夢日記:ロータスの洞窟
高黄森哉
ロータスの洞窟
自分は船内の寝室で目覚めた。その時、私はというと、小学生だった。
ここは船底にある空間のためやや狭い。肋材に沿って個室が区切られており、中には二段ベッドがある。そんな個室から廊下に出ると、子供たちが列を作っている。小学生時代の友人達だ。自分も小学生で、今日は旅行かなにからしい。
あまり折り合いの良くなかった女子生徒が前に出る。彼女は、今日、フェリーに乗れたのは、私のおかげだと主張していた。まあ、それは、その通りなのだが、なんとなく嫌な感じがした。自分はその時、なぜか、言い返す言葉を持っていたようなのだが、あえて発言しなかった。面倒臭かったからだろう。
フェリーの場面から変わると、自分は明るい洞窟内で走っていた。どうやら、トライアスロンに参加するために船旅をしていたようだ。ひたひたと裸足で滑らかな洞窟の地面を踏みしめる。なぜ、この洞窟が明るいのかというと、それは、高い高い洞窟の天井に裂け目があり、そこから日光が指しているから。
目の前に、洞窟湖が鮮烈に広がった。
天井の巨大な崩落から太陽光が燦燦に降り注ぎ、蔓性の植物が、水面から突き出す鍾乳洞を這う。
観光客が沢山浮いている湖。対岸までは二百メートルほどある。鍾乳洞はつるつるしていて、途中で休憩できそうにない。泳ぎ切るより先に死ぬんじゃないかな、とよぎった。自分は金槌だ。大人になった今もそうだ。ましてや、小学生の自分には不可能だ。でも、泳ぐしかない。カエルのような平泳ぎで。不思議と水の感触はしなかった。ただ、腕を動かす疲労と、おぼれそうな息苦しさ。
死に物狂いで中央部を突破。中央部のカーテン手前、立ち泳ぎで息を整える。あとちょっとだ。対岸の終わりは水中から緩やかに、滑らかな坂になっている。その坂まであとちょっとのところで、ある褐色の少女に助けられたような記憶があるのだが、ちょっとぼんやりとしていて、謎だ。さて、坂からひたひたと、人類の進化史のように、身体を二足歩行に戻した。そして、また走り出す。水浸しの衣服の感覚が、いまさらのように、身体を震わせた。裸足のままなのに足の裏は無痛だ。
場面は変わり、サバンナのような砂漠。自分はまだ、走っている。大人の黒人男性も近くで走っている。彼もトライアスロンの参加者なのだろうか。ペットボトルの水をもっている。嗚呼、喉がカラカラだ。喉がカラカラだ。喉がカラカラでも走らなければならない。その時、目が覚める。
口を開けて寝ていたために、喉がカラカラだった。
夢日記:ロータスの洞窟 高黄森哉 @kamikawa2001
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