第3夜 ボッチクンが実は超優良物件だった件

「私と付き合ってください」

「ボクなんかでよければ!」

「よろしくお願いします」

「やったぁあ!」


 校舎裏で告白をしたら、あっさりOK。


 インキャのボッチ君である神崎征樹は目を隠した前髪を揺らしながらのガッツポーズだ。


 そりゃそうだよね。私…… 白幡双葉はウチの学校でもトップカーストだもん。コイツにはもったいない。っていうか、こんな見え透いたウソ告くらい気付けよって。


 お前みたいなザコに、私みたいなトップカーストがコクるわけないだろ。


 無邪気にピョンピョンと跳ね回る姿を見て、ちょっとだけ「可愛いかも」って思いかけた私は、慌てて「違う、違う」って振り払う。


 男の子って、そこまで素直に喜ぶもの? ひょっとしたら、私の告白にOKするのは罰ゲームかなんかだった?


 そう思ってしまったのは、仲間内の賭に負けた罰ゲームで告白したことに、ちょっと気が咎めてるからだろう。


 まあ、クラスに友達がひとりもいないヤツだ。もしもバレても問題ないけど、ウソ告の相手にコイツを選んだのは、お姉ちゃんのお勧めだから、イマイチ信用がおけないんだよね。


 仲間内の賭に負けた私は、相手を誰にしようかって悩んでいた。それを知った姉の若葉が「バイト先で知ってる安パイはどう」って勧めてきた。私と同じクラスだって、偶然、知っていたらしい。


 二つ上の姉である白幡若葉は、勉強だけが取り柄の恋愛下手なインキャだ。


 年上の彼氏がいたこともあった。でも、そいつを二度目のデートのあと、私に紹介してくれたのが運のツキ。その時、彼氏を振ったばっかりだった私は、面白半分に「姉の彼氏」を誘惑してみたのだ。

 

 ダサダサな外見のくせに、頭だけは良くて褒められてばかりの姉。小さい頃から反発して、頭でかなわない分、見た目で勝とうと思っていたのが私だ。


 オンナはしょせん見た目がすべて。頭の良さや優しさとか、真面目だとか、そんなものを男は見てない。


 だからメークもファッションもバッチリだった私に、彼氏クンはあっと言う間に心を奪われた。けっきょく、若葉を捨てて、彼氏は私を選んだ。


 お姉ちゃんは進学校のトップにいた人だったけど、ファッションなんて気を遣わない人だもん。最近でこそ、ずいぶんとお金を掛けてるみたいで、服も化粧もセンスがぜんぜん違ってるけど。当時は、一生懸命オシャレをしても、量産型の地雷系がせいぜいだったから無理もない。


 まあ、奪っては見たものの、私から見たら四つ年上になっちゃうわけで、1回だけデートして、すぐに振った。


 というわけで、姉は、いまだに、その怨みを持ってるんだろうって思ってた。今まで冷たい関係だったのに、今回は「たまたま同じクラスの子みたいだから」で推してきた。


 たぶん、私にインキャを押しつけて困らせるつもりなんだろう。でも、たった一日だけのウソ告の相手だ。見事に乗って、しかも平気な顔をしていれば「ぎゃふんと言わせる」ことになるよね!


 今、問題なのは調子こいてるコイツだ。


 まだ、跳ね回ってる神崎に少しイラッとしながら、私は釘を刺す。こんなウソ告を調子に乗って触れ回られたらたまらないからだ。


「あ…… あのぉ、付き合ってくれるのは嬉しいけど、しばらくの間…… そうね、三日でいいから、自分で告白しておいて申し訳ないんだけど、恥ずかしいんだ。自分で公表するまでは内緒にしてくれる?」

「もちろん、いーですよ。何だったら、卒業まで内緒にしますから! インキャのオレなんかに告白してくれるなんて、白幡さん、マジ、女神です。なんでも言うこと聞いちゃいますから!」


 いや、明日の朝、ウソ告でーすって教える予定だけど。


「あ、でも、とりあえず、帰りに何か食べるくらいはどうですか?」


 一応、私から告白したわけだし、これを断るのは気が引けた。明日まで夢を見させて上げようじゃないの。


「うん。いいよ。じゃ、外で待ち合わせでいい?」


 笑顔で、目立たない場所の待ち合わせに切り替えさせる。


 こんなのと一緒に帰るとか、ありえないから。あ、こいつ、ラノベが好きみたいだし、あ~んとかして欲しいのかな? 無理無理、さすがに無理だからw


「じゃあ、待ち合わせしようか。 ……そうだなぁ。古墳公園の前でどう? コンビニが目の前にあるところ。学校から近いけど、みんなが帰るコースからずれてるでしょ? あそこなら、誰も通らないと思うんだ」


 女の子と喋っているのを見たこともなかったのに、テキパキと待ち合わせ場所を決めていく。


『意外と女の子慣れしてる? いや、コイツ、こう見えてもウチの成績トップだっけ。スケジュール調整的なのは得意だとか? それにしても、あの辺りにお店なんてなかったよね?』


 住宅街の中だけにファミレスはない。チラッと頭をよぎったのは、小さなたこ焼き屋さん。確かに美味しいけど、さすがに女の子を誘う場所じゃない。


 その時は「バカにしないで!」って帰っちゃえば良いか……


「いつまでもここにいたら目立っちゃうよ? 困らせるつもりもないんで、また後で! あ、白幡さんが大丈夫って思うまで、絶対に誰にも内緒にするから安心してね!」 


 私達はメッセのIDだけ交換して、サッサと別れた。ヤツからいっぱい、ヘンなメッセが送られてくるのかと思ったら何もなかった。ちょっと意外だ。教室でも、ちゃんと知らん顔ができてる。


『やっぱり女の子に慣れてないから、何を送ればいいか迷ってる系?』


 とりあえず、仲間いつメンに「OKだったよ」と報告して、インキャのオタオタぶりをみんなで盛り上がった。


「ピョンピョン跳ね回ってたよ。哀れだね~」


 みんなが口々に、神崎をバカにし始めた。


「ま、あいつが双葉に惚れられるわけないつーの。身分を知れって感じ?」

「学年ナンバーワン美女の双葉が、インキャの神崎になんて惚れるわけないって現実に気付けよ、だよね~ むしろ、イラつくかも」

「まあ、今日だけはいい夢を見させて、明日、どうやって振るかだね」

「そうね。あ、なんとか隠し撮りできないかな? 泣き出したりしたら、すぐ、それをクラスのところにUPして」

「いいね、それ!」 


 いつメンが盛り上がってる分、私も盛り上げなくちゃ。明日、振るときの会話を隠し撮りする約束をした。よし。これで、トップカーストの中心は維持できる。


「帰りに、何か食べようとか言われちゃってさ。古墳公園のとこで待ち合わせなの」

「わ~ たこ焼きとか?」

 

 さすがに、鋭い。私と同じことを考えてる。


「ないない。それだったらすぐ帰っちゃうし」

「え? もったいないじゃん。お土産だけもらって、さっさと帰れば!」

「わ~ それってキチクゥ~」


 盛り上がっているウチに放課後。いつメンにバイバイをして、待ち合わせ場所に行った。


 ん? 何この外車?


 高級車の横に黒服の男とイケメンがいた。


 近づいた私に「やぁ!」って手を挙げてくる爽やかイケメン君。


「神崎?」

「あぁ。プライベート用のスタイルに変えたんだ」


 半信半疑。だって、ぜんぜん学校の時と違ってる。制服の時は下ろしていた前髪を、きちんとセットして爽やか感のあるスタイル。そして着ているコートも、コートの下に見えてる服もセンスが良かった。


「カッコイイね」

「ありがと。ま、コーディネーターのおかげだよ」

「コーディネーター?」

「あぁ。ボクはセンスがないんで、定期的に選んでもらってるんだ。お任せってヤツだね。おっと、寒いから、とりあえず乗ってよ」


 横にいた四十代くらいの黒服の人に恭しく頭を下げられた。


「お初にお目にかかります。運転をさせていただいている山中でございます」


 あわてて「白幡です」と声を出すのがやっと。山中さんは、ちょっとだけ、目を瞬いてから笑顔を見せてくれた。


「白幡様でございますね。よろしくお願いいたします」

「山中さんは、ずっとウチで働いているんだ。気を遣わなくても大丈夫だよ。さ、乗って」

「ねぇ、これ、神崎の家の車なの?」

「うん」


 山中さんは私を乗せると恭しくドアを閉めてくれた。そして、反対側に乗ってきた神崎は「来てくれてありがとう」と優しく微笑んだ。


 その笑顔が、あまりにもイケメン過ぎてドキンとした。


 マジ? しかも運転手付きの車でお迎え? ありえないんですけど。


「ちょっと驚かせちゃった?」

「ビックリだよ。ちょっとなんてもんじゃないくらい」

「親父が会社をやっててさ、その関係さ。学校では黙っててね。秘密にしてるんだ」

「よくわからないけど、神崎が、そう言うなら」


 車の中で「これ、告白してもらってから大急ぎで作らせたんで、あり合わせで悪いけど」と小さなパッケージを渡された。


 え? 作らせた? 作らせたって何よ!


「告白してくれた記念だよ。ちょっとしたプレゼントだから、受け取ってくれる?」


 なんだろ? ここで開けようか、迷った私に「後で開けて」と言ってきた。


「母の懇意にしているお店があるんで、そこに白幡さんのイメージを話したんだ。それで白幡さんに合わせたフレグランスを作らせたんで良かったら使ってみてよ。トップノートがフレッシュミントで、ベースノートは柑橘系に天然物のアンバー、それとバニラが隠し味になってるんだって。オードパルファンだから、知ってるとは思うけど5時間くらいは匂いが続くんで、朝付けちゃうと学校でバレちゃうから気を付けてね」

「ありがとう。今度使ってみるね」


 インキャ特有の早口で、ペラペラと喋ってきたけど、半分は聞き流し。っていうか、頭が付いていかない。


 インキャボッチ君だと思ってた神崎君が実はお坊っちゃまクンだった? しかもイケメンの超優良物件だった?


 そういうのって、眼鏡をかけたインキャブスが、コンタクトにしたら絶世の美女だったみたいにありえない話だと思ってたのに。


 ちょっとパニクってしまう。


「すごぉい。神崎君って気の利く人だったんだ」


 返せる言葉なんてそのくらいだった。


 車のことはよくわからないけど、内装が高級感に溢れてる。ちょっと聞いたら「ふぁんとむ」とか言ってた。すっごく高級な感じだってくらいはわかる。それに、告白にOKしたからってプレゼントしてくれるのも気が利いてる。


『インキャだって思ってたのに意外とテキパキ喋るし。見直さなきゃだよね』


 その時、ドライバー席から山中さんが言った。


「坊ちゃま、ラパンでよろしいですね?」


 え? 坊ちゃま? マジ? そんな風に呼ばれる人って実在するんだ?


「白幡さん、フランス料理って大丈夫? 中華もありだけど」

「え、あ、うん、私、好き嫌いはないけど、っていうか選べるの?」

「当然だよ。白幡さんの好きなものがわからないから、両方押さえたんだけど、どっちが好き?」

「あの、じゃあ、フランス料理で」

「OK~ あ、苦手なものとかある?」

「うん、特には…… あ、ナマの牡蠣は苦手かも」

「おぉ! 教えてくれてサンクス。シーズンだからね。言われてなければ出てきたかもだよ。あ、山中が電話するから、ちょっと待ってね」


 その瞬間、山中さんが独り言みたいに話し出した。あ、運転中だから、インカムで電話してるんだ。


「神崎様からです。コースに生牡蠣は入ってないですね? はい。じゃあ、けっこうです。予定通りに到着しますので、よろしく」


「神崎様からです。先ほどは、どうも。また次回となりました。よろしく」


 短い電話の感じは、いかにも慣れてるやりとりっていうか、一方的に話して切るんだから、普段も行くお店ってこと?


「ね、今のは」

「これから行くお店だよ。さっき予約を入れてもらっといたんだ」


 高校生がお店に予約? しかも、運転手さんにやらせてるって、どうよ? しかも、もう一つは、たぶん中華料理のお店を断った電話だ。


 マジ?


「あ、コースだから食べ終わるのに2時間くらい掛かると思うよ。お家は大丈夫?」

「う、うん。そのくらいなら、大丈夫だけど」

「よかった。ラパン・グルマンは、最近、混んじゃうようになってさ」


 その名前を聞いたことがあった。たこ焼きやさんにって言うのとは、まったく別方向の嫌な予感がした。


「ね、そのお店って、ひょっとしたら、この間、三つ星を取ったって言われてたところ?」

「うん。そうみたいだね。昔から行ってるお店だから実感はないけど。ま、美味しさは保証するよ」


 ヤバい。こいつ、マジで坊ちゃんだ。待って、待って、じゃあ、コイツに告白した私って、超ラッキーってこと? 学校では隠してるけど、実はイケメンだったし。


「ね? 何で学校では、あんな感じなの?」

「ははは。親父の言いつけでね。色々な人を見て、将来の仲間を選べるようにって言われててさ。そのためには、ひとりでいる方が何かと都合が良いんだよ。どんな人が良いのか、どんなヤツは避けるべきかってわかるからね」

「そ、そうなんだ?」


 じゃあ、神崎君は社会勉強的な意味で、ウチの学校にいるってこと?


「あ、バイトもしててね、実はお姉さんとも知り合いなんだよ」

「え! ほんと? ぜんぜん知らなかった」


 ヤバい。ウソ告だったなんてバレるわけにはいかない。っていうか、お姉ちゃん、そのくらい教えてくれたって……


 その時、気付いてしまった。


 そうか、神崎君は、お姉ちゃんには本性を見せてないんだ。私はから教えてくれるだけで、バイト先では、やっぱりインキャの姿しか見せてない。


『な~んだ。また、私のじゃん』


 お姉ちゃんは神崎君のことを「インキャで、ウソ告ができる相手」だとしか知らなかった。神崎君は正体を見せようと思わなかったからだ。


 その程度にしか思われてない。超カワイソーな人。最近でこそ、外見も変わったけど、やっぱり見る人が見れば、私の方が可愛いのはハッキリしてるもんね。


 お店に着いたら、生まれて初めて「シェフが挨拶に来てくれる」って体験をした。ヤバッ、このVIP待遇、クセになっちゃうよ。 


 前菜から始まって、見たこともない高級料理ばかりのコースだった。しかも、その間、出てくる話題は、すごい話ばっかり。


「去年はニースで道に迷っちゃってさ。警察官に道を尋ねたら、迷子の小学生扱いされちゃったのにはまいったよ。泣かないでエライねってキャンディまでくれてホテルまでパトカーで連れてってもらったんだ」


 苦笑いを交えて、私にくすりとさせる。


「ニースってフランスだよね? 言葉通じるの?」

「うん。日常会話くらいならね。小学生から仕込まれてるし。ほら、あっちは国境がヌルヌルだからさ」

 

 ぜんぜん自慢ぽくなくて、失敗談的に笑いを誘ってくれるけど、子どもの頃から海外に行くのが当たり前な生活が丸わかりだ。


「神崎君って、海外ばっかり行くの?」

「あ、えっと、よかったら、征樹って呼んでくれると嬉しいな」

「いいの!」


 やった。名前呼び! ウソ告の相手に征樹を選んで良かった! 


 だんぜん、私の引きの強さだよね!


「わかった。征樹…… じゃあ、私のことも双葉って。呼び捨てでお願いします」

「OK。で、国内の話だったね。それだと軽井沢に別荘があるから、専らそこになるよ。夏になったら、双葉も行ってみる?」

「行く! 絶対、行くよ!」


 ふふふっと、優しい笑顔見せてくれた。これ、玉の輿コースってこと? やった!  やっぱオンナは勉強よりも見てくれだよね!


 結局、デザートまでスペシャルなコースで、もちろん、家の前まで車で送ってくれた。


 意外なほどに女の扱いが上手かった。帰り道は運転席との間に仕切りができてて二人っきり。


 良いムードって思ったらキスされてた。ファーストキスだった。


 家に帰って「ありがとう、素敵なディナーでした!」ってメッセを入れたら、すぐにプレゼントされたものの検索に走った。


 聞いたことのないブランドだけど、これって、絶対に、お高いヤツだよね?。


 今は画像で検索できる。


「え? マジ? ニセモノじゃないよね?」


 銀座にあるフレグランスの専門店が出てきた。本店はパリ。もう、それだけでも激ヤバだ。しかも、これは「限られた人にだけ渡す」という特別仕様にだけ使われるビンだ。


 ネットでも「参考価格」になってる。それは、お金を出しても買えない有力顧客向けだかららしい。


「これがホンモノだったら、50時間分の時給でも買えないんですけど…… ニセモノを渡すような感じじゃなかったし」


 ちよー金持ち、隠れイケメンの征樹、ヤバッ。


 あぁあ、それにしても、私ってなんて運が強いんだろ! ウソ告したボッチクンが、実は超優良物件だったなんて!


 よし、お姉ちゃんには、ウソ告の話はウソだったってことに…… さすがに、それは通用しないか。じゃ、あとで新発売のコンビニスイーツかなんかを渡して、口を封じておかないと。


 うしし。よし、明日は、この話でいつメンを羨ましがらせちゃおうっと。もちろん、ウソ告なんてウソだよって、朝イチで念押ししておかないとね。


・・・・・・・・・・・

 

 白幡双葉が、コンビニで新作スイーツを姉に買ってきた、その日の夜遅く。


 妹が寝たことを確かめてから、白幡若葉は、声を潜めて甘やかな笑顔で電話していた。


「征樹、初回から、ちょっと飛ばしすぎかも。あの子、お目々がハートマークだらけになっちゃってた。私にコンビニのプリンを買ってきて『ウソ告じゃなかったからね!』って血相を変えて頼んできてさ、しかも得意そうな顔がぜんぜん隠せないの」


 ふふふと若葉が甘え笑いをすれば、電話の向こうは「ははは」と爆笑している。


「若葉は昔、彼氏を取られたんだもんね。オレにとっちゃ、お前が処女でいてくれてラッキーだったけどさ。でも、オレの彼女をバカにしたヤツを許しておくワケにはいかないから」

「ありがとう、征樹。あなたに全てを捧げられて良かった」

「若葉が見てくれだけの彼女じゃなくて、ほんとに良かったよ。あ、でもさ」

「なあに?」

「ちゃんと、ヤリ捨てるんだから、エッチはだって思ってくれよ。もちろん、避妊はちゃんとしておくからさ」

「安心して。征樹が見てくれだけのアホ女ふたばになびくなんて思ってないから。そうね、卒業式のあたりまでは、オモチャにして良いと思う。いっつも私にやりたがってる、あーんなことや、こーんなこととか? お友達とみんなでしたいとか言ってたじゃん? いーっぱいヘンな性癖を教え込んじゃっていいからね。で、卒業式の前の日辺りに」


 それが始めからの計画だ。


「お前、ほんとはウソ告だったんだって? 偶然、聞いたんだ! って、傷ついたフリして捨てるっと」

「それまで、いーっぱい夢を見せてあげてね」

「まかしておけ。でも、お前は絶対に疑うなよ? オレが愛しているのは若葉、お前だけなんだからな」

「うん。ありがと、征樹。愛してる。ぜったい、疑ったりしないよ」

「あぁ、愛してるぞ。それと週末、双葉の処女はいただくけど、その後、会おうぜ。オレの本当の彼女さんで口直しだ」

「あ~ん、もう。喜ばせてくれちゃうんだからぁ。愛してる、征樹」


 神崎征樹は、ニヤニヤと悪い笑顔を浮かべながら電話を切ったのである。 


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

作者より

 本シリーズは、基本クズばかり出てきます。「実は」と征樹の気持ちが

 天然物のアンバーは、竜涎香と呼ばれる古典的な香水の材料です。ちょっとだけ塩気を感じる動物的な甘い香りがします。若い女性へ最初に贈る香水として、アンバーはめったに使われないのが普通です。(大人っぽいだからです)。どんな上客であっても、日本支店では調香はできませんので、カスタマイズされた特注品が、その日のうちに受け取れるわけはありません。ただし「限定品」であることは確かです。要するに、征樹クンはウソを吐いていました。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



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作風がぜんぜん違う「異世界ファンタジー」ものはいかがでしょうか?

伯爵家の長男が、前世の日本からゴミを取り寄せて無双します。

ハーレム要素を濃くしているので、甘々婚約者多めになる予定です。


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長いし、辛いけど、最後は泣けます

『ただ、君を応援したかった』

https://kakuyomu.jp/works/16817139555403695015/episodes/16817330649945570534

 

一気に読めば必ず泣けます

『辛かったけど真の彼女ができました』 

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7人の寝取られ ~騙し騙され、あきらめて~ 新川 さとし @s_satosi

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