普通に強い探索者のお話?

ちじん

第1話

 ダンジョンなんていうろくでもないモノが生じた、この世界。

 漫画でしか見たことが無いような謎の空間、ライトノベルでしか聞いたことが無いような魔物、そしてあまりに都合がよすぎるステータスなんていう人間を人外へ作り変える要素。

 そんなモノが突然出てきたこの世界は、十年という時間をかけてようやくダンジョンとの共存を果たした。

 更にそこから三年という時間が経過しているのが現在。

 十年間ダンジョンを潜ったりしながら生き抜いた男。

 別に特別強いわけではなく、特別な力を持っているわけでもない。

 ただ慎重に、しかし冒険心を忘れず探索して生き残った、器用貧乏に生き抜いた男。

 これはそんな、なんの特別性もない鈴木一すずきはじめという三十三歳のおっさんが、ダンジョン配信なんてモノのせいで振り回され、その上で結局特別にならないだけの話。


 *


「……なんかだいぶ前に、こんな状況のラノベ読んだな」

 目の前には大ピンチの女性探索者、襲い掛かるのはこの階層にはいないはずのイレギュラーのミノタウロス。

 なんも知らず助けたら実は人気配信者、カメラ回ってて顔がネットで拡散あら大変!

 ……いやまあ、彼女が配信者ってこと知ってるし、まだ助けてないから俺の場合は状況違うけど。

「んー、どうしたもんか。割とガチで顔出し嫌だし、でも助けないのも後味悪すぎるよな」

 そんなことを呟きながら状況確認に周囲を見回すと、あることに気づく。

「……あ、これなら大丈夫か?」

 正直俺は頭が悪い。実際にそんな上手くいくかは知らん。

 でも思いついたなら、決行するしかないだろう。

 バックパックを探り、目的のもの────灰色っぽいの石を二つ取り出す。

 そして念のためにカメラを取り出し、スマホとの連携をしておいてからミノタウロスと配信者の様子が見えるところに設置。

 その後、スマホ画面を見て配信者の生存確認をしながら、その場をある程度離れる。


「あー、来週も潜らないとかなー」


 そして、取り出した石を打ち鳴らした。

 甲高い音が響きわたり、スマホを見てみればその突然の音にミノタウロスが動きを止めている。

 配信者の方も、突然の音と動きを止めたミノタウロスに反応して、動きを止めると同時に身構える。

 まあ本当に運がよかったね、あの配信者。

 ここは周囲の材質が岩というよりは石で、音が響きやすかった。

 先ほど打ち鳴らしたのは誘音香石。魔物を刺激する音を鳴らし、そして魔物を引き寄せる香りを発生させる。

 これであの配信者が何を言おうと、この辺で稼ぎを行っているソロ探索者、という顔が出来る……はずだ。

 それに使ったものが使った物だけに、怖い思いはするだろうし。


「よし、来た来た。んじゃ、【我が声を聴け 焔の精よ】」


 轟音が響き、地面が揺れる。

 誘音香石二つも使うと、香りが届く範囲がだいぶ広い上に強いんだよな。

 だから余程ノルマに切羽詰まってないと、二個同時に使うなんてことはない。

 まあその香りの強さの為に、そこまでに何があっても脇目も振らず猛ダッシュしてくれるんだけども。

 スマホをちょっと見てみれば、もうカメラとの接続が切れている。魔物に踏み砕かれたのだろう。


「【矢を構えよ 盾を構えよ 槍を構えよ】」


 ミノタウロスがいた方とは反対からも来ている。まあわかり切っていたことである。

 この香りがたつ場所には近寄るな、というのはダンジョンの教習で真っ先に学ぶことだと聞く。あの配信者も怖いもの見たさで来たりなんてことは無いだろうし、仮に来たとしても不慮の事故でもなければ許可なく顔を映したりしないだろう。


「【万軍を率い焔の戦争にて 蛮族どもを薙ぎ払え】」


 詠唱完成。見据える先にはミノタウロスが先行し、その後ろにも魔物が山ほどいる。

 けどまあ大丈夫。これは前後両方一応対応できる対軍魔法。

 欠点は魔力消費が激しくて、使った後はもう魔法を使う余裕が残らない事。

 ……あと、炭になった魔物たちから魔石取り出さないといけないのがクッソめんどい。

 一応剣を構えておいて、それでは行きましょう。


「『フレイムファランクス』」


 魔法名を唱えれば、炎の矢が俺を中心に全方位へ放たれ、焼き払う。

 炎の矢を潜り抜けた魔物には、盾状の炎が叩きつけられる。

 それでも生存するならば、続けて炎の槍が一直線にぶっ刺す。

 そこまでしてなお生存する強敵には────まあ、俺自身が戦わないといけない。


「……そうだよなぁ。ミノタウロス、なんだかんだ強いもんなぁ」


 全身を焦がしながら、それでも突撃してくるミノタウロス。

 炭化しかけた腕で斧を振り上げ、俺に振り下ろさんと力を込めているのが分かる。


「もうちょい、強い魔法欲しいなぁ……」


 ────そんなミノタウロスとすれ違いながら、無防備な首に構えておいた剣を滑り込ませた。

 ボロボロだった牛皮を貫通し、骨のわずかな抵抗を感じつつも断ち切る。

 後ろでミノタウロスの巨体が倒れる音が聞こえる。

 周囲では未だ、『フレイムファランクス』が魔物を焼き続けている(効果時間中オートで魔物を攻撃し続けてくれる、まさに対軍魔法)。

 そんな地獄絵図の中で、下からも上からも5番目の階級に位置するミノタウロスと戦った感想として。


「……英雄になんてなれるかよ、バーカ」


 英雄と呼ばれている知り合いを思い浮かべながら、ミノタウロス程度の首を断ち切るのに抵抗を感じた、自分の腕前を嗤うしかなかった。


 *


 そんなわけで、三十分という時間をかけて魔石回収を済ませ、俺は帰路についた。

 本当はもう少し下の方で誘音香石を使うつもりだったため、予定よりは早く地上に着いた。

 ダンジョンを出てすぐの所に、魔石の換金所がある。

 職員が立っていて、頼めば後ろに置いてある魔道具で測定、量と質に応じた電子マネーを振り込んでくれるというお手軽対応。

 一応頼めば現金対応もある程度利くし、色々と便利なことになっている。

 お、今日は顔見知りの人がいるじゃん。


「霜凪さんどうも。換金お願いします」


 声をかけたのは五年ほど換金所で勤務している、霜凪怜さん。

 顔中傷だらけの強面系女性。

 換金所に就職する前は探索者として働いていて、たまにパーティを組むこともあった。

 才能だけで言えば俺より上だったのだが、いろんな事情を経て換金所に就職することにしたそうだ。

 ちなみにだが、見た目の物騒さに反して口調は非常に柔らかく丁寧だ。

 そのギャップで女性人気が高いとかなんとか。


「あ、鈴木さん。承知いたしました。少々お待ちください。相変わらず凄い量ですね……やはり今日も石を使ったのですか?」

「ええ、まあ」

「……ベテランの方にこういうことを言うのも憚られますが、無理はしないでくださいね?」

「相変わらずですね。昔と同じでちゃんと冒険は程々にしてますよ」

「ならいいのですが────あ、換金が終わりましたね。って、今日は量の割にそこまでですね?」

「ええまあ。ちょっと下まで潜るのが面倒になって、いつもより上の方で使ったんですよ」

「そうだったんですか……」


 あ、ちょっと考えてる様子。これ気づいてる?

 そんなことを思っていたら、霜凪さんは懐からスマホを取り出して、少し操作をしている。

 ……明らかに気づかれてますね分かります。


「……もしかして、この子ですか? ピンチの時に石の音がってざわついてました」

「……あったりー。顔見たことあるとは思ってましたけど、マキアチャンネル……登録者二十万ですか」

「はい。つい一カ月前に探索者登録をしたばかりの、期待の新人さんですね」

「まー、期待の新人といっても一カ月でミノはキツイでしょうしね。とはいえEを安定して倒せる程度の実力なのは見事なもんです」

「私はEを倒せるようになるまで一年でしたね」

「俺は一年半です。当時とは情報量も違うとはいえ、期待されるのも頷けますよ」


 E、というのは魔物に便宜上付けられているランクの事。

 SS、S、A、B、C、D、E、F、Gの九段階評価になっている。ちなみに探索者にはランクなんてものはなく、〇人でどのランクを倒したという形で評価される形になる。

 俺の場合はSの中で一番相性がいい相手に死ぬ気で戦って三割勝てる程度、Aランクなら一人でも一体ずつなら確実倒せるくらいの実力だ。

 ちなみにミノタウロスはC。決してEを狩りの対象にしている例の配信者が勝てない相手ではないが、とはいえ格上であることに変わりはない。才能を考慮しても勝率は二割あればいい方だろう。

 どうでもいい補足だが、最初はG~Aで評価するつもりだったのが、ある線引きを超える化物が現れ始めてネットなどで「こんなのもうSとか言って評価増やせ」などと言われた結果、それをそのまま使ってSが追加。

 さらにそこからライン越えの化物が出てきて、人間側のバケモノが「ここまで行くと俺らみたいなのしかやれないから、これ以上は全部一括でSSってことにしとこう」と提案し採用されたという経緯があったりする。


「霜凪さんは一カ月の時はどうでした? 俺はGを十匹も倒せずに帰ってた覚えがあります」

「私も似たり寄ったりですね。ベテランの方と一緒にFと戦って死にかけたのその辺りだったかな……」

「おおぅ、例の両腕F相手に千切れかけたって話、そんな早い頃の話だったんですか」

「ベテランの方と一緒で増長してましたね……『氷雪』持ちっていう才能のこともありましたし……」

「ありますよね、若者特有の自信過剰モード……俺の場合は初めてF倒した後、調子に乗って下潜った挙句、Eに喧嘩売って内臓グッチャグチャになりましたね。偶然通りかかったに助けられて帰れたはいいものの、治療するのに百万の借金するハメになって、返済するのに五年かかった地獄の思い出……あれ以来ですよ、冒険は程々にを心掛けるようになったの」

「……ここまでにしましょう。ともかく彼女────マキアさんを助けてくれてありがとうございます。良い子ですし将来の稼ぎ頭候補なので、個人としても社員としても彼女の生存は喜ばしいことです」


 ……うーん、むず痒い。感謝の言葉はやはり慣れん。

 いや、感謝されればいい気になれるものではあるけどね。でもそれはそれとして痒くなる。

 とはいえ、感謝されれば大人しく受け取るのも社交性。流石に三十歳過ぎればそう言うのもわかるもんだ。


「まあ未来ある若者が無事で済んだなら何より。そのマキアさんはもう帰ったんですか?」

「ええ、疲労困憊といった様子で帰ってきて、魔石を換金したあと救急車がやってきて運ばれていきました。念のための精密検査とかでしょうね」

「それはなにより……霜凪さん、この件は……」

「貴方はそっちですよね。あくまで貴方は自分の都合で石を使った。それによって救われた人がいたとしても、それは偶然起きたことで無関係」

「……もしかしてこういう形の対応、結構あります?」

「大体、二年前からたしか十回くらいイレギュラーから助けたって話があって、その内の半数はこういった対応を求められましたね。残り半数は、こういった対応をする間もなく押しかけられてました」

「昔からアイドルを崇拝する連中は面倒くさいですもんねぇ……ユニコーンとか言うんでしたっけ」


 つまるところの偶像処女厨。可愛い女の子であればどこかしらで処女喪失しているものだろうに、信者はそんなこと気にせず騒ぎ立てる。

 しかもその手の輩に限って金払いがいいから質が悪い。

 余りに過激な連中以外は見て見ぬふりを決め込む以外ない、ということになるのである。


「男性であれば気にせず横槍入れるだけでいいんですけどね。あ、でも貴方の場合は目立つこと自体嫌なんでしたっけ」

「いや、流石にああいう状況で男相手なら気にせず横槍入れますよ。目立つのは確かに嫌ですけど、付き纏わられなければ気にするつもりもないですし」


 そりゃダンジョン探索は基本的に助け合いだよ。俺だって通りかかった人に助けられた回数は数えきれない。

 しかし異性相手だと話は色々と違ってくるし、ああいった状況に割っていった結果不利益を被ることを考えられるのなら、自己責任と見て見ぬふりすることが最善になる。

 自ら命を賭けに出して配信しているのだから、そこに関して他者が取るべき責任など本来はない。


「……まあ、他人にどうこう言える立場でもないですけどね。俺はちょいちょいダンジョン潜って金稼いで、ダラダラ生きるのが目的って言うロクデナシですし」

「生活水準下げないように働いてるだけ十分ですよ。今日だってなんだかんだ下手な会社の月給よりは稼いでるじゃないですか」

「そんなもんですかねぇ……」


 スマホで電子マネーアプリを見れば、ウォレットは五十万を超えている。

 直前に入った金額を見ても三十万と書かれており、確かに金額だけ見ればそうなのだろう。

 でも命を賭けに出して、しかも石を使って自ら危険に飛び込んでのことなのだから、どうにも褒められたものではないと思う。

 実際、余裕のある階層を選んで使っているとはいえ、今回のミノタウロスのようなイレギュラーもあるのだから安全性はあってないようなものだ、

 普段こそ百万を超えて稼いでいるが、やっている行為と照らし合わせれば明らかに問題点が浮き彫りになる。

 なんて悶々と考えていると、霜凪さんが苦笑いと共に声をかけてきた。


「石を使った稼ぎ、なんて褒められたものではないとか思ってます?」

「……わかります?」

「同意見ではありますから。でも、貴方はちゃんと生き残ってますし、大丈夫かなって」

「これからもそうとは限りませんけどね」

「これまで、何回イレギュラーに遭遇したか覚えてます?」

「…………いえ。たぶん百は超えてるでしょうけど」

「それだけの回数、イレギュラーから生き残ったベテランですよ、貴方は」


 霜凪さんの言葉に、確かにと頷く。

 十年以上の探索者生活の中で、それほどのイレギュラーから命を繋いできた。

 それは誇っていい戦果なのかもしれない。


「あー、そうか。思い返せば基準が完全にあのバケモノ共になってたな」

「英雄の彼らですか?」


 英雄。探索の最前で無双するバケモノに対する、便宜上の呼称。

 酷い言い草と思ってしまう部分もあるが、それが事実であることを彼らが行動で証明している。

 その最たる例を挙げるのであれば、外国のどこかで起きた戦争。

 日本では英雄戦争などと呼ばれているが、二人の英雄が国の代表として殺し合い、戦いが終わった時にはというとんでもない争いがあった。

 訳が分からないだろう。理解不能だろう。

 だからこそ、理解不能なバケモノに対する呼称として、世界は彼らを『英雄ヒーロー』と呼んでいるのだ。


「日本にいる二人の英雄、片方は知り合いですから。なんなら荷物持ちに巻き込まれることもありますし」

「それは彼らが潜るような階層に……ご愁傷様です……」

「いえ、確かにとんでもない地獄に巻き込まれることにはなりますけど、絶対に護ってくれる確信ありきなので階層は問題じゃないんですよ」

「……そうなんですか?」

「ええ。ただ決して彼らと同じにはなれないという現実を突きつけられて、諦めの極致に達しちゃうってだけです」

「…………キツイですね」


 そう、吐きそうになるほどキツイ。

 人間何をやるにしてもモチベーションは大事だ。

 探索者なんてやる連中、俺も含めて強くなることというのはモチベーションとして大部分を占める。

 そのモチベーションを粉々に粉砕しやがるのが、英雄という力の象徴だ。

 決してああはなれない、そういう確信を生き物としての根本に叩きつけてくる。

 もし英雄の所業を目の当たりにしてなお、憧れを持つ探索者がいたなら、その人物には英雄の素養があると言われているほどだし、事実であると英雄の背中を幾度となく見た俺が断言する。

 それほどまでに英雄が見せる奇跡は、憧れを持つことすらおこがましく感じさせるほど残酷で、もはや神聖にすら感じさせる代物なのだ。


「……話はここまでにしときましょうか。話の内容がだいぶデリケートですし、私もまだ仕事中ではありますので」

「あっ、うわ、随分長話しちゃいましたね、すみません……」

「いえ、探索者のお話を聞くことも仕事の一環ではありますからね。ですが時間的にそろそろ忙しくなりますので」

「……おおう、学生さん達が出てくるころか」


 全国に探索者育成の大学というものがある。

 戦果がそのまま単位になるという非常にわかりやすい学校らしいが、通ったわけでもないので細かいことは何もわからない。

 ただ色々と必要なことを教われるらしく、基礎知識だけはベテランと相違ないレベルにまで達しているという話も聞く。

 ……そうやって知識を共有する場があることはいいことだし、そのために命懸けでカメラを回してる人は本当に凄いよな。

 戦果が単位になるとはいえ座学の履修は必須らしく、翌日の講習を受けるためある程度早めに帰宅しなければ寝ることもままならなくなる。

 そのため、大体十七時から十八時は学生で混みあいがちなのである。


「じゃ、失礼しますね」

「はい、ご利用ありがとうございました」


 霜凪さんに頭を下げ、足早にその場を後にする。

 ……なんとなく視線が痛いのは、長く霜凪さんを独占してしまったからだろう。

 ファンの皆様、申し訳ございません。



 ネットのとある掲示板にて。


『マキアちゃん無事でよかったな』


『マジそれ。ミノタウロスが出てきた時はどうなる事かと思ったわ』


『とはいえミノタウロス相手にあそこまで粘ったマキアちゃんも凄いよ。ひたすら耐えたおかげで、奇跡的に助かったわけだし』


『ホントそれな。偶然とはいえ誘石使った探索者に感謝だわ』


『マキアちゃん、興味本位で覗きに行っててちょっと笑っちゃったわ。炎がとんでもないことになってて近寄れなかったけどw』


『でもさ、あれ本当に偶然か? マキアちゃんの危機を見て誘音香石使った可能性ない?』


『えー、可能性は否定できないけど、ならわざわざあそこまで離れた位置でやる必要あったか? それに少なくともあんな地獄絵図を作れるくらいに強いみたいだったし』


『無いだろ』


『地獄絵図作れるくらい強いってのがミソだよ。あれ『フレイムファランクス』つって、Dランクを確実に殲滅できるレベルの魔法っぽかった。誘音香石使ってるとはいえ、Eランク相手に使うにはオーバースペックだよ』


『マジ?』


『マジ。効果時間の長い炎魔法は他に『フレイムストーム』があって、これでもEランクを薙ぎ払うには十分。でもCランクがいるってわかってる状況だったらフォートレスの方を使うのも納得できる』


『へぇ、ちょっと知り合いにBランク倒せる探索者いるから聞いてみよ』


『もしそれガチなら恩人だとは思うけど……でもなんで直接助けなかったんだ? そんな強いなら直接やった方が確実じゃね?』


『マキアちゃんが配信者だって知ってたからじゃないか?』


『知ってたらむしろ直接助けるだろ。そんで恩を売って惚れられてイチャコラと……』


『あー、配慮か』


『配慮ってこともそうなんだけどな。探索者って恨まれたりすることも少なくはないから、能力を隠しておきたいって層も一定数いるんだよ。そんな中で配信者助けて顔面全国にドーン!能力も全国にドーン!ってなったらキツイだろ』


『あ、そういう事もあるのか。大変だな探索者』


『そうでなくとも、有名人になったら有名税がどうのと騒ぐバカも多いしな。名が知れるってのはいいことばっかじゃない』


『詳しいな』


『知り合いが英雄候補と騒がれてたヤツだったんだよ。騒がれるようになってから舌打ちが増えたりしたから、やっぱ周囲が騒がしいと耳障りだってヤツはいるよ』


『その候補、北の方でダンジョンから魔物があふれた時に英雄が来るまで時間稼ぎしてたっていう人?』


『ピンポイントでよく当てられるな。あそこで本物の英雄を見て心が折れたって言ってたよ。本物の英雄は俺たち一般人にはわからん何かがあるらしい』


『スレチだからその話はストップ。ともかく、マキアちゃんを助けたのはその人の意思だった可能性もあるってことと、仮にそうだとして助けた本人は意図的にああいった助け方をしたからあまり騒がない方がいいってことでOK?』


『すまん、それでOKだ』


『すまぬ、概要把握』


『謝罪を受け入れよう。ところでマキアちゃんの次の配信は────』









 と、ここまで読んでもらっておいてアレなんですけど、現代ファンタジー物を読んでてなんとなく書きたいなってなってノリで書いたやつで、これ以上続きを書く予定は未定です。

 書くとしたら、何者にもなれないまま独身貴族を満喫するという、「一話から女性二名出しておいてなんなの?」と突っ込まれそうな作品になります。

 想定としては霜凪さんは既婚者、マキアさんはこの先で英雄になって英雄と結婚するみたいなノリで出してるんですよね。

 そんなわけで、続きは期待しないでください。

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