印象に残りました。感想として一番「おおおっ!」となったのは第14話の最後


>その日。

 パリウス領主代行アウグストの元に、待ち焦がれた報せがようやく届き―<中略>

 そしてもう一つは、ように、と場所と日程の指定が行われていたことだった。


この部分ですね、こういう策略好きです。

「おおっ!こう来たか!」叫んでしまい、隣の部屋の義理姉から「静かにして!」と怒られてしまいました。

と言いますのも、このような事態であるならば『作者さんは主人公たちをこう動かすに違いない』という私のよみと完全一致したからです。

さらには応援コメントのツッコミに対する返しである 正規兵は使えない は私も考えていたので、ガッツポーズをして昇竜拳を放った次第です。



第8話に主人公コウの謎について少し触れられます。


>『殺すべき相手に、躊躇う理由はない』

 かつて、自分を保護した人々に言い放った言葉。

 その後、いくつもの施設をたらい回しにされ、あるいはカウンセリングという名の矯正が続いたが――もう昔のことだ。


この文章はグッと興味をひかれます。

ただ、応援コメントのやりとりを見ますと、この文章の回収はまだまだ先のようで、(今回は第一章しか読まないため)残念に思いました。


じつに引きが強い文章だなと創作者目線で思いましたね!



■ 

少し文章量が多くなってしまいました。伝えたい感想は沢山あるのですが、厳選します。


好きなキャラ1位「メリナ」 

侍女メリナさん、なんだか好きです。女性として好きです。

ライクではなくラブで!!


メリナさん時々地頭の良さを感じるのですが、それは作者さんと何らかの【意思接続】があるのでしょうか・・・。

園芸が得意とか・・・たまりません。しかし、園芸というワードがなぜ私に刺さったのかは、今のところ謎です。


メリナさんの掘った穴に私も落ちたい、いや・・・堕ちたい。


応援コメントでカンニングしたところ、メリナさんはあまり活躍する予定はないとか、残念です。


え~、本当は2万文字くらい用いて第一章の分析をしたかったのですが、私も自分の創作活動や叡智漫画の鑑賞というやるべき仕事がありますので、非常に残念ですがこのあたりで終わりたいと思います。


私もPVが、欲しいーーーーー!

がんばろ。

と思いました。




















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