スキル「ゴミ」いや、マジで。ネタスキルかと思ったら超有能なんで世界を統一します。

新川 さとし

第1章 ヒロイン登場編

第1話 デビュタント


「お帰りなさいませ。お兄様」

「お兄ぃちゃま~ お帰りなさ〜い」

「ただいま〜 クリス! リーゼ!」


 並んで出迎えた侍女達の真ん中で、1歳差のクリスは既にお嬢様っぽい仕草を覚えて優雅にカーテシー。そして5歳下のリーゼは可愛らしく飛びついてきて迎えてくれた。


 いや~ 幼女のプニプニほっぺって、ホント、癒されるぅ~


「マジで疲れた〜」

「お疲れ様」

「おつかれぇです~」


 最近、一段とフワフワになった青い髪をなびかせて、まとわりついてくる妹たちは、いつもながらに可愛い。


 リーゼは、そのまま片手で抱っこ。反対側の腕はクリスが抱きしめてる。


 あ〜 妹ちゃん達、マジ天使。


 だから、ついつい愚痴ってしまう。


「やっぱ伯爵家は辛いよね~」


 ぜーたくな悩みだけどさ。


「そうですよね。上から見たら底辺、かといって、その他大勢組には入れませんもの」


 来年のデビュタントを控えて、クリスもだいぶわかってきたらしい。


「そうなんよ。まるで中間管理職の悲劇だよねぇ」


 つい、呟いちゃった独り言。


 クリスがキョトンとした顔をしたから、慌てて「いや、遠い国のたとえ話さ」とうやむやにする。


「お兄様は、時々、そうやって異国の話をしてくださいますね。なるほど、チューカンカンリショクの悲劇? きっと、涙を誘う悲恋のお話なんでしょうね」

「あ、う、うん、悲恋って言うか試練? のお話かなぁ」

「今度ゆっくり教えてくださいませ、お兄様」


 疑うことのない青い瞳に尊敬の色すら浮かんでるから、ちょっと心が痛い。


 それにしても、伯爵という地位はホントに微妙なんだ。


 大陸最大のサティスナブル王国の貴族位は公・侯・伯・子・男、それに準男爵、騎士爵となっている。


 この中で「上位貴族」って言われるのはオレ達、伯爵家までとなって、だいたい家門で20ほど。


 一方で、絶対的な多数となる男爵以下の家門は貴族家の95パーセントを占めるんだ。


 もちろん、彼らの条件は厳しい。準男爵以下ともなると、自分の領地なんてほとんどない。爵位だって騎士爵だと2代までしか引き継げない。だから3代目までに功績をあげることが条件になっているから必死だ。


 こういう格差社会の中で「上位貴族のグループでは最底辺」なのに、貴族全体から見れば少数派の上位貴族扱いのけ者だ。


 立場的には王妃、公妃も出せる。代わりに男爵家以下からの嫁はもらいにくいという中途半端さが痛い。


 こういう立場で今回みたいなパーティーに出ると、いろいろと気を遣わなきゃいけなくてめんどうなんだよ。


 おまけにパーティーではから、このまま座り込みたいところだ。


「お疲れ様でございました」


 家宰のへクストンが恭しくねぎらってくれたけど、もちろん待っているのは「お館様がお待ちです」の一言。


 デビュタント・パーティーからの帰りだった。神経、ボロボロだよ。


 このデビュタントと呼ばれるセレモニーは、とても重要なんだ。


 貴族の子ども達の社交デビューの場となっている。貴族の成人式みたいなものだと思ってほしい。


 この日から、公的な場のお酒も解禁だし、婚約だって正式なものとなる。家長さえ認めれば、一定の条件で自家に関わる契約行為だってできるんだ。特に長男は「領主代行」が正式に認められるほどに重要だし、戦争が起きれば家を代表して戦場に赴くことも許される。

(まあ、12歳が戦力になるかどうかは別問題だけどね)


 つまりは貴族として「大人」扱いとなるってことだ。


 だから、どんな辺境貴族であっても「国を守る仲間として戦う仲間が初めて顔を合わせる場」という建前上、必ず子女を参加させることになっていた。


 当然、王族も全員が参加するし、公爵家から騎士爵家までの元服する子ども達ひとり一人に、王が直接声を掛けるのが通例のこと。


 三日掛けて行われるデビュタントは国を挙げてのお祝い気分の日でもある。町や村でやる庶民の元服式も、この日に合わせて行われることが多いらしい。


 ちなみに、行われるのは毎年12月24日が決まりだ。


『まあ、クリスマスって言えば贈り物プレゼントだよね。


 そうなんだ。実は、この世界で「大人」の仲間入りをしたオレには、日本人として過ごした「前世の記憶」があるんだ。


 前世の名前も家族も思い出せないけど、歴史ヲタの文系大学出身で、コンビニでバイトをしていた記憶がハッキリとあるんだよ。


 歴史以外の趣味は、ラノベ読破だった。


 それだけに、記憶を取り戻した時、真っ先にヤッたのは「ステータスボード、オープン!」だった。


「まじで、ステータスも見られたし、スキルもあったんだもんなぁ」


 叫んだ瞬間、ゲーム画面で良く見た「あれ」が出てきたんだよ。どうやら他人には見えなかったらしい。


 それは今年の夏のこと。12歳の誕生日だった。自分でやっておいてビックリだったよ。


 初めて見たステータスは、今でも日記にメモしてある。こんな感じだった。


・・・・・・・・・・・


【ショウ・ライアン=カーマイン】

オレンジ・ストラトス伯爵家 長男

レベル 1

HP 10 

MP  4

スキル ゴミ(レベル1) 


★☆☆☆☆ ゴミをMPと引き換えにランダムで呼び寄せられる←今、ここ


★★☆☆☆ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


★★★☆☆ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


★★★★☆ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


★★★★★ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



・・・・・・・・・・・

 

 スキルが「ゴミ」って書いてあったから、ネタか、はたまた「ゴミみたいなスキル」だと思ったんだよね。でも、マジで「ゴミ」だった。


 でも使いこなせるようになってきたら、超優秀なスキルだったんだ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

作者より

みなさまが気に入ってくだされば

100話程度のお話になる予定です。

(↑当初の予定を変更しました。もっと長くなります)

気持ち良く読んでいただけるように心がけて進行します。

寝取られ、苦境一切無しのハーレム、成り上がり系となる予定。

フォロー、★★★評価をよろしくお願いします。


今後の進行予定です。変更するかもしれませんが

「ヒロイン登場編」を10話くらいまで書いて

内政チート編→王立学園編→動乱編

となるイメージです。

よろしくお付き合いください。


基本的に、平日(月~金)は毎日更新の予定です。

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