あなたに全てを捧げます
巧 裕
あなたに全てを捧げます
あなたはワタシに言った。
お前はオレの全てだと。
身も心もオレのものだと。
ワタシはとても嬉しかった。
だから、ワタシはあなたと結婚して一緒になった。
でも、まだ一緒じゃない。
本当に身も心も捧げるというのは、一生をずっと寄り添うことではないと、ワタシは思っている。
「今日も
夫がもりもりと、わたしの作ったご飯を幸せそうに食べている。
「いったい何を入れたらこんなに美味くなるんだ?」
「そんなの決まっているでしょう? 愛情以外に何があるのよ?」
「そうかぁ。愛情かぁ。だから、いつも貴子の料理は美味すぎるんだな。いやぁー、ホント貴子のような人が俺の嫁さんだなんて、さいっこうだ」
「もー、そんな褒めても何も出ないわよ」
だって、あなたには全てを捧げているのだから。
一つだけ。一つだけワタシはあなたに隠していることがある。
それは、ワタシにはとてつもない再生能力があるということ。
ワタシはどんな怪我もあっという間に治ってしまう能力を持っているのだ。
だから、あなたは気づかない。ワタシがどれだけ身体を文字通り削っているのかを。
生活費を稼ぐために、どれだけ臓器を取り出し売り捌いているのかを。
そして──あなたと、本当の意味で一緒になるために……。
「あー、今日も美味かったぁ。特に今日のお肉はすごかった。こんな美味い肉は初めてだよ。特Aクラスの牛肉かい?」
「うふふ、内緒よ。でも、一つだけ教えてあげるわ。今日であなたは、全ての部位を食べたのよ」
「マジか! 牛肉だとしたら、丸ごと一頭分食べたってことか!」
「そうね」
そう。彼は全て食べた。……コレであなたとわたしは、完全に一つになれた。
あなたの身体に、ワタシのモノが混ざり合った。
「ねえ」
「なんだい?」
「ずーーーっと一緒よ」
「もちろんだよ
ワタシは、彼が幸せそうに食べた空になった皿を見つめて、笑みを浮かべた。
あなたに全てを捧げます 巧 裕 @urutramikeinu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます