初代ポケモンの怖い話

イワヤマトンネルがクリアできない

　僕が小学生の頃の話。ある日、当時友人だった男の子が突然僕の家に来た。

　遊ぶ約束はしていなかったが、僕は喜んだ。

　「何して遊ぶ？」

　僕がそうたずねると彼は、

　「えっ、ポケモンを教えてほしいんでしょ？」

　と、驚いた様子でたずね返した。

　僕は疑問に思った。なぜなら、僕はポケモンを持っていなかったからだ。

　当時は初代ポケモン、いわゆるポケットモンスター赤・緑、青が流行っていた。

　彼が言うには、

　「(筆者が)イワヤマトンネルがクリアできないって言うから、来たんだけど……」

　「イワヤマトンネルって？」

　「知らないの？　さっき電話でそう言ったじゃない！」

　「電話？　ちょっと待って、そもそも僕はポケモンを持っていないよ！　誰かがイタズラで電話してきたんじゃない？」

　「いや、確かに君の声だった……」

　彼は、青ざめた様子で呟く。

　「もしかしたら、メリーさんからかかってきたのかな？」

　メリーさんをご存じでない方は、最下部に補足を用意しています。

　当時は僕も、メリーさんかもしれないと肝を冷やした。

　しかし、彼からその後のエピソードはなかったのでメリーさんではない。

　やはり、イタズラなのか？　と考えた。

　当時は黒電話だったため、電話番号を確認できない。つまり、幽霊の仕業だという証拠がない。

　だが、彼は確かに僕の声だと言った。

　聞き間違いと言えば簡単に片付けられる。

　しかし、過疎化が進んでいる地域で似ている声をみつけるのは至難の業である。

　小学生がクオリティの高い声マネをできるはずがない。

　僕はある仮説をたてた。

　イワヤマトンネルをクリアしたら、シオンタウンがある。

　シオンタウンには、ポケモンタワーという死んだポケモンたちの供養塔がある。

　そして、イワヤマトンネルは真っ暗だ。

　つまり、イワヤマトンネルのように暗闇をさ迷っている幽霊が成仏したくて電話をかけてきたのかもしれない。

　僕の声で！

　都市伝説「メリーさんの電話」

補足

　メリーさんとは、怪談系都市伝説。

　当然電話がかかってきて、

　「私、メリーさん。今、近くの駅にいるの」

　イタズラかもしれないと不審がっていると、

　「私、メリーさん。今、玄関の前にいるの」

　「私、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの」

　と、電話が鳴る度に徐々に近づいてくるという恐怖の都市伝説である