第42話 目標
『A判定の学校がかなり増えてる! ゆーにゃ頑張ってる!』
『ゆーにゃの動画観て自分も勉強頑張ってます!』
『私も今年、受験生です。中学生の頃初めてメンタル系の病気になって入院も経験し通院しています。最近ゆーにゃの存在を知って、メンヘラでも学校や将来の夢を追いかけて良いんだって励まされてます! 私は入院した時に看護師さんにとてもお世話になりそれをきっかけに看護師を目指したいと思う様になりました。私は看護の専門学校目指して頑張ります!』
『夏なので部屋着をショートパンツとかにしたら良いと思います』
動画の投稿直後はぐんぐんとコメントが増える。
「ねー、最後のショートパンツが良いとか言ってるのキモい…リョウさん、そのコメント非表示にできませんか?」
「うーんっと、これは微妙だな…ただのリクエストだから…」
「絶対いやらしい目で観てるよこの人!」
「ゆーにゃ、決めつけは良くないよ。でも、本人が不快というなら検討はするね」
「ねぇねぇ、最近のゆーにゃちゃんのコメント欄『ビジュ最強! 可愛い! 天使!』みたいなの減ったよね。大丈夫ー? ルルメゾの顔なのにー」
「マナちゃん…それ、ちょっと気にしてるんだから言わないでよ…」
「マナが呼びかけてあげようか? 『ゆーにゃが最近可愛いって言われないって嘆いてるから言ってあげて!』って」
「何言ってるの? そんな事しなくて良いよー」
「ゆーにゃ…マナティはもう言ってくれたみたいだね」
『ゆーにゃが可愛いの当たり前過ぎて言い忘れてた』
『ゆーにゃがいつでも優勝!』
『可愛い』
『可愛いって言われたい…鏡見れば言われなくてもわかるでしょ』
『最強に可愛い』
『結局、可愛いって言われたいだけか、せっかく可愛いだけじゃなくなったのに』
「えぇ!? SNSで絡む時は事前に言ってっていつも言ってるのにー」
「マナ、今言ったよ?」
「言うだけじゃなくて、私がリョウさんにOKをもらってからにしてって事だよー」
「でもさぁ、みてみて! マナの影響力! みんな可愛いって言いに来てくれてる」
「もー、リョウさん、私のアカウントで…」
「あぁ、もうね『みんなありがとう! 可愛いって言ってもらえるとやっぱり嬉しい!』って投稿しておいたから大丈夫だよ」
「最近、SNSの投稿内容ちっとも作ってない気がしてきた…もうそれ私のアカウントじゃないんじゃないかとすら思う…」
「マナティとゆーにゃ、そろそろ撮影入れるかな?」
カメラ、照明、音響の準備が整って全員が持ち場についた。
「ちょっと待ってー、撮影前にちょっとだけお直しさせてねー」
立ち位置につくとマコさんが前髪を少し直してくれた。
「それじゃぁ、3、2…」
ショートはダンス動画から撮影をする。
衣装はルルメゾの最新作でマナちゃんのプロデュースアイテムだ。
マナちゃんはルルメゾのショーの大成功依頼、多くのプロデュース依頼が来ているらしいけれど「私がやらせて欲しい! と頼んで承諾してくれたのはルルメゾだけだったから、アパレルのプロデュースはルルメゾだけ!」と言って他のアパレルからのオファーは現状全て断っているらしい。
マナちゃんがプロデューサーで居てくれているからか、私も引き続きルルメゾのモデルのオファーを貰う事が出来ている。
すっかり受験勉強を前向きに取り組む高校生配信者ファッションモデルになった今も私はメンヘラ系配信者のゆーにゃと呼ばれている。
時々思う、もしあの時メンヘラを装わなかったら…今の私はいないだろう。
そして、メンタルが不安定な有名配信者達を肌で感じる事も無かったと思う。
私は「有名インフルエンサーが将来の夢」と自分のアカウントとチャンネルを作った時には想像もしなかった事を沢山見聞きし経験した。
怖くなって本気で辞めたいと思った事もある。
けれど、今も撮影をしているのは、受験の先、心理士になる目標の先にある新しい夢の為だ。
多くの人がSNSのアカウントを持つ時代に、疲れてしまった人に寄り添えるメンヘラ救済系配信者のゆーにゃになりたい。
救済などと言うとおこがましいけれど、メンヘラをファッションにしてしまった私が自分を保つ為の
全ての人が頼れる人がいるわけではない事を知って、頼れる人が側にいても上手く頼れない事もあると知った。
勉強して、専門的な知識を持って、困っている人の道標が出来る日を目指したい。
悲しい選択をする人が一人でも減る様に。
可愛いだけでは厳しいのでメンヘラ始めます 明日美 燁乃 @TerunoAsumi
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