第5話
――会話をする? このペラと……。
第4レースの歓声が聞こえる。
村井のレースが終わった。
凪人はあれからペラを叩き続けている。
ペラと会話するなんて考えたこともなかった。
こうやってがむしゃらに木づちを振っても音が変わるわけでなし、目を細めたり、ペラを耳に近づけたりしてみてもペラはなんにも喋らない。
あたりまえか。
「はぁ」
大きなため息のあとまたペラを叩く。
「ありゃりゃまだペラ叩いてる」
「村井さん」
凪人に気が付いた村井は驚いたように言って、苦笑する。
たぶん泣きそうな顔をしていたんだと思う。村井は呆れたって顔をしている。
「そんな顔で見ないでくれよ」
「ペラがなにか話すかと思って……」
困惑顔で返したが、声は途中でしぼんでしまう。
「ハハッ真面目だなぁ、でもそんなに叩いたらきっと痛がってるよ」
「はぁ、僕も何が何だか……」
村井は目を伏せ短く笑って僕の右肩に手を置いた。
「まったくバカなんだが素直なんだか……、静波次のレースは?」
「8レース目です」
「そうかじゃあ次のレースはチルトを0.0度にしてごらん」
「チルトをですか?」
「そう、じゃあ俺準優勝戦あるからまたね」
軽く手を振って観戦室に向かう背中を眺めながら凪人はモーターに手を触れた。
「チルトを上げる、か」
泣いても笑ってもこのシリーズはあと今日入れて二日しかないし、やってみるしかない。
バックストレッチ‼︎ うさみかずと @okure
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