アイツの葬式

ラーさん

アイツの葬式で奥さんに呼び止められたのは想定外の事だった

 アイツの葬式で奥さんに呼び止められたのは想定外の事だった。


「あなたのお名前、何度も夫の寝言に聞きました」


 言葉のない僕に彼女は「妬けました」と寂しげに言いながら、


「それでも一緒にいたかった」


 そうこぼして僕に訊ねた。


「あなたもでしょ?」


 否定できない僕を彼女は笑い、


「最期に私の名前を呼ばせた」


 そう告げて僕達に復讐を遂げた。


「私の名を」


 握り締める手の熱い痛みに、僕はアイツの罪の深さと僕の愛の深さを知った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アイツの葬式 ラーさん @rasan02783643

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説