第12話 上級妖魔

 しばらくすると、先生がやってきた。

 光の社で見た先生だ。

 ‌学校に来ると、なんだかいつも見てる光景みたいに見える。


「みんな席につけー」


 その一声で、立っていた生徒達は自席へと戻った。

 本当に、前の世界の先生と同じだなと思って見ていると、私は先生と目が合った。


「おっ? ‌柳は今日から学校に来れたのか。戻ってこれて、本当に良かった」


 先生は、笑って歓迎してくれた。

 ‌目尻のシワがチャーミングだと思ってる。

 そのシワや声の感じも、そのまま引き継がれた感じで。

 ‌昔からずっと私に優しかったんだよね。

 懐かしい感じがする。


「柳の席は、あそこだな。着席してくれ」


 先生に促されて、空いてる席へと向かった。

 窓際の一番後ろの席。

 皓君の隣だ。


 なんだか、安心する位置。


 ‌私が席に着くと、早速先生は出席を取り始めたり


「よし、今日は欠席者ゼロ、遅刻者ゼロ!」


 先生と目が合うと、ニコりと微笑んでくれた。


「じゃあ、今日のホームルームを初めよう……」




 ――ガヤーーーッ!!



 先生がそこまで言うと、おぞましい鳴き声が聞こえてきた。

 窓の外を見ると、先日見たのと同じような妖魔がいた。


 これって、マズイんじゃない……?

 このままじゃ建物の中に来るんじゃないの……?


 そう思って慌ててるのは、私だけのようで、誰も気にしていないようだった。

 先生も全く気にしてなかった。


「今日の日直は、柳が久しぶりに来たことでも日誌書いておいてくれ」


 それどころじゃないと思うんですけれども……。

 妖魔は、段々と教室に迫ってくる。


「……皓君、妖魔だよ。どうして、誰も気にしてないの……?」

「あれは、妖魔だからな。まぁ、見てな」



 教室のみんなと同様に、皓君も落ち着いていた。

 低級……?

 妖魔にもランクなんてものがあるの?


 妖魔は、部屋の中に入ってこようと飛びかかって来たので、思わず皓君へ抱きついてしまった。


「大丈夫だから、妖魔を見てみろって」


 皓君へ言われるまま、窓の外を見ると妖魔は黒いもやになって消えてしまった。


「あれ? どうして?」

「ここにも結界が貼られていてな。妖魔は近付いただけで、浄化するようになってる。例えるなら、縁側で蚊取り線香を焚くようなのと一緒だな」


「結界って、妖魔から姿を隠すだけじゃないんだ?」

「ここの校舎の中では、能力を使うのは必須だからな。寄せ付けてしまった妖魔を倒すような結界になってるってわけ」


 消えた妖魔の辺りの地面が黒ずんでしまっていたが、巫女服を着た子が着て、水を撒いていた。


「ちなみに、あれが遅刻した人の仕事。低級妖魔の後始末。すごく面倒だから、俺は絶対やりたくない……」


 なるほど……。

 大変そう……。


 明日から、朝の準備は早くしなきゃだね。



 ――ガヤーーーッ!!



 また、妖魔の声が聞こえてきた。

 皓君からは、「気にしないでいい」って言われても気にしちゃうよ、これ……。


 窓の外を見ると、さっきとは違ってもっと大きな体をした妖魔がいた。


「……皓君、気にしないでいいって言われても、やっぱり怖いよ、良かったら席交換して欲しいな……」


 そう言いながら皓君の方を見ると、今度は真面目な顔をしてた。

 あれ……? ‌私、そんな理不尽なお願いしたのかな?


「千鶴子、こいつはマズイぞ。上級だ……」

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人見知りがちな巫女姫と、笑わない王子様 米太郎 @tahoshi

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