第11話 火の巫女姫
学校は、なんとか間に合ったらしい。
渡りきった瞬間、堀の中から壁のようなものが現れた。
遅刻ギリギリだった生徒の中には、壁に阻まれてこちら岸へ来れなかった者もいた。
「……皓君、あの人達ってどうなるの?」
「あいつらは、午前中は境内の掃除をさせられるんだ。……あれは二度とやりたくない」
そんなに大変なんだ……。
気をつけないとだな……。
境内部分からは、歩いて校舎に向かった。
校舎に入ると、中は広くなっていた。
「ここが下駄箱。基本的には前世と変わらないと思ってくれて大丈夫だ」
「そうなんだね。木造校舎みたいな雰囲気。なんか田舎に引っ越して来ちゃったみたいな、変な気分……」
下駄箱を抜けると、左右に廊下がどこまでも続いていた。
「そうそう。この建物の中で迷子にならないように気をつけて欲しい。とある先生の趣向で、この建物内は、無限に広げられてるんだ。気をつけないと戻って来れなくなるからな」
「何それ、妖魔よりも怖いじゃん……」
「本当に、その通りだよ。いくら気に入らなくても、先生達には口答えしないのがベストだ。どうやっても勝てないから……」
皓君は、なんだか経験済みって顔をしてた。
前の世界でも、先生に反抗してたもんな……。
左右に無限に続く廊下へは進まずに、下駄箱から直進する扉へと進むと、そちらにも廊下が続いていた。
どうやら、迷子になると戻って来れないというのは本当らしい……。
碁盤の目のように縦横にどこまでも廊下が続いているらしかった。
「ちゃんとしたルートで行けば、この通り問題無く着ける。俺たちのクラスはここだ」
皓君はそう言って扉を開けると、普通の教室のような部屋についた。
「お前は俺と同じクラスだな」
「そこは、前世と同じなんだね。運命感じるね!」
私がそう言うと、皓君は顔を赤らめた。
難しいことがいっぱいある世界だけど、皓君の変わらない反応を見ると安心するな。
古い木造校舎のような木の床。
教室の中には、机と椅子が並んでいて、奥には窓もあった。
廊下は無限に続いてるように見えるけれども、ここは通常の外界と接してるようだった。
「なんだから、本当に学校そのものだね」
遅刻ギリギリだったので、私達が最後に教室に入ったようだった。
ほとんどの生徒は、席に着いていた。
よく見ると、各々違った巫女服を着ている。
おそらく、属性によって能力を引き出すための巫女服が異なるのであろう。
みんながみんな、転校生みたいな雰囲気。
教室の中を観察していると、一人の生徒が私のところにやってきた。
オーソドックスな、赤い巫女服。
「あら千鶴子さん? やっと目が覚めたんですの? 良かったですわね」
「えっと……。ありがとうございます。……すいません、お名前が……」
「私のことを覚えてなくて?
その喋り方に、その名前。
前世にもいたな、私に突っかかってくる人。
確か、保健体育委員会の委員長をやってた。
私は不登校じゃないのに、存在感が薄すぎるって言って欠席扱いにしようとしてきてたんだよね。
この人苦手だな……。
「皓さんも、こんな人の守護者なんてやっていないで、火の社に来られたらいいのに。私は、いつでも待ってますわよ」
なんだか皓君に色目使ってるし。
やっぱり、輪廻って言うものはあるんだろうな。
私はこの人とは、一生相容れない気がする……。
「残念だが、俺は千鶴子の守護者だ。それだけは絶対に変えられない」
皓君は、焔さんに向かってキッパリと宣言した。
「今すぐにでなくても構いませんわ。気が変わるのをお待ちしております。絶対に私の方が良いと、言わせてみせます」
そう言って、皓君に色目を使いつつ、私に向かって舌打ちして席へ戻っていった。
なんだか、私は歓迎されて無いみたい……。
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