復讐心を煽って生かした少年が違う意味で逃してくれない話

ナム

復讐は時に生きる希望

「これは酷い…」


小さい村、私が到着した頃には既に村人は皆殺しにされていた。野盗は全て排除したけれど、遅すぎた。

辺りは焼け野原、酷い状態だ。


「ーーーーっー」

「!」


人の叫び声が聞こえ、急いで声の方に走る。声のする家の中に入ると、一人の少年が両親と思われる亡骸の前で泣いていた。少年は見たところ頭に怪我をしているが、それ以外は無傷だ。この両親が必死に守ったのだろう。


「と…さん…あさ…」


枯れた声で泣き腫らした少年は、絶望の目をして小さいナイフを握り、見つめる。…これは不味い。折角生き残ったのに、少年は死のうとしている。


「ーあら、ここに貴方の両親を殺した犯人がいるのに死のうというの?」

「!?」


少年は驚いた顔で振り返った。私の存在に初めて気づいたようだ。


「…お…まえが…?」

「飲み込みの悪い少年ね?そう言っているでしょう?私がころー」


ガン!とナイフがぶつかり、落ちる。少年がナイフを投げたが、魔法でバリアを張ったので私には当たらない。先程、死んだような目をした少年の目は復讐に燃える目をしている。


「残念だったわね少年。君は私より弱い。…悔しかったら私より強くなるしかないわね?」


私は悪、悪、悪…

最高に悪い顔で少年を煽る。


「そこで野たれ死ぬか、私を殺すために付いてくるか、好きにしなさい」






作戦は成功した。





ある程度現状報告を手紙に書き、近くの街の騎士団へ届けるよう、使い魔の鳥を飛ばす。騎士団が来れば、村人の亡骸等、きちんと葬ってくれるだろう。

少年は私を睨みながら、後ろを付いてくる。正直、気まずい。


「着いたわ、ここが私の家」


ガチャッとドアを開いて少年に入ってくるよう促す。だが、少年は警戒しているのか、入り口に立ったまま動かない。


「仕方ないわね」

「!」


少年が身構える。甘いね、私はわる〜い魔女よ。


「『誘う夢の約束ースリープ』」

「な……」


ぐらりと崩れ落ちる少年の身体を抱き止める。


「反則技は得意なのよ」


さて、少年をベッドに寝かせ、怪我の治療を済ませる。寝てる間に色々とやる事を済ませておこう。


「これから忙しくなるわね」




これが私、悪の魔女ミシェラと少年マオの出会いだった。


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復讐心を煽って生かした少年が違う意味で逃してくれない話 ナム @ea114

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