感想6『黒き呪血のクレイモア』MS3 様


 ■こんにちは!天音朝陽です!読者目線での感想をお届けします。


 内に向かう男の『黒』

 外へと放たれてゆく少女は『白』


 黒き血は『赤』を捨てきれず、アルビノの少女の目もまた『赤』であった。



『黒き呪血のクレイモア』

 作者 MS3 様

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054892320803

 一話~四話*プロローグ部分 の感想

 *ネタバレ的な事柄は含まれないと思われます。


 ★物語というより、作者の魂

 ★私的には異色のダークファンタジー

 ★運命はどうしても、対比するふたつを結びつけたかったのか

 ★戦闘シーンの迫力は玄人もうなる


 ■

 イチ読者として、作者さんへ一番伝えたい感想


 この第一話~第四話はプロローグであり、世界観・物語の提示ということですね。


 あくまでこれは恐らく特殊な感想だと思いますが、第四話まで読んで一番大きかったもの(=発生した一番の感想)は

『全てがゼロになったような感じ、ニュートラルな気持ち』が読後感として残ったというものです。


 誤解なきように捕捉しておきますが、他の読者さん達が述べられているように

 ・重厚な世界観

 ・骨太な文体

 ・深くえぐりこむような心理描写

 ・玄人肌の戦闘描写(すごい)

 はしっかりと受け取っております。


 ただ、これら上記の要素がプラスとマイナスでがっちりと噛み合っているのが、その理由と思うのですが

『全てがゼロになったような感じ、ニュートラルな気持ち』が読後感として残りました。

(ここは創作者目線で後付けで分析した結果です)


 災厄 VS 祝福

 黒い血が流れる剣士 VS 白い肌を持つ魔法使い

 名を捨て死にむかう男 VS 生への行動を惜しまない少女 

 暗い森の追っ手との戦い VS 白い霧の中での怪物との戦い

 男が捨てて来た世界 VS 幻想的な魔女の里ミスティア


 異なるふたつが交わっていく、「十字剣」というものもそれを暗示しているのか。


 まだまだあると思いますが思いつくものをあげてみました。

 様々な対比が練りこまれていることがわかります。

 これらが、読者として文章を受け取った私の感性をニュートラル・ゼロへと導いたのでしょう。


 創作者目線に戻りますと、この作りこみ方は尊敬に値します。


 余談ですが ひょっとしてスクートという名前は「スタート」のタから棒をひとつ取ってクにしたのではないか?

 物語のラストが、何かひとつが加わることで、再び彼にとってのスタートになるとかいう意味では?とまで考えました。


 ■

「やりたいことをして死ぬ。それこそ人が生きる意味よ」

 ―――リーシュ・クロスフォード


 この魔女の少女リーシュの言葉は、作者さんの哲学でしょうか。たとえそうでなくとも、読者として魂が震える一言ですね。


「忘れろ、忘れろ……死ねば全てが終わる。思い出すことも……なくなる」

 ―――名前を捨てた騎士、マルグ・エストリア


 過去に対する、苦悩であり葛藤ですね。


 魔女と剣士(騎士?)の思いのベクトルが、あまりに強烈なまでに正反対でバランスが取れてあるため、(あくまで私の場合は)物語を受け取る際に必要な体力というか『身構え』みたいなものを必要としませんでした。


 重く苦しく、重厚で骨太な戦いの物語を読むには体力を擁します。それはそれでダークファンタジーを楽しむ醍醐味のひとつであると思います。

 ただこのプロローグ部分ではそうではありませんでした。


 上記★の部分で、私的には異色のダークファンタジーと書いてある理由がこれになります。


 以前読みました二十二話~三十話の部分も、リーシュ・クロスフォードの精神世界内での映像という設定で、現実世界の放つ(言葉は悪いですが)重苦しさが 中和されているように感じます。

 現実を肉眼で目にするのと、精神世界内のものと認識して目にするのでは、やはり読者の心が受け取るものが変わってくるのだと再認識した次第です。


 これは、私だけの感覚かもしれません。

 しかし、創作者としては新鮮な学びでした。


 もちろんですが、今回のように通して読んだ感想ですからそうなるのだと思います。

 苦しい部分、奇麗な描画の部分、それぞれを単話で読むとそれなりのものを心に受け取ると思います。


 ■

 人の血は赤い。いつの時代であれ、それは不変の事実であろう。 第一話


 良い文章ですね、心に残ります。


 ■

 キャラクターについての感想。

 当連載恒例の、勝手な個人の感想として好きになったキャラクターランキングです。


 1位 リーシュ・クロスフォード

 この少女の名前の中にまで「クロス」の文字が使われているのは作者さんの意図でしょうか?

 性格や能力を好きになったというよりかは、白い肌に朱色の眼という身体的特徴と

 さきほど上げました「やりたいことをして死ぬ。それこそ人が生きる意味よ」という言葉が心に刺さりました。

 容姿のイメージとしては、ベルセルクに出てくるとんがり帽子をかぶった女の子みたいな感じが浮かんでいました。


 2位 ライオネル

 うわ、こいつめっちゃ悪そうだな、嫌いになれそうだな!とスッと心に入ってきたキャラでした。もう少し情報があったりしたら1位になっていたと思います。

 こういったザ・悪役は大好きです。

(嫌いになれる・キャラクターや役どころとして感情がうごかされた(=好き)という話です。実際に身の回りにこんな人いたら嫌いです)


 3位 マルグ・エストリア

 上記2名に比べると感情の持っていかれ方が少なかったという理由で3位となりました。あくまでも上位と『比べて』という話であり、彼の大変さ具合は物語内部にて見事に表現されていたと思います。


 ■

 読書量の少ない私が読んだ数少ない小説『魔女と傭兵』や、全部は読んでいませんが『ベルセルク』(読者コメントでもありましたね)を思い起こさせる物語でした。


 ただ、上記ふたつの物語とはまったく違うものであると感じます。


『黒き呪血のクレイモア』その剣士(騎士?)と魔女、ふたりの未来はイチ読者の私からはまったく想像がつきません。

 数多くの困難が立ちふさがることでしょう。

 運命に押しつぶされることなく、その手に未来をつかみ取って欲しいものです。


 作者さんの魂とともに。


 ■

 今回、物語を読ませていただき創作のヒントやモチベーションにさせていただくとともに、透明な大地の上に立ったような読後感に支配されております。


 読者目線では読後感を、創作者目線としては練りこみ度合いとMS3さんが作品に捧げられた魂に言葉を失った次第です。


 MS3さんの今後の活躍を祈っております、ありがとうございました。

(2600文字)

★★★

作者PR

15万文字完結のハイファンタジー作品を投稿しましたが、散々な結果に終わりました。

 悔しい! そして、愛着のあるキャラクターたちに申し訳ない。

 どんだけ下手クソな小説かみてやるぜ!という方は以下のリンクからご覧ください。注)3話くらいまではまともだと思います。


【レヴァント・ソードブレイカー ~最強の騎士団長は幼馴染みと女司祭に命を狙われてますが、国を救いたいと思います~】 

https://kakuyomu.jp/works/16817330663517019554


次こそは、読んでもらえるハイファンタジー作品を書きたい!

と言う訳で、先輩作家さんの文を読んで感想書いて基礎力をつけるぞ!!

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