交彩 ――青防の守り人 外伝――

時雨 莉仔

序章:守り人たちの記録

「動画モードにして……と。――ついたかな……? おっ、ついたついた!! って桜那さな〜? 暗いよ顔〜!」

「ひっ、ひゃいっ!?」

「おーい!! 見えてるー!?」「……バカ姉、手ぇ引っ込めて。僕が見えなくなる」

放課後の教室。誰もいない、それでいて学校閉鎖時間ではない絶妙な時間帯。

私達四人は、その中のひとりであり私の親友である、舞弥まいやさんの携帯端末の動画撮影機能を借りて、ある撮影をしていました。


「画角は広いほうが良いかな……?」「違うよ―! このくらいだって!」「――僕はもう少し色味にシアンを加えたほうが画的に映えると思う」「(沙姫さん”そこ”ですか!?)」


みんなの意見を反映させるために色々試す舞弥さんとそれにアドバイス――ほとんどそうではないが――を加える未悠みゆうさん。そして相変わらずのマイペースさを主張する、未悠さんの双子の妹の沙姫さきさん。

「桜那はどんな感じが良い〜?」

ふと桜那――私は舞弥さんにそう言われると「広い感じのほうが良いと思いますね」と顎に手をやりながら答えます。

(正直、舞弥さんの言っている広めの画角のほうが、全体的映えそうな感じではありますね……)



「よし! できた!! ――これでバッチリだね!」

しばらくすると、ようやく配置や色味などのカスタマイズが完了します。

「私の案も混ぜてくれたー?」

怪訝そうに聞いてくる未悠さんに「もちろん! 参考になったよ!!」と喜びながらわしゃわしゃと未悠さんの頭を撫でる舞弥さんに「んっ……ふふんっ」と胸を張り得意げになる未悠さん。

「桜那と沙姫のもね。ありがとう!」

すると、舞弥さんはこちら――私と沙姫さんがいる方を見ると、ぐっ、とサムズアップをしながら、さながら子どものような”やんちゃな”笑顔をのぞかせ、その反応に私と沙姫さんはこくり、と頷くと舞弥さんたちのいるところへ向かいます。




「さて……と、始めますかね」「ですね。早くしないと閉鎖時間になってしまいますし」「早く録ろー!」「……僕も」

ここまで言うのを聞くと、舞弥さんは手元にリモコンを胸ポケットから取り出し、ピッ、と録画ボタンを押します。


『よし、回ったねー! じゃあ、始めるよー? 桜那?』

『はっ、はい! え、「☓☓年後の私達へ」……。――皆さんこんにちは、呉石くれいし 桜那です。こ、今回は、「未来の自分に向けた記録」を録っていきたいと思います。未悠さん――』

『未悠だよ! んーとどこ読めばいいの……?』

『みゆ姉、ここだって……』

『あ、ごめんありがと!! えーと、「最初に、将来の自分に向けて」かぁ……なら沙姫と元気に暮らせるのが良いなぁ……! 家は――』


がたっ。


すかさず『みゆ姉、嬉しいんだけどそうじゃなくて……』とツッコミを入れる沙姫さん。『え、そうなの?』と素で返答する姉を見『みゆ姉、えっとね――』と手短にアドバイスをする妹の沙姫さん。傍らを見ると、舞弥さんが腹を抱えて、くっ、くふっと失笑していました。


『ごほん……気を取り直して! ――未悠だよ! 「将来の自分に向けて」は、「今、どこで何してる?」かな! じゃあ次、――沙姫?』

『うむ……。沙姫だよ。僕は「みゆ姉は元気でやってるかな」かな? あとは「桜那と舞弥は仲良くやってる?」と聞いておこう……。――舞弥』

『やほー。私はねぇ……「桜那たちと一緒にいることはできてるかな」と、「”好きな人”はできてる?」って聞こうかな……。じゃあ最後に桜那!』

『えっ!? えっ、えっと……しょ、「将来の自分に向けて」は「舞弥さんたちといい関係は維持できていますか?」……それと――』




『――「私は幸せ」ですか?』

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 交彩 ――青防の守り人 外伝―― 時雨 莉仔 @yuzuriha0605

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