第62話 これからでござるよ

結局、勇者の魔王討伐に同行する事になったペキとマツ。


マツが周囲に人が居ないのを見計らってペキに話しかけた。


マツ「でも、どうしてやる気・・・になったんです?」


ペキ「拙者…じつはちょっと不安になってきたのでござるよ。どうも、魔物が活性化しているという話も耳にするでござる。魔王軍に人間の軍が押されている、というかかなり劣勢とも聞いているでござるしな。このままあの・・タイガ殿とニコ殿に任せておいて、万が一魔王討伐に失敗したら……」


マツ「ああ、お鉢がこちらに回ってくる、と?」


ペキ「…でござる。ただ、そうなった場合、人間軍が大幅に劣勢になっている可能性が高いでござろう。その状態から魔王を討伐は難易度が上がるのではないかと…」


マツ「でも、失敗したとしても、勇者がいいところまで追い詰めて魔王軍が弱体化していると言う可能性もあるのでは?」


ペキ「その場合でも、討伐に失敗して魔王が生き残ったなら、きっと魔王は逃げ隠れし始めるでござろう。隠れられて見つけるのに時間が掛かってしまったら、態勢を建て直されてしまうかもしれんでござる。それどころか、前よりも手強くなっている可能性もあるでござる」


マツ「なるほど、面倒な事を後回しにして逃げていて、結局後でもっと大変になるよりは、全力でやる事やっておいたほうが後が楽だと」


ペキ「でござる」


ペキ「まぁ今のところは拙者達は荷物持ち扱いでござるから。しょうがないので無限収納は活用してもらうとしても、基本的には勇者に前に出てもらって、拙者達は後方から危なそうな時に助けるって体裁をこのまま維持するでござるよ」


ペキ「勇者殿には魔王まで案内してもらって、魔王と戦ってもらって、倒せればよし。もしやばそうなら、隙をついて…」


マツ「なるほど」




  +  +  +  +




■その後。


勇者率いる人間軍は、勇者の活躍によって破竹の勢いで魔王城まで進撃、ついに魔王の間で勇者と魔王の戦いが始まる。


が、ペキが懸念した通り魔王は思いの外強く、勇者は善戦しているものの、劣勢に追い込まれてしまう。


ペキ「仕方ないでござるね…」


魔王の怒涛の攻撃にタジタジになっている勇者タイガ。


「くそ、なんとか反撃しなけりゃ…だが隙がねぇ…」


だがその時、突然魔王の攻撃が止まった。


魔王「う…」


ペキ「今でござるよタイガ殿!」


タイガ「え? お、おおう!!」


タイガの聖剣が魔王の胸を貫き、勝負は決した。


タイガ「……お前、俺に手柄を譲ったのか?」


実はタイガの剣の前に、背後に転移したペキの鬼切丸が魔王の心臓を突いて居たのである。


だがこれで、とどめを刺した、魔王を倒したのは勇者タイガであると言うことになった。


ペキ「ご苦労さんでござる。これでお仕事は終わり、無罪放免でござるな」


勇者と聖女はこれから王城へ帰って報告、報奨の受け取り等々色々あるが……


それらをすべてタイガに押し付け、ペキはさっさと離脱して街道を歩いていた。






マツ「ノクギーガの街に戻るんですか?」


ペキ「そうでござるな。あの街には世話になった御仁も多いでござるからな。移動するにしても、一度挨拶したいでござるな」


マツ「この世界に来て初めての街、もう、ホーム感ありますよね~」




  +  +  +  +




街道を歩くペキ達を、少し離れた岩陰から見ている者が居た。


ナタリー「ちょ、あれ、ペキ達じゃない?!」


ナージャ「あら、そうね。声を掛ける?」


ナタリー「バカね、チャンスでしょ! この先の森で不意打ちよ!」


ナージャ「ああ、そ、そうね…わかったわよ」




  +  +  +  +




街道を行くペキとマツの前途は平穏とは行かないのであったが、それに気づかず意気揚々と歩いていくペキとマツ。


ペキ「さて、マツ殿! 面倒事は終わり、拙者達の異世界スローライフはこれからでござる!」








※諸般の事情により、本作の連載はここで終了となります。


次回作にご期待下さい


次回作↓

https://kakuyomu.jp/works/16818023212593380057




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やった! ついに拙者も異世界転生でござる! チート(魔法)を選べ? それならもちろん… 田中寿郎 @tnktsr

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