第3話

「あの、私、今日は早退します!急用があってすいませんっ」

 私は外へ飛び出して、新幹線に乗った。

 ネットで検索してみたけど、民間の企業の社長が生きているか生きていないかなど探しても、どこにも出て来ない。

 あの事故のことも出て来ない。ネットではどこでも出ていたのに、まるで消えたよう・・・

 キバリエ株式会社。静岡県の会社だ。

 私はネットで調べた住所を探して、歩いた。

 心なしか、ウウウンという奇妙な電気自動車の音が聞こえたような気がした。

「社長、今日の午後から会議です。東部建設の社長も来ますので」

「ああ、分かった。その前には戻っておく」

 ビルの下の駐車場の出口から、短い髪を社長らしく七三に整え、灰色の背広、青いネクタイで、実業家っぽい男が現れた。

「後藤田さん?」

「もしかして・・・松本夏乃さん?」

 その声は、確かに電話の声だった。 

「良かった。生きていた。助かった。良かったあ」

 半笑い、半泣き。どう今の現実を受け入れていいのか分からなくて、捨てられたノラ猫みたいに周りをぐるぐる回った。喜びが大きすぎて、私ももう訳が分からない。

「本当かどうか信じられなかったけど、今、君と出会って、本当だと分かった。ありがとう」

 彼も感動を讃えた表情で、子犬のように無垢な瞳でうるうるとしている。

「君の忠告を聞いて、高速道路を降りた。高速道路は降りられないから、路肩に停車したんだよ。すぐ通報されて、高速道路パトロールが飛んで来た。その間、山の斜面をよじ登って、半グレヤクザが行き過ぎるのを待ったんだ」

 気づけば、彼は私の手を取って、見つめている。

 なんか、思ってたより素敵な人。私は胸がどきどき・・・

「もし、君、今日、暇なら、お茶でもどう?」

「え?」

「いやあ、不思議な縁でつながったわけだから、もう少し君のことを知りたいと思ってね」

 出雲大社のお参りの後での、異世界との通信。

 それはもしかしたら、縁結びの神様の仕掛けだったかもしれない。

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コールセンター通信 ryoumi @matylit

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