37.この2人に祝福を!


 御披露目式が終わり、聖女暗殺未遂、聖女毒殺未遂、聖騎士誘拐監禁、そしてアルバート王毒殺未遂、他にも多数の工作などが発覚し、ムーア侯爵家の領地没収と処刑が決まった。


 そして、そんな事とは関係なく、フレデリカとレオは聖女、聖騎士として、王国内を回っていた。


 王国に聖女が現れた事を広く国内外に喧伝し、その力を発揮して癒し、披露し、国威高揚に繋げているのである。


 フレデリカは相変わらず聖女モードとプライベートモードを分けていた。

 ただ以前とは明確に違う点があった。


「なあレオ、最近魔物が増えてきた気がしないか?」


「うーん、確かに多くなってきたような気はするね、フレデリカの出番が増えそうだ」


「そん時は任しとけって。……それはそれとして、な~、れお〜、つかれた~」


 レオに向かって、両手を広げて前に出す。それはまるで抱っこを求めて甘える子供のようであった。


「……まったく甘えん坊さんだな、フレデリカは。……よしよし、今日も頑張ったね」


 レオはそれを正面から抱きかかえ、膝の上に座らせて、優しく抱き、綺麗な金髪を優しく撫でてあげると、気持ち良さそうに嬉しそうにごろごろと甘えてくる。


「うん、がんばった。だかられお~、もっと~、れお~」


「はいはい」


 すっかりレオと2人きりの時は甘えん坊になってしまっていた。

 それは聖女然とした、凛々しく、理想の女性のような物が求められ、それを演じている聖女モードの反動と、もうレオに気持ちを隠す必要がなくなったからであった。

 レオの力を認め、男と認め、心の拠り所であり、全てを委ねたいと思っているからであった。

 2人は男女の関係に、より深い関係へとなっていた、当然の成り行きだった。


 そしてレオは、聖女のフレデリカも、普段のフレデリカも、甘えん坊のフレデリカも、全部大好きだった。

 特に甘えん坊モードは心を許す自分にしか見せないもので、ある種の優越感のようなものを感じ、それを独占出来る事が堪らなく嬉しかった。


「れお……すき」


 そう言ってレオをギュッと抱きしめる。

 レオは察していた、これはこの先を求めているのだと。

 だがふと悪戯心が生まれ、試してみようと思ったのだった。

 フレデリカの耳元で囁く。


「僕も好きだよ」


 顔を離すとフレデリカも嬉しそうに顔を上げる、次を待っているのだろう。

 しかしレオは少し意地悪に言うのだった。


「ねえフレデリカ、どうして欲しい?ちゃんと言ってくれないと分からないなあ」


「!!!???」


 いつもならレオは直ぐに察してくれてるのに今回は違った。

 そして意地悪な事にそれを言えと言われ、フレデリカは戸惑ってしまった。

 そんなフレデリカを見てレオは可愛いと思うのだが。


「い、いじわる~……」


「うーん、それじゃあ分かんないな。ね?ほら、どうして欲しいかちゃんと言って?」


「う、うう……」


 そうしてフレデリカは思い切って口にしたが、レオは何度か聞こえない振りをして聞き直し、やっと事に及ぶのだった。

 それはいつもより燃え上がり、その日は朝まで続くのだった。


◇◆◇


 聖女の力と聖騎士が聖女を癒す力、この場合は口づけであるが、それは必ずワンセットで公開され、行われていた、下手に隠すと逆にいらぬ誤解を招くとして、セットで扱うようにしていた。


 聖女親衛隊はというと、その有り様を変え、まだ続いている、あくまで聖女へ忠誠を誓い、敬う存在に対して、守りたいと思う者だけで構成されていて、当初のように貴族の息子だけの集団ではなくなっていた。そして20名ほどまでに増えていた。

 親衛隊隊長は変わらずクリス・ピアース、ハロルド・ピアース公爵の孫のままである。

 彼はあれ以来、フレデリカの力と姿勢に、レオの強さに心酔していた。


 そして


「おっはよ、フレデリカ!」


「おはようございます、リディア」


「もー、前みたいに気軽に呼んでほしいなー、お姉さん寂しい」


「冗談だよリディア、でも他の人がいる前ではやめろよな」


「大丈夫だって、フレデリカみたいにヘマしないから」


「う……確かにたまーに地が出るけどさ」


「おいおい、聖女様を困らすなよ」


「おはようマチアス、アーロン」


「おはようフレデリカ、聖騎士レオ殿は?」


「クリス隊長とフェルナンド副隊長の3人で打ち合わせをしてるな」


「フレデリカ様、おはようございます、今日も聖女様と一緒にいられる事、感謝いたします」


「おはようございますエリザ、って別に良いのに、エリザはこういうとこ真面目だなあ」


「何言ってんの、聖女様なんだよ、どれだけ凄い存在なのかもっと自覚してよー」


「分かった分かった、イアン、そろそろ食事にしようか」


「はい、こちらに準備できております」


「流石イアン、抜かり無しだ」


「お褒めに預かり光栄です」


 以前冒険者だった時にパーティを組んでいたリディア達が聖女親衛隊に加わっていた、フレデリカとレオからすればこれほど信頼出来る人達は他にいなかった。


◇◆◇


 フレデリカとレオにとってフレデリカの女体化の呪いはもう呪いでは無く、2人を繋げるための祝福だったのだと考えるようになっていた。

 今思うとあの白い影は、こうなる事を望んでいたんじゃないか、そんな事を思うようになっていた、感謝していた。

 今では、白い杖無しでも同等以上の力が発動出来るようになっていて、いつか村に帰って、杖を祠に返し、お礼をしようと決めていた、きっと喜んでくれるだろう。


 家族には……なんて説明しようか、と頭を悩ますのだが。

 

「さあって、今日も頑張るかあ、な、レオ」


「うん、行こう、フレデリカ」


 2人は手を繋ぎ、仲良く、睦まじく人生を一緒に歩む事になる。

 楽しみであり、怖くもあったが、2人一緒ならきっと乗り越えていけると信じて。


 これから聖女、聖騎士として様々な困難や苦難を経験していくのだが、それはまた、別のお話。



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 今回でお話は完結です。

 聖女としての物語自体は続きますが、2人の恋愛物語はここで区切りになります。

 ここまで見ていただきありがとうございました。

 また次回作でお会いしたいです。

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TSっ娘は呪いを解きたい! エイジアモン @eijiunknown21

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