2-3 夢らしい夢を
夢らしい夢を見た。あちらとこちらが混ざり合い、錯綜し、そのなかで自分がどっちつかずの格好をしていて右往左往しているのだ。
あまりにそれは滑稽であり、そして悲しくなった。潜在的な不安がこんな夢を見せるのだろうか。せめて夢ならばもう少し都合の良い展開であってくれればいいのに。
意識がゆっくりと、はっきりとなっていく。
足の感覚。腕、頭、目と鼻。
自分が自分であることを再確認していく作業を経て、上半身起き上げる。
ここはどこだろうか。椅子とテーブルといった最低限の調度品しかなく生活感が感じられない部屋。埃っぽさはない、皮膚を焦がす熱線も感じない。
今までいた場所と比較すると簡素ではあるが天国である。
コツコツコツとドアが叩かれた。
声を出そうと思ったが、どうにも上手く発声できなかった。思った以上に弱っていたようだ。話そうとも話せず無言でいるとドアが開いた。
ぞろぞろと3人が部屋に入ってきた。皆女性だった。
「あら、目が覚めたみたいですわね」
やや高飛車を感じさせる。
「ほんとです。死なれていたら目覚めが悪ったらありません」
自由気ままな印象。
「ちょっと、そうことは思ってても本人の目の前で言わない」
一見礼儀良さそうだが邪悪な裏の顔が垣間見えた。
全員タチが悪そうだ。そしてこの3人だがやばいぐらいにめちゃくちゃ強い。自分がいた時代からどれだけの月日がたったのか正確にはわからないが、どれだけの年月が経とうとこのレベルまで強いが当たり前になっているとは思えない。
「で、何をしていたんですの? あの場所で、こんな装備で」
と、高飛車娘が眼光鋭く聞いてくる。
一発でこれがただの質問出ないことを理解する。要するに尋問、取り調べだ。
不用意な発言をすれば殺す、ぐらいのことは考えていそうである。
ならば答えを間違えるわけにはいかない。
「ふぐ、ふぐぐ」
そういえば喋れなかった。
「ふざけてますの?」
高飛車娘の表情が凍りついた。同時に裏の顔娘が裏の顔をこちらに向けながら言う。
「あまり協力的では内容ですね。ああそうですね、せっかく拷問が許されてる事ですし、やってしまいましょう」
「拷問って、いやいやムーちゃん、怖いよそれ。拷問許されてるなんて初耳だけどー」
「ダメですよアリス、せっかくの嘘の脅しが台無しではないですか」
「っあ、そういう感じね。ごめんごめん、どうしよっか。いっそのこと本当にやっとく?」
本気で物騒な会話をしているこいつらなんだんだよと、心の中で叫び、吠えた。
「あなたたち物騒ですわ。はぁ……もっと品性を持ってください」と高飛車娘が二人を嗜める。しかし。「とは言え、先ほどのような態度はお考えを。ご自身の立場を重々理解していただき、相応の考えを持って発言すべきと忠告いたします。……ちょっとした事故で片腕をなくすぐらいのことは起こり得ましてよ」
いや喋れないんだって。
中年2度目の異世界 石坂あきと @onikuosake
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