第3章 心奮えた夜
出会い系サイトで、男性を探すのには疲れちゃった。
でも相変わらず寂しくて、暇さえあれば病んでしまう。
そうなると、時間を持て余してネットサーフィンする位しかやることはない。
自分でも23歳の若さで、ネット漬けって虚しいと思うわ。
だけど、お金もないし、他にやることもないっていう理由を付けて、結局は電脳世界に逃げちゃうんだなコレが。
だけど得られる物があるかと言われれば、特に何も無いし、ゴシップネタばかり目を通していると、何だか時折、凄く虚しくなるの。
私の本来の目的は、幸せな恋愛をすることのハズだった。
なのに実際は手持無沙汰で、毒にも薬にもならないサイトばかり見ているだけ。
たまには、そういった時間の過ごし方も良いと思うけれど、ずっとこれの繰り返しじゃ成長も何も望めないわよね...。
進展の無い日々に嫌気を感じながら、虚無感に襲われた私は、そんなある日、動画サイトで運命的な出会いを果たしたの。
とある乙女ゲーム会社が、ドラマCDの音声を無料公開していたから、ほんの気まぐれで私はこの音声に耳を傾けてみたってワケ。
飽きっぽい私は普段なら、興味を惹かれない動画はすぐに見るのを辞めちゃうんだけど、気が付くと、このドラマCDの世界に自分でも空恐ろしい位に引き込まれてしまっていたわ。
吸血鬼の男の子と、ヒロインの純愛。
その世界観が、声優さんの声によって臨場感タップリに紡がれていて、私はたちまち物語の世界に没頭してしまったの。
不治の病を患った吸血鬼が、ヒロインと心中を望み、彼女もまたそれを究極の愛情として受け入れる。
一見、どこにでもありそうなラブストーリーだけれど、2人の互いを想う愛情が切実であるのが痛い程に伝わって来るから、気が付けば私の目からも大粒の涙がボロボロと零れていたの。
この瞬間、私は声優さんの声の魔術によって完全に、ヒロインに感情移入していたのよ。
そして、このCDに耳を傾ける間、私は確かに吸血鬼の彼を本気で愛していたと断言出来るわ。
「ガラスの仮面」で主人公のマヤが、役になり切って、演目ごとに異なる仮面を被るように、声優さんの技量によって違う世界のヒロインになれるなんて!
超アメイジングじゃないのよ!
その事実を身を以て実感した瞬間、たちまち生きる気力が湧いて来たのを、今でもハッキリ覚えているわ。
それ位、この出会いは私の荒んだ心に、潤いと感動を与えてくれたのよ。
この素晴らしさを1度味わった私は、それから狂ったように乙女ゲームやら乙女系CDを買いあさるようになったワケ。
進展もないやり取りを、ダラダラ続けるよりも、こっちの方がよっぽど生産的!
だって乙女ゲームには必ず、エンディングが待ち受けてるんだもの。
だから素敵な恋の出来る相手に出会うまでは、乙女ゲームで自己肯定感を上げるって決めたの。
そうやって自信を持てたのなら、きっと今よりも光り輝く私になれるから。
如何にして私が乙女ゲームにハマったのかについて 六条京子 @akasinokata321
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