川遊び
上流に溶けし葉の香はこの肌をさらつて笑ふ夏の思ひ出
〔景と解釈〕
青々とした若葉の香しい匂いが、川の透き通る水に溶け出したかのように涼しく、爽やかです。そんな川の流れが、主体の肌の表面をさっと過ぎ去っていきます。それは、主体にとって心楽しい夏の思い出となりました。
〔ポイント〕
・今度は水の中に、若葉の香りが溶けていると描写されていますね。この歌では、若葉という緑の色彩を使いつつ、その緑から印象付けられる爽やかさが歌全体に効いているかと思われます。また、涼しい感じを感覚的に表すには、さ行の文字が含まれている言葉を使うと良いらしいです。今回の歌でも、「s」の音が入った言葉を使っています。
・「s」の音のように、音感を用いた表現があります。例えば、やわらかな感じを出すならば、は行の音を含む言葉を使います。この歌を全てひらがなで表すとこうなります。
じょうりゅうにとけしはのかはこのはだをさらつてわらふなつのおもひで
「s」の音が二つ、「h」の音が五つありますね。短歌は文字数の少ない文学ではありますが、それ故に、様々な技術があり、案外奥が深かったりします。川の水の冷たさや、流れの描写に託した主体の感情は感じ取って頂けたでしょうか。
短歌 河ながれ 広川アサ @oOAsaOo
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