壮大な世界と個人の葛藤の繊細な対比

出だしの壮大さから感じる清々しい空気。
そして、コミュニティの生活の様子がありありと思い浮んで、一気に世界観に引き込まれました。
主人公にも自然と感情移入できるし、年配の巡礼者に対しても、こちらが優しい気持ちで見守れる描き方で、安心(?)して読めました。
その辺りの水準の高さは、さすが天川さまです。

個人の生き方と全体の役割としての自分という対比。
この”役割”は、単に人工的に形づくられた社会の犠牲者という意味ではなく、運命や使命に近いものだと感じました。

性欲だけを切り取り、善悪を決めつけるのは、人間を切り刻むのと同じ。
人間をまるごとそのまま偉大な自然であると見るなら、彼女が司祭である所以もわかる。

それを学ぶのが主人公の巡礼の目的ではなかろうか、と思いました。

☆2の理由は、あまりに美しく、難しいテーマと思われますので、初見だと、「司祭側の価値観の理解」と、「主人公の心の状態」を同時に把握するのが難しいな、と感じました。
脳内の処理が追いつかない的な。

両方を繊細に描かれていいる良さ、と、そのミステリー感の良さ、の結果かと。
「わかりやすさ」との両立は、私の課題でもあります。

私の読解力に問題があるときは、私の読解力分の減点★1だと思ってくださいw